第7話 魔神の瞳

前回までのあらすじ

トランで襲いかかってきたアルゼス教団の魔物に苦戦していた音也たち

ナオが切り開いてくれた突破口も虚しく音也たちでは何もできない状態だった

そこにカトレアと名乗る少女が救援に来た

カトレアの強さは凄まじく賢将軍幹部・アムスの反射障壁をものともせずに魔力だけでヒビを入れ、物理的に干渉できないはずの障壁を槍で破った

コキュートスでアムスにとどめを刺すと遅くなってしまったことを伝え音也たちに謝罪をし、仲間となる

次の町へ向かうため宿を取りひとときの休息となった


音也たちは宿に泊まり体力を回復させた

そして朝になり旅立つ準備をしている時、カトレアが音也に話しかけてきた

「地図を見せてくれ」

「ああ、別に構わないが目的地は昨日話した通りなんだろ?」

「いや、オーレンには直接行かない」

本来の目的地はオーレンという大都市であり、音也の剣を手に入れるために直接向かうはずだったのだ

なぜ目的地が変わったのか

「それは何故だ?」

「オーレンに不穏な動きがあったからだ

アルゼス教団員を複数目撃したらしい

だから、この水の都・ガドゥに最初に向かってそこからオーレンへと向かう」

オーレンの前には大橋があり、それを渡ることでオーレンがある地方へと行けるのだが本来は水の都・ガドゥに向かわず直接オーレンへ行くはずだったが教団員が複数いるであれば戦闘は避けられないため、新しい剣は手に入れられない

「おーい!何してんだ?早く行こーぜ!」

宿の外からアランの声が聞こえる

ナオが離脱したあとだと言うのに元気なものだ

それにしてもカトレアは起きているのにサーシャはまだ寝ているのだろうか

気になった音也がサーシャの部屋まで行くと大量の矢が壁や屋根に刺さっており、サーシャの姿はなかった

「なんだこれは…」

「ああ、あいつが昨日必死に私に向かって矢を放っていてな

面倒だから全部跳ね返したんだ」

音也は驚くと同時に呆れていた

まさかここまで仲が悪いとは…

旅をする中で問題は無いのだろうか

サーシャは宿屋の主人に謝っていた

この宿は後々、無数の穴が空いている開かずの部屋があると噂になるがそれはまた別の話

「うぅ〜っ、すみませんでした!」

「まさかここまで仲が悪いとはなぁ…」

「ま、もしかしたらケンカするほどなんとやらかもしれねぇぞ?」

アランがそう言うとカトレアとサーシャはアランに向かって

「「そんなこと絶対にない!」」

「お、おう…」

二人とも息ぴったりではあるがこれ以上言うと氷や矢が飛んできそうなのでアランは心の中に留めた

「それにしてもアラン

ナオがいなくなったのに何ともないのか?」

「ナオは絶対戻ってくるって信じてるからよ

とりあえず進むしかねぇかなって」

その言葉を聞いて安心したかのように音也は微笑む

アランも優しく微笑んで一行は再び進み始める

サーシャとカトレアはずっと後ろで喧嘩をしているがある意味仲が良いように思えてきた

トランとガドゥは近く歩いて10分くらいの位置にある

水の都と言うだけあり、水が澄んでおり綺麗な水が飲める場所として有名である

オーレンがなければ大都市になっていたのはガドゥかもしれないと言われるほどだ

そして、この場所にはもう1つ噂がある

魔女が住んでいるという噂だ

歩いているうちにガドゥに着く一行

そしてその最も大きい家屋の扉をノックするカトレア

「マーリン居るか?」

少しの沈黙の後、茶髪の小柄な少女が出てくる

「おや、デモンジェネラル様がこんなところに何の用で?」

小柄な少女は嫌味ったらしく言うがカトレアは平然と答える

「予言をしてほしい」

「断る」

即答だった

少女はドアを思い切り閉めた

「マーリン、お前が終極の魔神の"目"になっているのは知っている

だが、見てほしいんだ

頼む!」

カトレアは思い切り頭を下げている

音也たちは何も言えなかった

「…デモンジェネラル様にそこまで言われちゃやるしかないか

やれやれ、ちょっと待ってね

今何とかして終極の魔神との縁を切るから」

マーリンが小声でつぶやくと体が光り始める

「いいよ、来たまえ勇者御一行様

ただし、5分しか縁を切れない

だから5分間だけしか予言は出来ないよ」

「感謝する、マーリン」

礼をするカトレアを連れ、マーリンは音也たちを案内する

占い師の部屋のようになっており、占星術や魔術に関する書物が多いようだ

「さ、何を予言してほしいんだい?」

「オーレンにいる教団員が何者かを知りたい

そして、勇者の剣はオーレンで見つけられるか?」

マーリンは水に手をかざすとマーリンの顔を映していたはずの水はベルーガと、もう1人夢魔のような存在を映しだした

しかし、シルエットのようになっておりベルーガ以外は判別できない

そして次は音也の剣

柄の部分に何重にも鎖が付いた日本刀が映っている

それはまるで妖刀で教団の魔物にも太刀打ち出来るような日本刀だ

そして…

「ここまでだ、

さぁもう行きなさい勇者様」

マーリンは嫌そうな話方をしていたが顔は別れを惜しむような顔をしていた

もう時間が来てしまったのだろう

音也は頭を下げ感謝を伝える

「ありがとう、いつか共に戦える時が来たらその時はよろしく頼む」

「…ああ、こちらこそ」

マーリンは微笑み、音也に手を振る

音也たちがカドゥを出ていって関所に向かったとき"それ"は現れた

「何故我トノ縁を切ッた?

お前は我ノ目ダ

師弟共々我ニ敗北し、目にさレたことを忘れたカ?」

「ああ、忘れてないよ

忘れるわけが無いあの時のことは!」

マーリンは悔しそうに唇を噛み締める

その唇からは血が出る

「それにしても終極の魔神様は何を恐れているんだい?

わざわざカトレアがいなくなった後に来るなんて

怖いから戦えませんと言ってるのと一緒じゃないか」

マーリンはこの状況でも軽口を忘れない

素晴らしい精神力だ

「違ウ、我は究極の魔神

恐レなど無イ」

「最強の魔神を取り込んで

究極になった気でいるだけだ

お山の大将」

終極の魔神はそっとマーリンの目に触れる

そして焼印のような模様が着く

「あぁぁぁぁぁぁぁァァァ!」

マーリンの悲鳴が響く

想像を絶する痛みなのだろう

「目としての役割ヲ果たせ

余計なことはするナ」

そう言って終極の魔神は消えていく

(…余計なことをするな?ふざけんなよちくしょう!

この痛みもあの時のことも絶対に忘れない絶対に復讐してやる!

お前が一番困るように行動してやる!

勇者に再会の加護を…

これでお前を倒す可能性がひとつ増えたぞ馬鹿め!

だから勇者、君は必ず勝ってくれ…)

マーリンはそのまま意識を手放した

想像を絶する痛みと疲労だったのだろう

-音也side-

「ん?今なにか…」

「どうしたんだよ音也」

「いや、なにかマーリンの気配がした気がして」

音也はそう言うとアランは笑いながら音也の背中を叩く

「さっき会ったばっかだろ?

口説くなら本人の前でやれよ!」

バシバシと音也の背中を叩くがその手は震えている

(そうか…さっきから感じる強大な気配

それは終極の魔神のものか)

音也たち全員が感じているこの強大な闇の気配

それは終極の魔神のものだ

凍りつくような闇の気配

禍々しいで済むものでは無い

もっとどす黒く、押しつぶされそうな闇の気配

近づかれたらそれだけで心臓が止まりそうだ

「終極の魔神の目にされていたからな

一時的に縁を切ったことでより強い呪印を与えられたのだろう」

カトレアは冷静に分析する

そしてサーシャは

「こんなやつが私たちの倒すべき敵…?」

「怖気付いたか?

また逃げるとか言ってみろ

その時は…」

カトレアがそこまで言いかけるとサーシャは

「違う…!

ナオちゃんを暴走させたこの魔神に一矢報いてやろうって思ったのよ!」

「…お前のことは嫌いだが少しは認めてやろう

だが、人の寝込みに矢を放つのはどうかと思うがな」

カトレアは笑いながらサーシャに言う

「何ですって!?

ちょっと良い奴かもと思った私が馬鹿だったわ!」

「やるか?いいぞ

かかってこい!」

かかってこいと言いながらカトレアはサーシャの胸ぐらを掴み再び殴り合いの喧嘩が始まる

音也は仲裁に入りながら考える

(…今はまだこのつかの間の平和を楽しもう)


第7話 魔神の瞳 End

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