詩集 わらんべたちの夢唄

夢ノ命

第1詩 釣り爛漫(らんまん)


ぽかぽかとした陽気な昼下がりには

わんぱく坊主あたまが三つ

田んぼの向こうの小さな沼岸に見える



土曜日

学校の終わりのチャイムが鳴ると

校門から三つの影が韋駄天走りに

煙をまいて去ってゆく

何をそんなに急ぐのか

駈ける足音

さらばさらばと鳴るもんだ

まるで子馬のひづめの音楽だ

さらばさらばと遥かまで

ゆるやかな楢とブナの木立を抜けて

走るわんぱく小僧たち

田んぼの畦道てごわく行けよ

蛙のように落っこちな!

落ちるはお前さ鬼の面

はしごわたりは天下逸品

三つのいがぐりゆるぎなく

ひょひょいのひょいと畦を越え

さびれた空き家の囲いをくぐり

木の実をぷんぷん踏んづけて

草をどしどし踏みわけて

探検帽の似合うは僕らさ

木のさわめきはトランシーバー

もしもし僕らは沼をめざし

ロマンチェロ弾く釣り人さ



ぽかぽかとした陽気な昼下がりには

わんぱく坊主あたまが三つ

沼で釣り糸を垂らしている



この三人がこの沼に来る前には

行きつけの駄菓子屋に

寄ってくるらしい

そこで三人はよっちゃんイカを買うのだそうだ

それを使い

針も使わずにアメリカザリガニを釣るのが

この少年たちの名人芸



いろいろな素敵なことをあみだす

子供の世界

それは今も私の胸の奥に残る……

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