第2話 獣の少女
前回のあらすじ
相良 音也は祖父から貰ったペンダントを調べていた時に不思議な光に包まれ異世界転生をしてしまった
そこで目にしたのは妖精やエルフであり、その森では人間に不信感を抱く者が多かった
人間に不信感を抱くのは妖精やエルフが高く売れるという噂が独り歩きしてしまっためであることを知る
山賊がフェアリーの幼体を奪おうとしたその時、音也は山賊を退けて森を救ったのだった
山賊を退けた後、再びアリアと謁見する音也たち
アリアは深々と頭を下げる
「まだ幼いフェアリーを助けていただき感謝いたします
私は妖精たちに酷い扱いをする人間を嫌いにならなければと考えていました
人間は良い人もいるという考えを持っていればこのようなことは無かったでしょう」
アリアは感謝を伝え、自身の過ちを認めた
音也はそれに対して
「人間には確かに悪いやつもいるが誤解はしてほしくなかった
それにアリア、貴女の本心は人間が好きだと気づいていたから俺はその思いに応えただけだ
礼を言われるほどのことはしてない
それに俺はこの世界を知るために旅に出るつもりだ」
「オトヤ…貴方こそ勇者と呼ぶにふさわしい人間なのですね
旅に出るには必要なものも多いでしょう
感謝としてこの世界・シーヴェの地図と剣、少ないですが金貨を差し上げます」
アリアがベルを鳴らすとエルフたち宝箱を持ってくる
音也は頭を下げ宝箱を開ける
するとよく研がれたショートソード、世界地図、金貨が入っていた
音也はそのことに対し感謝をして再び頭を下げる
旅に出ることは音也自身ずっと考えていたことなのだ
するとずっと黙っていたサーシャが口を開く
「私もオトヤさん…いや、勇者様の旅に同行します」
「サーシャ、再三言うように貴女には姫としての自覚が足りません
本来ならばこの森で姫としての自覚が出るまで城にいるべきなのでしょう」
サーシャの言ったことに対し、アリアは厳しい表情に変わった
しかし、その直後に言葉を紡いだ
「…ですが、その凝り固まった思考こそ今回の事件を起こした要因ではあります
念の為、同行したい理由を聞かせてください」
「私は勇者様に憧れました
剣を持った相手に恐れずに立ち向かう姿、見ず知らずの私たちを助けてくれたこと
私も旅に同行して力になりたいと考えたからです
危険な旅になるかもしれない
それでも勇者様の力になりたい!」
アリアはしばらく考えた後、笑顔で言葉を紡いだ
「…そこまで言うのなら止めないはしないわ
勇者の力になりなさい、サーシャ」
女王としてではなく、一人の母として伝えた言葉だった
少し前まで本心を押し殺して人間を嫌おうとした女王はそこには居ない
そこにいるのは再び人間に希望を見出した森の主だった
犯した罪は消えない
しかし、その罪を受け入れて先に進むことは出来る
アリアはそのことを深く考え、音也たちを見送った
始まりの森を抜け旅路に着く音也たち
次の目的地を最も近い港町に決め、歩いていく
始まりの森で何度か戦闘はあったが音也は傷ついていない
サーシャは音也の戦闘の才能に魅せられていた
先程までは魔法も使えなかった一般人だったはずなのにサーシャの魔法を見ただけで同じ魔法が使えたのだ
「…勇者様、すごい才能ですね!
魔法を見ただけで使えるなんて」
「そうなのか?
漠然とイメージが湧いてきて使えたんだ」
音也はサーシャの使う魔法の構えから詠唱を一回見ただけで覚えて使うことが出来た
理由はわからないがイメージという漠然としたものだけで使えたことになる
サーシャは驚いた様子で言う
「イメージだけで使えるなんてすごいですよ!
普通に魔法を使うだけで修行を何年もする人や魔族もいるんですから!」
「それはわかったが、距離が近くないか?」
話に夢中になってる間に距離が近くなってしまったようだった
サーシャはそれに気づいた途端、焦って離れる
「す、すみません!」
「別に構わん
ユレハまであと少しだな」
そのような話をしていると目の前に黒い影が横切る
その影は音也たちの前に立ちはだかる
よく見るとフードを被った人間だった
背格好から見るに男性だろう
その男性は口を開く
「ユレハには行くな相良音也」
「…なぜ俺の名を知っている?」
フルネームで音也の名前を呼ぶフードを目深に被った男性
音也は名前を知っていることに対して質問するも帰ってきたのは質問だった
「音也、これは"何回目"だ?」
男性は意味のわからない質問をする
音也はそれに対して
「…忠告ありがとう
だが、ユレハには向かうよ」
音也は笑顔で答えた
男性はそのまま立ちつくして、音也たちが見えなくなった時に口を開く
「お前ならそうするよな」
音也とサーシャはユレハに入る
ユレハは田舎の方にある町で、活気はあったがどことなく違和感がある
「サーシャ」
「はい、わかってます」
二人とも違和感を覚えたのだろう
その違和感は町人たちだった
「ここは港町ネルフだよ
近くには綺麗な森もあるよ
妖精がいるって噂もあるし
ここは港町ネルフだよ
近くには綺麗な森もあるよ
妖精がいるって噂もあるし」
町人は同じことを繰り返し言っている
まるで壊れた機械のように言っており、目の焦点があっていない
音也はそれに対して考える
(さっきから同じことを繰り返し言っているな
まるで魂を抜かれたように
人間の仕業では無いことはわかるな)
深く考える音也の横でサーシャが発言する
「なにか良く無い感じがします」
サーシャの言う通りだろう
明るいはずの町に暗い空気
重い空気だけでなく
生気が感じられない町
そこに…
「お兄さんどいてーー!」
少女が走ってくる
すごい勢いで走ってくるため砂埃が立っている
前回のサーシャより速い
「おっと…」
しかし、音也は避けるのではなくその少女を受け止めた
その少女は紫の髪に褐色の肌、よく見ると獣耳としっぽが生えている
紫の髪の少女は元気よくお礼と自己紹介をした
「止めてくれてありがとう!
ボクはナオって言うんだ!」
紫髪の獣少女・ナオは笑顔で音也たちとサーシャを見る
「随分と元気がいいな
俺は音也だ、よろしくな
それでナオは何の種族なんだ?」
音也とナオは意気投合したように握手をしている
そして音也はナオの種族を聞く
ナオは笑顔で答える
「ボクにもわかんない!
毛の色でフェンリルとか言われたことはあるけどよくわかんない!」
そして、その話が終わるとナオはサーシャに近づいて手を握る
「お姉さんはエルフかな?」
「そうです
エルフのサーシャです
よろしく、ナオちゃん
でも手をブンブンするのやめてもらっていい?
体もブンブンしてるから!」
ナオの力でサーシャは手と体が空中に浮くくらいブンブンと震えている
「あ、ごめんごめん!
えーっとねー
ボク、フェアリーとよく遊ぶんだー!
サーシャさんよろしくねー!」
この町にある違和感はナオにはなく、元気が良い
そこでこの異変について聞いてみることにした
「この街で何かおかしなことはないか?
同じことを繰り返したりとか」
そのような質問をするとナオは少し暗い顔をして答えた
「…あるよ
ユレハの人に幸せな夢を見せる代わりにユレハを支配された」
「…差し支えなければで良い詳しく聞かせてくれないか?」
ナオはユレハで起きている異変の現状を話してくれた
ナイトメアのベルタという魔物に支配されたこと
ナオだけは拒否し、町から追い出されそうなこと
夢を見ているナオの家族を人質に取られていることを
ベルタは単独で街を支配しているということも聞いた
「そんなことが…」
「…許せないな」
サーシャと音也は表情が変わる
ベルタがユレハを支配したことを許さないという表情になった
「ベルタは夜になると自ら視察に来るんだ
ペースから見て次は明日の夜だと思う
何とか決着をつけたいんだ
たとえボク1人でも決着をつける」
ナオの目は覚悟を決めた者の目だ
それに応えなくてはいけない
音也は口を開く
「俺が手伝うのはダメか?」
「こんな状態放っておけないですもんね!」
「ありがとう!オトヤくんたちが手伝ってくれるなら心強いよ!」
その時までナオの家に泊めてもらうことになった
宿屋が営業していないので仕方ないと言えば仕方ないが
一日で色々あり、夜になるのも早いもので音也は少し外の空気を吸おうと外に向かう
音也(一日で色々なことがあったな…
山賊相手にナイフ一本で立ち向かったり、人間と妖精の蟠りを解消したり
長い一日だ
じいさんの言った通りになってるのか…?)
音也が一人で考えていると昼に出会ったフードを被った男が横にいる
「…こんばんは
相良音也、今は誰もいない」
「…お前は誰だ?」
音也が質問をするとフードの男は鼻で笑う
「とぼけなくていいお前はもう俺の正体をわかっているんだろう
そして、昼間の質問をもう一度しよう
お前は今"何回目"だ?」
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