第3話 絆の力
前回までのあらすじ
サーシャと共に始まりの森を抜け旅に出る音也
1番近くにある港町・ユレハに向かう途中、謎の男に忠告をされるも音也達は町に向かう
ユレハへ到着すると町全体が異様な雰囲気であった
そこで一人だけ無事なナオという獣の少女に出会う
ナオは一人でも今回の異変に決着をつけると言うが、音也たちも協力することとなった
そしてその夜町に入る前に会った男と会い、音也は昼間と同じ質問をされる
「相良音也、お前は今"何回目"だ?」
フードを目深に被った男は男は音也に昼間と質問をする
それに対して音也は
「…すまない、◼️◼️◼️
今はその質問に答えられない
時が来たら必ず答える」
謎の男は少し息を漏らすとフードを外し、顔を見せる
月明かりに照らされて隠れていた顔と藍色のショートヘアが見える
男は少し微笑み
「やっぱりバレてたか…
流石だな、音也」
「相棒を忘れるわけが無いだろう」
男と音也は笑いながら話している
そして、男は真剣な顔になり言葉を紡ぐ
「嬢ちゃん…ナオは明日の夜にベルタが来ると言ったが奴は今夜来る
それも自分の軍を引き連れて」
そのことを聞いても音也は表情一つ変えずに返答する
「だろうな
だからお前が来たんだろう?」
「ああ、そうだぜ相棒」
音也達は再び微笑み、拳を重ねる
そうしていると空が暗くなり、何かがユレハの埠頭に着地する
その何かは口を開く
「ごきげんよう、ユレハの皆様
私、この町が一日でも早く欲しくて約束とは少し違いますが、私の僕を連れて参りましたの」
声の主は大きな翼を生やしたまさに悪魔といった姿である
ナオの家からはナオ、サーシャが出てくるのがわかる
音也と男はすぐに戦えるように武器を出している
ナオはベルタに向かって
「ユレハのみんなを元に戻せ!」
「…嫌ですわ」
即答だった
この町が欲しいと言っている時点で支配を解く気は無いだろう
ベルタは不敵に微笑み口を開く
「契約しましたもの
幸せな夢を見せる代わりにこの町はいただくと」
「この…!」
ナオの唇から血が出ている
あの温厚なナオがここまで怒るというのも中々だがベルタはなおも不敵な笑みを崩さない
「さあ、行きなさい
我が僕たちよ!
抵抗する者は始末して構いません!」
魔物たちの鳴き声が辺りに響く
サーシャとナオは魔物達に攻撃を仕掛ける
数が数なので二人ではいずれ押し負けてしまいそうだ
そこに何かが飛んでくる
それは魔物を切り裂き魔物達は激痛からか叫び声をあげる
「グギャアァァァ!?」
「「え?」」
ナオとサーシャは驚いている
それはブーメランだった魔物を切り裂く程の鋭い刃がついたブーメラン
ブーメランは持ち主の元へと帰っていく
「悪ぃな、ちとベルタの奴が卑怯なんで俺も手を貸すぜ」
先程の男はそう言うとナオとサーシャにとって邪魔にならない位置を取る
音也はその状況を見て
「頼むぞアラン!
俺はベルタを倒す!」
アランと呼ばれた男性は微笑んで再びブーメランを構える
「はいよ!任されたぜ!」
サーシャとナオはお互いに訳がわからないという顔をしている
それはそうだろう
見ず知らずの男が急に戦闘に参加するなど訳がわからないし、音也は名前を知っている
その状況が理解できないだろう
「えーっと、アランさん?なぜ私たちに手を貸してくれるのですか?」
「おっと、質問するのはいいがそんな余裕も答えてる暇もないぞ?
自己紹介ならこいつら片付けたらいくらでもしてやるからよ
少なくともサーシャ、ナオお前たちの敵じゃない」
アランは再びブーメランを投げて魔物達を切り裂く
サーシャとナオは2人とも同じ疑問を抱いていた
(名前を名乗ってないのに何で知っているんだろう?)
ベルタが引連れている魔物はランクの低い悪魔ばかりだ
まだ成長してないような悪魔が多い
デーモンクラスでも成長しきれてない個体が多い
「数だけ連れてきても大したことないな
サーシャ!ウインドバレッジだ!」
「え?なんで私の魔法を?
ってもういいや!」
アランがサーシャの魔法を的確に指示したことでサーシャは驚かきを隠せない様子だが、それを振り切って詠唱する
「風よ我が矢に数多の敵を貫く加護を!
ウインドバレッジ!」
1本の矢を空に放つと分散し無数の矢になる
その一本一本には風を纏っており刃のように悪魔を切り裂く
悲痛な叫び声をあげ、悪魔は消滅していく
ナオは近寄ってくる悪魔を蹴りで倒している
ナオの怪力で蹴られた悪魔は通常ではありえない角度で首が曲がっている
あらかた片付いてはいるが音也の元には行けない状態になっている
(音也、お前から任された大役だ
手助けに行けるほどの余裕はねぇが、またお前と旅をするために足止めは必ず成功させる
見せてくれよ勇者の力ってやつをよ)
アランは固く決意をし、音也の勝利を願う
音也はベルタと対峙している
ベルタは不敵な笑みを浮かべて音也に問いかける
「人間如きがこの私に勝てるとでも?」
「俺だけの力ならわからないけどな」
音也は意味深な事を言ってベルタに切りかかる
ベルタにショートソードが触れると刃が溶けてしまう
それでも音也が手を離さなかったからか右手の皮膚が焼け爛れている
音也はサーシャから借りたナイフでなんの躊躇いもなく自身の右手を切断する
ベルタはその様子を見て
「あら、右手を切り落として叫び声一つあげていませんわね
人間にしてはなかなかの逸材と見て良いでしょう
その胆力気に入りました
私の僕になりなさい」
「断る
お前の手下になるなんぞ死んでもごめんだな」
即答だった
音也は武器を失っても戦意は失っていなかった
「…そうですか
では仕方ありませんわね
このまま私の魔法で溶けて無くなりなさい!」
ベルタは詠唱を始める
「炎よ我が眼前の敵を消し去…」
しかし途中まで唱えるもベルタに向かって先程の刃が溶けたショートが投げられる
「え?」
「お前が溶かしたんだ、お前が責任をもって処理しろ」
思わず詠唱を中断してしまう
すると音也は
「サーシャ"また俺に力を貸してくれ"」
音也の右手、体の傷も完全に治り、サーシャの弓矢を構えている
ベルタは驚きを隠せない
「さっき外にいた羽虫の!」
「羽虫だと?
サーシャはお前にバカにされるようなエルフじゃない
謝れ」
音也は冷静だが怒りをあらわにしている
仲間をバカにされたからということもあるがそれだけでは無い
「ユレハの町を元に戻せ
でなければお前を撃つ」
ベルタは震えた声で言う
「こ、この町は私に屈して幸せな夢を見せる代わりにと契約をしたのよ!?
今更返せなんてそんなの!」
「そうか
じゃあさよならだな」
音也はベルタを狙うように弓を構えて詠唱する
「風よ吹き荒れろ、そしてやつを撃て!
ウインドブラスター!」
放たれた矢は風を纏い吹き荒れる嵐のような暴風と共にベルタを貫く
「ベルーガ様…!私は使命を果たせませんでした!
お許し下さい!」
ベルタはそう言って消滅してしまった
それに気づいた手下の悪魔たちも撤退してしまう
「…お前だけの得を考えたからこんなになったんだよ」
音也はつぶやくように言う
そして、サーシャとナオ、アランが音也の元に走ってくる
ナオとサーシャは喜び、アランは音也ならやってくれるだろうと信じていたという顔をしている
夜が明け、ユレハに光が差し込む
支配の解放と共に夜が明けるこの町は再び動き始めるだろう
「この町はもう大丈夫だ
また時は刻むだろう」
音也がそう言うと町は目覚めて再び時を刻み始める
音也達はユレハを発つ
誰に礼を言われるでもなくただ救いたいから救っただけと言うように
「音也本当に良かったのか?
ナオに何も言わなくてよ」
アランは音也に質問する
音也はそれに対して答えるがなにか考え事をしているようだった
「…きっとナオに伝えたら
ナオは着いてくるだろう
危険な旅になるからな
ナオを連れていくのは危ないと思ってな」
「…お前がそう思ってもナオはそう思ってねぇってよ」
土煙と共にすごい勢いでこちらに何かが向かってくる
既視感のある光景だ
「まさか…」
「ええ、そのまさかですよね」
サーシャと音也は思わず同じ反応をしてしまう
やはり走ってくるのはナオだった
「置いていくなんて酷いよ!
ボクも連れてってよ!」
音也は前と同じようにナオを受け止めるとナオは音也のお腹を軽く叩く
まるで子どもが親に欲しいものをねだるときのように
音也は思わず言ってしまう
「それは危険な旅になるから連れていくのは悪いかと…」
「ボクは感謝してるんだ
だからオトヤクン達の力になりたい
それとお母さんから装備貰ってきたからオトヤクンにあげるね」
ナオは女性用の鎧を音也に渡す
レディプレートという胸当てのような装備で防御力より軽さをメインに作られた装備だ
「お、おいおいそれ男の装備じゃねぇぞ?」
思わずアランがツッコミを入れてしまうが音也は普通に装備することが出来た
「…なんでピッタリなんだよ…すげぇな音也」
思わず驚いてしまう
「とにかく、ボクもついて行くからね!」
「わかったよ、止めても止まらなそうだしな」
「嬉しいなら素直にそう言えよ音也」
「賑やかになりましたねー」
危険な旅になるがメンバーが4人に増え賑やかになっている
しかし、音也は手放しで喜べなかった
それは
(ベルタが最期に言ったベルーガ…
あのベルーガなのか?
こんなにも早く奴の名前を聞くとは…
まだ俺の魔力も完全では無いから用心しなくては)
第3話 絆の力 End
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