第4詩 ふんころがし


みちくさ一ぽん したところ

みちくさ二ほんめ 帰れない

みちくさ三本 一番星をかぞえても

みちくさ四ほん 叱られてもね



雑木林の奥のほう

クモの巣トランポリンもゆーらゆら

モンシロチョウ舞うタンポポ踊り

風のせせらぎ 木賊(とくさ)の谷影



丘にはねむの木 恋慕のももいろ

ふーわっふわと参上 やぶ目カラス

山師も漫遊 ウサギの小路を

ぬっとでたでたマムシ草



ぽっと浮かんだひざこぞう

四つ並んで地面(つち)に咲く

ふたりのおめめは虫メガネ

足もとじっと にらんでる



こるん こるーと らんテコテン

てこらん てらーら らん



おやや こいつはなんだ?

ふんころがしだよ 知らないの?

ぜんぜん 知らないや

ファーブルの昆虫記に書いてあるのに

ぜんぜん勉強してないんだあ――

うるさいやい! どうせババっちい奴だろ

フンなんかころがしてさ ああ ばっちい!



~アッ ばっち ばっちい ババっちい!~

~アッ ばっち ばっちい ババっちい!~



(うおっほん!

ふんころがしと言うんじゃないよ

夢ころがしと呼んでくれ

フンの数だけ夢がある

ころころころがる夢がある)



どこからともなく聞こえる誰かさんの声に

ふたりはまったく気がつかない

太一と春美はしゃがみこんで

ひざこぞうを四つ並べている



風が吹き雲が流れても

森の茂みから射し込む

西日がいっそううなだれて

さびしくなっても

ふたりは口笛をふいて まあよく笑うこと

アリの行列に突っ込み さんざアリに追いかけられてる

玉ころがしに夢中になってる



こるん こるーと らんテコテン

てこらん てらーら らんタカタン



ふたたび

誰かさんが つぶやきだした

おぶさる夕陽と 鬼ごっこ

子供たちは 駈けだした



(そうとも 夢ほど ばっちいものはない

だから 誰にも さわれない

フンの数だけ夢がある

ぽっちん ぽったん 夢がある……)



こるん こるーと らんテコテン

てこらん てらーら らんタカタン



みちくさ一本 したところ

みちくさ二本め 帰れない

みちくさ三本 一番星を数えても

みちくさ四本 叱られてもね



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る