第1章 第5話 合成魔獣
前回までのあらすじ
アルゼス教団の神・バアルは音也を倒すためにフォデラルの研究である合成魔獣を使おうとしていた
それまで教団員には大胆な動きは避けろと命令したもののベルーガは音也と戦いたいがために命令を無視してしまう
音也はそれを見て暗殺だと思ったが、ベルーガは否定する
今だけは使命を忘れ一人の男として戦ってほしいと音也に頼み、音也は受け入れる
ベルーガの右手、中指と薬指の間を切断し、まだ戦い付けようとするも、エレシュマの介入によりベルーガが処刑されるはずだった
しかし、バアルは戻ってこいと伝えただけであった
その言葉に驚愕するベルーガ
音也はベルーガとの戦いは敵同士ではなく、友情のような奇妙な何かを感じていた
-オーレン最上層・教会-
オーレンの最上階にある教会、アルゼス教団の支部として機能している教会
そこにはベルーガとバアル、エレシュマの姿があった
「ベルーガよ、命令を無視した貴様を処刑しなければならん」
(やはり、この時が来てしまったか
戻ってこいと言われたがやはり神・バアル様
自ら私を処刑するためだったとは)
ベルーガは頭を下げてバアルの声を聞く
そしてバアルは…
「だが、教祖であるお前を失うのは痛い
故に1度は許そう」
「なっ!?なんですと!?
私は処刑されるはずでは!?」
ベルーガは驚きを隠せずに焦っている
それはそうだ
本来は処刑されるはずなのに許されたのだ
「我は許そう
お前はいなくてはならない存在なのだ
ヨルムンガンドが完成した
後は勇者たちを倒すだけだ」
そう言ってバアルは消えていく
「ベルーガ様、これが神の答えです」
「そう…ですか」
エレシュマの発言にベルーガは小さく返事をする
まさか許されるとは思っていなかったのだ
ヨルムンガンドが完成したとあれば音也とはいえ無傷では済まないだろう
教団のためには敗れてほしいがベルーガ個人としては敗れてほしくない複雑な心境であった
(勇者、貴方がヨルムンガンドをもしも倒すことがあれば私も覚悟を決めなければなりませんね…)
ヨルムンガンドが敗れることは無いと思うが
万に一つ可能性があるのならばベルーガも覚悟を決めなければならない
"我が身を捨てる覚悟を"
-オーレン西・迷いの森-
オーレンから少し離れた大きな森、通称迷いの森という所を音也たちは歩いていた
この地域は魔物が多く、オーレンの兵士でも手を焼くという話だったが最近、魔物が全く姿を見せないという噂があったので調査に来ているところだ
たしかに魔物の姿は見えない気配はあるのに全くと言っていいほど見ない
まるで恐れて奥に隠れているようなそのような感覚だ
(妙だな
ここまで魔物が出てこないなんて)
「複数の混ざりあった気配がある
まるで意図的に作られたかのような…」
カトレアが混ざりあったような気配と言った瞬間、動き始めた
その物体はかなりの巨体で蛇
大きさは50m程だろうか
その蛇の魔物は咆哮を上げ、本格的に活動を開始する
「こんなでけぇの一体どこに隠れてたんだ!?」
「早く倒さないとオーレンが危ないわ」
アランとシャルロットが構える
まず一番に飛び出したのは音也だった
「
「お、おい、音也
敵の動きを見てから…」
アランがそう言うと音也の顔色は明らかに変わっていた
「あれは…あれは存在してはいけないものだ!
ウインドバレッジ!
ウインドカッター!」
(なんだろう…いつもの勇者様じゃないみたい
まるで人が変わったように
それだけあの魔物は危ない存在なの?)
その巨体ゆえ全く傷がついていない
と言うより傷がついても瞬時に再生している
「効果はないか!」
「勇者様、落ち着いてください!
一体これは何なんですか!?」
サーシャは音也の腕を引っ張りながら言う
「教団が作り出した禁忌の生命だ
こんなものは存在してはいけない!」
「シャアアアアアア!」
その蛇は威嚇とは思えない轟音を放つ
至近距離から聞いたら鼓膜だけでなく脳まで破壊されそうな轟音だ
「体もでけぇから声もでけぇのか!」
「耳がおかしくなりそう!」
シャルロットだけ平然としているがそれ以外の仲間は耳を塞いでいる
「
ウインドブラスター!」
その口を開けた瞬間を狙い
音也はウインドブラスターを放つ
轟音と共に蛇が崩れ落ちる
「やりましたね!勇者様!」
「ダメだ…!
心臓を1つしか潰せなかった
すぐに復活する!」
音也の見立て通りすぐに復活した
「シャアアアアアア!」
蛇は口から毒を吐き出してきた
その矛先はサーシャに向かっている
「え…?」
サーシャは驚き目を瞑ってしまう
(ああ、私毒浴びちゃったんだ…
ここで終わっちゃうんだ私…
……あれ?どこも痛くないし、苦しくもない)
サーシャの前に音也が立っていた
「だ、大丈夫…か
サーシャ」
音也は毒を浴びクロスも解除されている
「私は大丈夫です
でも勇者様は…!」
「守れて良かった…」
音也はそのまま意識を失い、力なく崩れる
トドメを刺そうと蛇は向かってくる
「シャアアアアアア」
「勇者を連れて宿へ行け!
今はそれ以外にどうすることもできん!」
カトレアがサーシャたちに言う
「で、でも…」
「いいから早く行け!」
カトレアはサーシャ立ちを宿へ向かわせると槍を構えるそして…
「眠っていろ合成魔獣!
コキュートス!」
迷いの森の半分以上を凍結させヨルムンガンドを動けなくさせた
ヨルムンガンドの半分は蛇でできている
つまり変温動物であることの特性を突いたのだ
尻尾側までは凍ってないので少しだが動けてしまう
そこでカトレアは尻尾側に向かって
「トルネードフォース!」
ヨルムンガンドの尻尾側に雨を降らせた
ヨルムンガンドは完全に動きを停止している
それを見たカトレアは音也の待つ宿へと向かう
-オーレン・旅人の宿-
宿のベッドに音也は寝かされている
毒は右肩まで侵食している
勇者の加護で毒の回りは食い止められているものの、毒は確実に侵食しており、時間の問題だ
「キュア程度では治らないな
エルキュアでも侵食を抑えることしか出来ない」
カトレアはキュアで毒を解除しようとしているが効果は無い
上位のエルキュアでも侵食を止めるので精一杯だ
サーシャは俯いている
自分の代わりに毒を食らった音也が苦しんでいるのに何も出来ないのだ
「…治す方法はないの?」
「これは道具が必要だな
ウェンディの大輪、セレネクリスタル
聖女の名を関する道具が
私はやつを凍らせておかなければならないから動けない
誰か行ってくれるか?」
アランとサーシャ、シャルロット全員が頷く
「ガドゥに戻りマーリンからウェンディの大輪をここから北にある街、ラークでセレネからセレネクリスタルを貰ってきてくれ
ガドゥにはサーシャとアラン、ラークにはシャルロットが向かってくれ」
「「ええ!」」
「わかったぜ」
サーシャたちが出ようとするとカトレアはサーシャたちに声をかける
「待て!これをやる!」
カトレアが投げたのは何らかの結晶だ
赤紫の光を放っている
「何これ?」
「登録した場所に転送できる
転送魔法を応用したものだ
時間が無いからな
そのクリスタルを2回軽く叩けば転送できる
それとラークには助っ人がいる
助けてもらえるだろう
私と同じくらいの力を持っているから安心しろ」
「ええ、行ってくるわ」
サーシャはカトレアに礼は言わなかったが、転送石を2回叩き、ガドゥに向かった
(待っていろ音也、必ず私たちが助ける)
カトレアは必ず音也を助けると心に誓った
第5話 合成魔獣 End
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます