第1章 第1話 新たなる力
前回までのあらすじ
オーレン大橋でアルゼス教団の鳥魔軍、屍鬼軍幹部・レーン・魔虫軍幹部・ドロルと対峙した音也たちその数は圧倒的で全て空飛ぶ魔族だった
勇者パーティはカトレア以外飛行能力を持たないこと、屍鬼軍幹部・レーンは悪霊型の魔族であるため、光属性の魔法を扱えるカトレア以外対抗手段を持たなかったことと上空を飛ぶ魔物たち相手に苦戦を強いられた
音也に落ちた雷とカトレアの協力によるアビスバレッジで何とか勝利を収めたが、空を飛ぶ魔物相手に勝つためには音也は空を飛ばなくてはならない
オーレン大橋での戦いを乗り越えてオーレンへとたどり着いた音也たち
そこに広がる大都市は今までに見た町や村の数倍の大きさはあった
層にわかれており、1層から6層まで部屋のようになっており、各層魔法術式で組まれたエレベーターで移動する
今音也たちがいるのは3層である
大都市と言うだけあって賑わっており、かなりの人間が歩いている
「すごい人数ですね〜」
「大都市と言うだけあるな」
音也とサーシャは驚いている
カトレアとアランは慣れているのかさほど驚いていない
音也たちが歩いていると、武器屋の店主から声をかけられる
「ちょっとそこの嬢ちゃんたち!」
「俺たちですか?」
音也は自分たちが声をかけられたのかと武器屋の店主に問いかける
武器屋の店主は笑顔で答える
「そう、黒髪の嬢ちゃん」
「すみません俺は男です」
「あー、まぁ間違われるよなぁ
うちの相棒は」
「美人さんですもんねー」
サーシャとアランは間違われることもあるだろうなと言う顔だった
武器屋の店主は驚きを隠せずにいた
「え?あんた男性なのかい!?
弱ったなぁ…うちの娘が作った防具があるんだけども女性専用装備なんだ…」
「女性専用装備つけられますよ?」
音也はあっさりと返した
溶けてはいるが武器屋の店主の前でレディプレートを装備して見せた
武器屋の店主は驚くと同時に音也たちを店内に案内した
「凄いな!それはレディプレートだろう?
女性専用なのに君は装備できるのか!
ははっ、なら問題ないな!」
店主は着物を持ってきて音也に装備させる
最初は音也にはブカブカだった着物は音也の体型に合わせてサイズが合っていった
「すげぇ…」
「持ち主のサイズに合わせる装備
だが、魔力のようなものは感じられない」
思わずアランが呟くカトレアも魔力の流れを調べるが魔力が使われた形跡は無い
「今まで誰も着れなかったんだ
装備できるはずの女性でも何故だかわからなかった
まるで君に装備してもらうのを待っていたかのようだ
それは八重桜という着物だ」
武器屋の店主がそう話すと奥から異様な気を放つものがあった
それは…
「刀…?」
また音也を呼んでいるようだった
八重桜に選ばれた今だからこそわかる
確実に音也を選んでいる
「よくわかったね
あの刀はムラマサ
俺の死んだ兄貴が作った誰にも扱えない妖刀ってやつさ」
音也は瞬時に理解した
使えないのでは無い、ムラマサが人を選んでいるのだ
真の力を解放できる者以外は鞘から抜くのを許さないように
「店主さん頼みがある
あの刀を貰えないだろうか、言い値で良い
払える分はいくらでも払う
今俺は武器を探しているんだ」
音也は頼み込むが店主は首を横に振った
「あれはダメだ
譲れない
君が危ないからな
八重桜はあげるから悪いがそれでムラマサのことは忘れてくれ」
「そうですか…あの刀はそれほどのものなのですか」
音也は残念そうな顔をするが仕方ない
武器屋で他の刀を買い、諦めてオーレンを散策することになった
武器屋を出たあとサーシャは八重桜を着た音也をじっと見つめている
「勇者様お綺麗ですね」
「どうしたんだ急に?」
「勇者の装備は手に入って一言がそれか
お前はやる気がないのか?」
カトレアは鼻で笑いながらサーシャをバカにしている
そしていつも通り喧嘩になる
場所が場所なのでさすがにアランと音也は止める
しかし、2人の喧嘩は長く続いた
さっきまで昼過ぎぐらいだったのに日が傾きかけている
音也の装備を整えるのが目的ので目的自体は達成しているが
さすがに宿に向かわなければ行けなくなった
「全くよぉ…
お前らは喧嘩したら長ぇよなぁ!」
「すみません…」
「……すまん」
アランはサーシャとカトレアに向かって怒る
まぁ本当のことなのだから怒られても仕方ないのだが
カトレアもサーシャは反省しているがおそらくまたやるだろう
「大体、音也の装備も予言と違くないか?」
「あ、確かに!」
マーリンの予言で現れた剣と明らかに違う
今はただの刀、鎖が巻かれてはいない
「だったらあの刀の方が欲しかったよなぁ
ムラマサだっけ?
あれの方がよっぽど強そうだぜ」
「…予言の刀はムラマサだ」
音也は呟く、自分を選んだ妖刀
その柄には鎖が巻かれていた
何重にも
「え?マジかよ!だったらなんで手に入らねぇんだ?」
「マーリンの予言は外れない
だが、今手に入らないのは時期では無いのか?」
アランもカトレアもマーリンの予言を信用しているようだ
だからこそ見てもらったのもあるが
だが、今は時期では無いのかもしれない
そう思い宿へと向かった
今回は音也とカトレア、アランとサーシャだった
トランであったようなことをここで起こしてはいけないので仕方ないが…
そして何事もなく夜を迎えたが音也は寝られずに外へと出る
(ムラマサ…あの刀は俺を呼んでいた
まるで何年も何十年も待ってくれていたかのような…)
音也は考えながら歩く
まるで1人になるのを待っていたかのように影から何者かが飛び出してくる
「誰だ」
「初めまして、可能性の勇者
私は妖魔軍のアニス
ベルタの幼なじみと言ったところかな
ベルタの無念ここで晴らさせてもらうよ」
「殺されるわけにはいかない
抵抗はするぞ」
音也は新調した刀を構える
時間的に
今は不利な状況だ
ウインドや刀で応戦するもアニスは強い
そして妖魔と言うだけあり、搦手が得意なようだ
「私の得意な魔法は魅了魔法
いくら勇者と言えど男である以上君は為す術もなく負ける」
アニスが魔力を解放すると桃色の煙のようなものが出てくる
これが魅了の魔法
音也は…
「そろそろかな
自分の刀で心臓を貫け」
「…残念だが効かないぞ」
音也はアニスを殴った
「なっ!?なんで?人間の男には確実に効くはずなのに」
「すまんが愛してる
だからお前如きに魅了されるわけない」
「愛してる女がいるだと?それだけで魅了を防げるわけない!
馬鹿なことを言うな!」
アニスは驚きからか激昂している
しかし、音也は冷静に返す
「そんなことはどうでもいい
どっちにしろこのままじゃ決着がつかない
お互いに決め手がないんだからな」
アニスは不敵に微笑んだ
そして
「決め手がない?
あるさ!
この紫の霧が見えないのか?」
「これは毒か…
さすがに毒はまずい…な」
「これは魔界の瘴気、我々アルゼス教団が目指す魔界本来の姿!
人間にとっては猛毒だ!
ここまま吸って苦しみながら息絶えろ!
魅了されて心臓を貫いた方がマシと思える苦痛を与えてやる!」
魅了を精神力で弾いても人間の体である以上毒は通る
しかも、人間にとって猛毒な魔界の瘴気
アニスも価値を確信したその時…
何かが音也の前に落ちてくる
それは鎖が柄に何重にも巻かれた刀
あの時目にしたムラマサだ
「ムラ…マサ…?」
ムラマサは魔界の瘴気を浄化し、音也の周りの空気を正常に戻した
「そんなボロ刀が来たところで何が出来る!
瘴気は消えたがお前の体に毒は残っている
このまま攻撃すれば私の勝ちだ!」
音也がムラマサを掴むと体の毒も浄化される
ムラマサはまるでこの時を待っていたかのように音也の手に馴染み、鞘から抜ける
主を待ち続けた妖刀の刀身は黒く、刃は赤紫に怪しく光を放つ
血を欲しているかのような不思議な刀だ
アニスに向かってムラマサを振ると不思議なほど軽かった
アニスを縦に真っ二つにするかのように振っただけ
「やっぱりなまくらだなその刀は
全然切れていない!」
「…いや、終わった」
音也がそう呟くとアニスの視界が左右でズレる
「あれ…?なんで視界がかズレて…?」
アニスはようやく自分が真っ二つにされたことに気づいた
「ベルタ!エレシュマ様!申し訳…ございません…!」
アニスはそのまま消滅していく
音也はムラマサを鞘に収める
そして…
(ありがとう、ムラマサ
お前は俺がここに来るまでずっと待ってくれていたんだな
何年も、何十年も
俺がお前を振るう時までずっと…)
第1章 第1話 新たな力 End
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