第8話 空を統べる者

前回までのあらすじ

トランからオーレンへ直接向かうルートを変更して、中間に位置するガドゥへと向かう音也たち

ガドゥに立ち寄ったのは教団員がオーレンにいるからというのもあるが、マーリンという魔女に会うためでもありマーリンに予言をしてもらった

終極の魔神の"目"となっているマーリンは最初こそ断るものの、終極の魔神との縁を一時的に切って予言をしてくれる

マーリンの前に現れた終極の魔神の気配に音也たちは少し気圧されるが戦い続けることを誓う


-オーレン最上層・教会-

オーレンは階層順にわかれている都市で最下層は貧しく位の低い層、最上層では貴族や富豪などが集まる場所である

魔教会とほぼ同じ作りになっている教会に1人男が立っている

その姿はベルーガであった

「我が神バアル様、どうかお姿を」

ベルーガがそう言うとバアルが姿を晒してベルーガに話しかける

「ベルーガよ、我々が勇者に勝てないのは何故だと思う?」

「はっ、それはあのデモンジェネラルの介入や仲間たちの協力があってこそでしょう」

「そうだな、そして勇者に勝つためには何をしたら良いかわかるか?」

バアルはベルーガに問いかける

ベルーガは少し考えた後に答える

「地形を利用する…というのはいかがでしょう

そうと決まれば私も」

「まぁ待て、地形を利用するというのは間違いでは無い

勇者は翼を持たない

つまり空を飛べる魔族を連れていけば良い

そしてベルーガ、傷が完全に治っていないのに向かうことは無い

我はお前を失いたくない」

「…はっ、ありがたきお言葉」

「鳥魔軍、屍鬼軍、魔虫軍を勇者の元に向かわせ数で圧倒せよ」

バアルはそう言うと姿を消す

1人残されたベルーガは鳥魔軍、屍鬼軍、魔虫軍に命令をする

「屍鬼軍・レーン、魔虫軍幹部・ドロルを指揮官として勇者の元へ向かい、その首をバアル様に捧げるのなさい!」

鳥魔軍、屍鬼軍、魔虫軍は声を上げ飛び立つ

そして、思う

(勇者よ、ここで終わるならそれまでの男

だがもう一度勇者と戦いたいと思う私は…)


-オーレン大橋-

ガドゥとオーレンを繋ぐ橋に音也たちはいる

歩いていると空から無数の影がこちらに向かってくるのが見える

それは教団の魔族たちだった

「さすがに場所がバレたか!」

カトレアがそう言うと屍鬼軍の悪霊型の魔物がこちらに向かってくる

悪霊型の魔物は空から音也に向かって氷系の魔法を連発してくる

「空からネチネチと…避けるのも大変だな」

音也がそう言うとカトレアが教団の目的に気づいたようだった

(まずい、勇者が空を飛べないことに目をつけて襲いかかってきている!

しかも悪霊型の魔物を倒せるのは今私だけだ

魔虫と鳥魔…そこまで相手はできない!)

カトレアが悪霊型の魔物に向かって槍を突き出す

「スターライト!」

カトレアがそう言うと槍から光弾が発射され悪霊型の魔物を消滅させる

音也には新たに魔虫軍幹部・ドロルが向かってくる

ドロルは蛾のような翼を持ち、体はナメクジのように柔らかい魔族である

「勇者よ!お前は空を飛ぶ我々に為す術なく敗北する」

「俺は1人じゃない、仲間がいる

俺だけの力でお前たちに勝つわけじゃない!」

「…つってもよ、この数どうするんだよ

俺のブーメランだってそんな距離まで当たらねぇぞ!?

カトレアだって悪霊型で手一杯だしよ」

「私の矢もあの距離まではちょっと遠くて当たりません!」

アランは空飛ぶ魔族たちの数に驚いている

その数は50は優に超え、まさに多勢に無勢である

サーシャの矢を魔力で強化しても届かないのだ

そして音也は…

魔装クロス!フェアリークロス!

アラン、ブーメランを高く投げてくれ!」

「お、おお!何だかわからねぇけど考えがあるんだな!わかったぜ!」

アランはブーメランを二つ投げる

音也はジャンプする瞬間、風を地面に向けて発射しブーストする

そして、ブーメランを踏み台にして

「ブーメランを踏み台にして高い位置に行ったのか!

さすがだぜ音也

やっちまえ!」

「ああ!疾風かぜよ、我が眼前の敵を切り裂く刃となれ!

ウインドカッ…」

ここまで言った時、音也の体に痛みが走る

それは敵の攻撃では無い、自身の周りに雷撃が起きたのだ

それによる痛みだった

その雷撃はドロル以外の魔虫軍を蹴散らしていた

「な、なんだ!今の雷撃は?

勇者!お前がやったのか!?」

ドロルは戸惑いながらも音也に問う

音也が意識してやったのでは無い

だが、音也は痛みこそあったが無傷なのだ

(レーンは既にカトレアと交戦中…

ここは鳥魔軍も指揮して勇者かカトレアを叩く、どうする…)

「レーン、こっちに…」

ドロルがそう言いかけた時、レーンが消滅していくのが見えた

既にカトレアが倒していたのだ

「悪霊型は片付けた

鳥魔もほぼ壊滅状態だ何とかなるものだな

ドロルお前があれこれ考えてる間に半壊したぞ?」

カトレアは微笑みながら言う

その体にほぼ傷は無いが魔法力が少なくなっているのだろう

少し疲れが見える

「ぐぬぅ…

だが、刺し違えてでも勇者お前だけは倒す!」

ドロルは音也に向かって粘液のようなものを吐きかける

レディプレートに当たり、溶けてしまう

音也はレディプレートを外し、そのまま地面に捨てる

ドロルは不敵に微笑み言う

「防具を捨てたな?我が溶解液でその体溶かしてくれる!」

サーシャは他の魔物や鳥魔に矢を少しづつ当てるが数が減ったようには思えない

アランもブーメランで応戦するも届かずで苦戦している

ドロルは音也に再び溶解液をかけようと近づく

その瞬間…

音也はドロルに向かって溶けたレディプレートを投げた

「な、なにぃ!?

溶けた防具を

しかも指に触れて指の薄皮が溶けるほどなのに痛みに顔を歪めることも無く投げてきただと!?」

「お前が溶かしたからな

責任をもってお前が処理しろ

それに指の薄皮が向ける程度、一度腕を切り落とした時より痛くない」

音也はそう言うと弓を構える

音也が構えた弓にカトレアが手を添える

「この戦いを終わらせよう」

カトレアがそう言うと音也は返事をする

「ああ、力を貸してくれカトレア」

カトレアが魔力を込め音也が撃つ

それは…

疾風かぜよ!深淵と共に数多の敵を切り裂く加護を!

アビスバレッジ!」

緑と赤のオーラを放ちながら無数の敵を撃ち抜く

ドロルと他の魔物たちも同様に撃ち抜かれた

ドロルは最後に言う

「ベルーガ様、我が神バアル様

どうかお許し…を」

そのままドロルは溶けていく

空を飛ぶ敵に苦戦はしたが何とか勝利を収めた音也たち

そして、カトレアからそのことについて言われる

「勇者

お前は空を飛べるようにならなくてはいけない」

そうだ、今のような戦い方では限界が来る

空を飛べるのがカトレアだけというもの今回のように多勢に無勢ではいずれ負けてしまう

それに対してサーシャは突っかかる

「勝てたんだから今はいいじゃない!

その時が来たらで!」

「その時が来たら?

今来るかもしれない

いつ来るかもわからないのにか?バカを言うな

空を飛べなければいずれ負ける

死にたくないなら飛ぶしかない」

カトレアはサーシャにそう言い放つ

正論だ

死にたくないなら飛ぶしかない

今までのような戦い方では絶対に勝てないのだから

「そうかもしれないけど今は勝利を喜んでも…」

カトレアはサーシャの胸ぐらを掴み言う

「つかの間の勝利に喜ぶ前に次のことを考えろ

全ての戦いが終わった訳でもないだろう

教団、終極の魔神

今戦った奴らよりも強い者はいる」

音也とアランはさすがに疲れたのか休んでいる

同時に音也は思う

空を飛べれば先程のように苦戦はしなかっただろう

どうしたら飛べるようになるか…ということである

敵は得意な戦い方で挑んできた

自分たちも何か出来なければこの先に進むことは難しいだろう

サーシャとカトレアの喧嘩に仲裁に入りつつ音也は思う

(あの雷はなんだったんだ…?

あれが使えれば空を飛ぶ魔物ももう少し楽に倒せるはずだ…

そして空を飛ぶ新しいクロスを使えるようにならなくては)


序章 空を統べる者 End

次回、第1章 オーレン編 第1話 新たなる力

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