第6話 氷獄の魔神
前回までのあらすじ
傷ついたサーシャとナオを抱え、トランを目の前にして僧侶に見てもらうもナオの方は骨折が酷く医者に見せなければ危険な状態であることが伝えられた
トランに入り、医者に見てもらうも安静にしなければならないことが明らかになった
医者に到着してまもなく、アルゼス教団の獣魔軍幹部・ザレビアと賢将軍幹部・アムスが襲いかかってくる
音也とアランが戦闘をするもフェアリークロスもブーメランも通じず、絶望的な状況であった
ナオの魔獣として力を解放しザレビアを倒すことに成功し、アムスも倒そうとするが暴走して仲間を攻撃することがないように理性が少しでも残っているうちに山岳地帯へと逃げてしまった
そして、空から登場したカトレアの正体とは…
ナオがザレビアを倒し、山岳地帯へと逃げてしまった
その直後、空からカトレアという少女が降りてきた
背中に大きな翼を持ち、悪魔のようなツノがついている
髪は黒髪ロングのストレートといった感じだ
今までの状況を悟ったかのようにカトレアは呟く
「少し遅かったか…!
だが、賢将軍の幹部・アムス
お前はここで倒す!」
アムスは不敵な笑みを浮かべている
まるで負ける気は無いと言わんばかりの笑みだ
「デモンジェネラル・カトレア
貴女が最も得意な分野は魔法ですね
私には通用しません」
「何を根拠に通じないと思っている
通じるさ
コキュートス!」
カトレアは詠唱無しで氷獄と呼べるような氷を生成した
アムスが跳ね返そうとするもアムスの前にある光の障壁にはヒビが入る
それを見たアランは思わず叫んでしまう
「さすがコキュートスだぜ!」
「あれならアムスを倒せるな」
「………」
冷静な分析をする音也、それを見て絶句してしまうサーシャ
全員で戦ったとしても勝てないのにカトレアはその状況を一人で返している
力の差はかなり大きいだろう
「コキュートスだけでは無い!この槍も飾りではないぞ!」
カトレアはアムスに攻撃を続ける
魔法以外干渉しないはずの障壁に槍を当てている
そしてガラスが割れるように砕け散ってしまう
「私の障壁が!この障壁は魔力以外干渉しないはずなのに何故!?」
「槍に魔力を通したのが見えなかったのか?
これで幹部とは笑わせる
アルゼス教団は私を警戒しているのではないのか?」
「くっ!障壁などなくても我が魔力で…」
アムスがそう言った次の瞬間、氷の刃がアムスの胸に刺さっている
「コキュートス
さらばだアムス」
「私…は幹部…のはず…な…ぜ…この、よう…な」
アムスは塵となり消滅して行く
危機は去った
しかし、ナオを暴走させてしまった
その事実は音也たちの心を蝕むだろう
今はカトレアに礼を言うのが先だろう
「すまない…助かった
俺は音也だ
こっちは俺の仲間のアランとサーシャだ
本当はもう一人いたんだが、暴走してしまった」
「私はカトレアだ
魔王様の命により、お前たちを助けに来た
だが、一足遅かったようだ
こちらこそすまない」
カトレアがもう少し早く着けばナオを離脱させなくとも勝てたかもしれないと詫びた
「その怪我は辛いだろう
今治す
ヒールレイン」
癒しの雨が降り注ぐ、緑の光を放つ雨だ
音也の脇腹の切り傷も体に空いた穴も一瞬で治ってしまう
先程の僧侶とは比べ物にならないほどの魔法力だ
体の数ヶ所を詠唱なしで一瞬である
その魔法力は計り知れないだろう
カトレアは話始める
今後のことについてだ
「明朝にはトランを発たなければいけなくなってしまった
この場にいると再びアルゼス教団の幹部クラスが来るだろう」
「アルゼス教団に目をつけられるのはわかる
だが、幹部クラスをいきなり送り込んでくるなんてどうしてだ?
俺がベルーガに深手を負わせたからか?」
音也は疑問に思ったことをそのままカトレアに伝える
カトレア少しため息を着く
「それもあるが勇者
お前は付けられた名を知らないとはな」
「名前?」
「通り名のようなものだ
お前は可能性の勇者と呼ばれている
その名は魔界まで届いているぞ」
音也はそんなことになっていると知らないし特に驚いてもいなかった
しかしそのような通り名をつけられていることは意外だった
「可能性の勇者か
カトレアは微笑んで答える
「そうだ
いまはフェアリークロスしか使えないが仲間との絆を深める度に使えるものが増えるだろう
そして、お前たちの仲間に加わりたい
良いだろうか?」
カトレアの質問に対して音也は即答した
戦力アップだけでは無い
仲間が増えることは旅において大切なことだ
「ああ、カトレアが仲間になってくれるなら心強いよ」
「ありがとう
では、この姿にならなくてはな」
カトレアが指を鳴らすと髪の色は白く変化し、ツノと翼が消える
そして、服装も変わっていた
トランの人間に怪しまれないように人間のようになった
「今の肩書きはデモンジェネラルではなく暗黒騎士だ
よろしく頼む」
「設定もちゃんと作ってるのすげーな…
まぁその姿なら誰にもバレねぇだろうしな」
カトレアは人間形態に変装した時の設定もちゃんと作っているらしく抜かりが無い
その点もアランがツッコミを入れているが
人間界での活動は便利になるだろう
実際、魔界から人間界を視察する時に使うらしい
そしてずっと黙っていたサーシャが口を開く
「…私は弱い
ナオちゃんを助けられずに、ザレビアに傷も与えられなかった
だから私は…」
そこまで言った時カトレアに胸ぐらを掴まれた
「だからなんだ?
このパーティーから抜け、旅を辞めるとでも?
強かったら助けられた
ならばはっきりと言ってやる!
ああ、そうだな!お前は弱い!
この程度で旅をやめようとするお前は少なくともな!」
カトレアは内面的な部分を見て怒っているのだ
「…何よ!何もわからないくせに!
努力もせず強くなったようなあんたにはわからないわよ!
あの賢将軍幹部だってあっさり倒したあんたなんかに!
お高く止まってんじゃ無いわよ!」
「誰が努力してないだと?
お前こそ何も知らないくせに偉そうにするな!
たった一人仲間が…しかも生きている仲間が離脱したくらいで諦めるやつが努力を語るな!
死んで戻ってこないわけじゃないのに諦めてるやつの方がお高く止まっているだろう!」
カトレアとサーシャは取っ組み合いの喧嘩になっている
音也とアランは止めに入ろうとしたがあまりに激しすぎて止められなかった
そして約一時間後、喧嘩は止まった
圧倒的にサーシャの方が傷ついている
個人的な喧嘩で傷ついたとはいえ、カトレアはヒールレインをかけている
「もう夕方になってしまった
宿を取らなくては
明朝出発できないな」
カトレアはそう言って宿をすぐにとる
早いのは早いがこの慣れた手つきはもう何度もやっているのだろう
そして宿に入るなり疲れてすぐ眠ってしまった
部屋割りとしては音也、アラン
サーシャ、カトレアだ
この部屋割りで不安ではあったが仕方ないと思う他なかった
-魔王城・メイド長の部屋-
ここは魔界で魔王城の一室
そこには大きな黒い翼を持ち、美しい灰色の髪をした女性が佇んでいる
(お姉様、勇者様の元に向かわれたのですね
本当は私もついて行きたかったのですが…メイド長としてここを離れるわけにはいきませんものね)
そのようなことを考えていると扉をノックする音が聞こえる
「カレン様、少しお話が」
「入りなさい」
カレンと呼ばれた少女が入る許可をすると
ノックした人物入ってくる
水色の髪と水色の翼を持った少女だ
「話とは何かしら?ナナ」
「魔王城付近をうろついている獣魔軍を半数、鳥魔軍の精鋭を2体倒しました
獣魔軍は撤退し、鳥魔軍は精鋭2名のみでした」
「ご苦労さま、親衛隊の皆は?」
カレンがそう言うとナナは親衛隊は仕事に戻っていると伝えた
「みんなメイドとして素晴らしい心構えですね
ナナ、貴女たちの頑張りは魔王様に伝えておくから仕事に励みなさい」
「ありがとうございます!では仕事に戻りますね」
カレンはナナにそう伝え、仕事に戻る
メイドとしての仕事は終わり、今は姉・カトレアの代わりに魔界の状況を見ているのだ
なにか怪しい動きをするものが居ないか、魔王城付近に教団員は居ないかなどを探っている
メイド長として、魔王の騎士として魔界を守るのも役目なのだ
(お姉様、いずれこのカレンも合流いたします
その時は力になれるよう鍛錬は怠りません
ですからどうかご無事で)
第6話 氷獄の魔神 End
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