第4話 魔装
前回までのあらすじ
ユレハの町で一日早く襲撃に会いアラン、ナオと共にこの襲撃を凌ぎ切り、ベルタの支配からユレハの町を解放した音也たち
新たな仲間であるアランとナオを連れて次の町であるトランを目指す
ナオからは鎧を貰い、武器の新調こそ出来なかったが鎧は新調することが出来た
音也はベルタの死の間際に放った言葉が気になり、一抹の不安を感じながら旅は続く
鎧を手に入れユレハの町を後にした音也たち
新たな町・トランを目指し進む
トランはかつて人間の英雄であったトランから取っており、田舎町で静かな雰囲気が好まれて滞在する旅人も多い
旅人の憩いの地でもある
地図を見ながら音也は呟く
「ベルーガ…」
「おい、さっきからどうしたんだよ音也」
思わずアランが聞き返す
音也はさっきから悩んだような顔をしているのだ
音也はアランの問いかけに焦ったように反応した
「大丈夫だ、何でもない」
「お前ほんとに大丈夫か?」
アランは音也を心配している
そこに近くで木の実などを集めていたサーシャとナオが来る
サーシャはアランに問いかける
「アランさん、貴方何者なんですか?
私の魔法を知っていたり、勇者様を知っていたり
どう見ても怪しいですよ」
「…やっぱそうだよなぁ
"前と同じ質問"か…
わかったよ
幸い俺は"奴に監視"されてねぇ
話すよ」
「監視?」
アランは説明するために木の枝を拾ってくる
そして地面に文字と絵を描き始める
「俺は終極の魔神を倒す為にお前たちと旅をする」
「「終極の魔神…?」」
サーシャとナオは同時に聞いてしまう
音也はそれを黙って聞いているだけだ
「アルゼス教団って教団がその終極の魔神を使ってなにかやろうとしてるらしいんだよ
世界を守るために止めるしかなくてな
だが、俺じゃ手が出せねぇ
この世界の可能性は見切られて勝負にならねぇからな」
「…それで俺が必要ってことだな」
「さすが音也だ!
よくわかってるじゃねぇか」
アランが手を叩きながら音也を指さし完璧だと言わんばかりに
「…それでも納得が行きません
なんで貴方は私の魔法のことを知っているんですか?」
「もう何度もお前と会ってるからだよ」
アランはサーシャの質問に平然と答えた
サーシャはまだ納得いってない顔だ
というか若干引いている
「初対面ですけど…」
「まぁ信じるも信じねぇも勝手だよ
距離置くなよ…」
「普通に怖いですもん」
ナオも若干引いてるが音也は距離を置いていない
トランまでは結構離れているのでこの場でゆっくりしていると夜になってしまう
「ほら、進むぞ」
音也がそう言うとこの場に不釣り合いな邪悪な気配が溢れ出す
そこから背格好の高い筋骨隆々の神官のような服を来た男が現れる
「…目的地はトランですか
勇者御一行様」
「ベルーガ」
音也がそういうとベルーガと呼ばれた男は驚いた顔をする
「おや、私を知っているとは
以前どこかでお会いしましたかな?」
ベルーガは丁寧な口調とは裏腹に邪気は隠さない
その隙をついたかのようにナオが向かっていく
ナオは蹴りを入れ、確実に決まったと思われたが…
「さすがフェンリルの娘、なかなかの蹴りですね
私も力には自信がありますのでお相手しましょう」
「女だからって甘く見てると怪我するよ!」
「相手はフェンリルの娘、油断などするわけないでしょう?」
ナオとベルーガの戦いは激しく周りの草木なども軋むような音を立て始める
拳と足が当たるだけでここまでの衝撃があるという2人の実力に驚きを隠せないようにサーシャは見ている
その時音也が呟く
「このままだとナオが負ける」
「え?」
サーシャが聞き返した時、ナオは吹き飛ばされて
サーシャの真横を通った
ナオが吹き飛ばされた衝撃でサーシャの顔には傷がついていた
「ナオちゃん!?大丈夫!?」
「…あいつ、とんでもなく強い…!」
ナオは吹き飛ばされた衝撃で言葉に詰まっており、咳をした時に口から血が出ていた
普通の人間だったらこの程度では済まないだろう
「次は私が相手する!」
「貴女は確か、妖精のサーシャ姫
そのような方に相手をしていただけるとは感謝いたします」
深々と頭を下げるその丁寧さが不気味であった
サーシャは弓を構えウインドバレッジの姿勢に入る
「風よ我が矢に数多の敵を貫く加護を!
ウインドバレッジ!」
ベルーガに向かって1本の矢を空に放つと分散し無数の矢になる
その一本一本には風を纏っており刃のようにベルーガを切り裂く…はずだった
ベルーガは飛んでくるうちの1本を指で弾くとそれを反射させてサーシャに打ち返した
ウインドバレッジはサーシャの右腕を掠めて血が流れる
「そんな…ウインドバレッジが効いてないなんて…!」
「サーシャ!俺に続いてもう1回ウインドバレッジを撃て!」
アランが前線に立ちサーシャに指示する
音也はその状況を黙って見ていた訳では無い
前回の状態を再現するため、構えていたのだ
-数分前-
「アラン、俺は前回の状況を再現したいんだ
ベルーガを倒すにはそれしかない
お前たちには悪いが時間を稼いでもらいたい
こんなことを頼んですまないと思っている」
アランは戸惑うことなく、笑顔で音也に返した
「謝る必要はねぇよ
信じるぜお前の…勇者の力ってやつをよ
ベルーガにぶちかましてやんな相棒!」
「…ああ!」
-現在-
(音也のあれを再現するには時間がかかる
少なくとも今の音也には!
だから相棒である俺が時間を稼ぐ)
アランがブーメランを投げ、ベルーガがそれを弾くと共にウインドバレッジが飛んでくる
しかし、腕を少し傷つけただけで致命傷には至っていない
「この私に傷をつけたのサーシャ姫
貴女が初めてですね
ですが…貴女では私には勝てない
この実力の差を噛み締めなさい」
ベルーガは拳圧でサーシャを吹き飛ばし、アランが投げてきたブーメランすら投げ返す
アランがもうひとつのブーメランで弾くも左手手の甲を切ってしまう
「ッ!俺のブーメラン投げ返すのも相当だが、俺のブーメランやっぱ切れ味いいな!」
「貴方はチームのムードメーカー的な存在
一番厄介かもしれませんね
早々に潰す方が良いか」
ベルーガが拳を構え、アランに向かってくる
そこに音也がナイフで割って入ってくる
「残念だったな
たかがナイフで防がれると思わなかったろ?」
ベルーガはナイフで防がれたことに驚いていたが、次の瞬間には笑っていた
「そうか、貴方は仲間を捨ててこの男だけを助けようとしたのですね
勇者としてそれはいかがでしょうか」
「違うな
みんな俺のために時間を作ってくれたんだ
この時のため…お前を倒す少ない可能性のために!」
音也がそういうと魔力が音也の体に満ちていく
緑の光それが音也の体を包む
「我が纏うは疾風、荒れ狂う疾風と皆を包む慈愛の風
音也の姿がサーシャのようになる
髪色こそ変わってはいないが、長さやスタイル
性別すらサーシャのようになっている
「おお!勇者そのような魔力を隠し持っていたとは
…ですがそのような付け焼き刃の変身で私を倒せるとは思っていないでしょうね?」
「勝つさ
お前のためを倒すために時間を稼いでくれた仲間達のために!」
音也は弓を構え撃つ
「
ウインドバレッジ!」
1本の矢を空に放つと分散し無数の矢になる
その一本一本には風を纏っており刃のようにベルーガを切り裂く
サーシャのものよりも数が多く着弾も早い
ベルーガとしても予想出来なかったようで指で弾こうとするも指が切断されてしまう
「なにっ!?この傷…この痛みはぁぁぁ!」
ウインドバレッジが当たった箇所から魔法力が漏れている
魔族が回復する時には魔法力を使用していることが多く、その傷は回復しているが時間がかかっていることがわかる
サーシャの与えた傷はもう既に回復しているのに対し、音也が与えた傷は未だに治っていない
「
ウインドカッター!」
音也は風を集めてカッター状にしてベルーガに向かって投げつける
ベルーガは回避する
「どれだけ強い攻撃でも当てることが出来なければ…」
そこまで言った時だった、ウインドカッターはブーメランのように戻ってきたのだ
「な…にが…?」
ベルーガも驚きを隠せずにいた
そのカッターはベルーガの腹を切り裂いているのだ
その頃アランはサーシャとナオを巻き込まないように遠くへ離していた
「さすがフェアリークロスだぜ!
やっちまえ音也!」
「ああ!そうさせてもらう!」
音也は弓を構えベルタの時に使った大技・ウインドブラスターを使おうとしている
ベルーガは音也に向かっていく
「このままでは終われん…!終われないのですよ!」
「俺の可能性とお前の使命のどちらが勝つか、それは今わかるぞベルーガ!」
ベルーガは拳を構えて音也を上から攻撃しようとしている
そして…
「疾風《かぜ》よ、吹き荒れろ
そしてやつを撃て!
ウインドブラスター!」
ベルーガにウインドブラスターが直撃する
咄嗟に腕を交差して防御するが…
(この…この状況はまずい!
このままでは私の体が崩壊してしまう!)
両腕が弾け飛び片足も消滅しかかっている
その瞬間、ベルーガは転移した
何者かによる外部からの転移魔法だ
「逃がしたか」
音也の変身が解ける
任意解除であるため戦闘が終了したということだ
アランが音也の所へ走ってくる
「さすがフェアリークロスだぜあのベルーガを倒しちまうなんてよ」
「逃がしただけだ」
「それでもすげーよ
よく決めてくれたぜ!」
音也とアランは話しているがサーシャとナオを急いで町まで連れて行って治療しないと危ない状態ではある
「トランまで急ぐぞ!」
「ああ、行こうぜ相棒」
第4話 魔装 End
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