第22詩 手つなぎ鬼
こん こん こんちゅくしょうーー
と言いながら 追いかけて遊んだ
むかし流行(はや)った手つなぎ鬼
昭和の小学校の校庭で
クラスのみんなで遊んだ鬼ごっこ
最初はひとり
やがてはふたりにさんにんにで
はたまた六人十五人
鬼はどんどん増えてゆく
こん こん こんちゅくしょうーー
鬼どもみんなでわめきつつ
おどる足音ドテ ドッテン
ギョロ目 ながし目 さかつり目
生かしちゃおけない不倶戴天(ふぐたいてん)
山賊(さんぞく)でたでた野蛮王(やばんおう)
ここまでこいこい山津波(やまつなみ)
こん こん こんちゅくしょうーー
とうとう鬼は三十九人
残るはやんちゃなマサ坊だけさ
ガキ大将のタケルは右腕をつかんで力こぶ
ポパイと同じ 錨(いかり)の刺青(いれずみ)見せつけて
遠くのマサ坊を ふんすか すかんと
鼻であしらい にやついた
(あっという間につかまえちゃるけん!)
(やってみなさいホトトギス!)
おたがい山っ気が強い
風が西にそよげば
タケルのいちゃもんの風が吹く
風が東に向かえば
マサ坊のいちゃもんの風が吹く
空を仰いだり 地面をけったり
光の春の中で 子どもたちはてんでに笑いこける
いま三十九人の鬼どもは
校庭の塀沿いに並んだ
長く尽きない桜並木を背負う格好で
横一直線に手をいっぱいいっぱいにつなぎ
春の波風にあおられている
花の息吹が上からも底からも流れてくる
こころづくしに鳴くつばめ
(土食って 虫食って しぶーい)
空に涼しい一直線を
町のアーケードまで描いてゆく
おお なんたる山津波
地響きあげて 怒涛(どとう)のやまびこ
こん こん こんちゅくしょうーー
こん こん こんちゅくしょうーー
こん こん こんちゅくしょうーー
〜さくら散るらん 花もめん
蝶よ花よと ふりそそぐ
いぶし桜の吐息いろ
鬼ども囲炉裏(いろり)にあたりませ
春のせつないぬくもり提灯(ちょうちん)
灯(ひ)をとりましょか
山見にゆきましょか
下風(しもかぜ)さやいで千々にふる
さくら散るらん 花もめん
いよよふりゆく 蝶よ花よと〜
マサ坊めがけて駆け出した
ざんぶく波の おきつなみ
三十九人の鬼がゆく
ぎゃあぎゃあしく笑い
福寄せて
顔はなんたるやぶれかぶれ
しわ寄せ天真(てんしん)
たれ目爛漫(らんまん)
三十九人の鬼がくる
マサ坊シタコラ逃げるがサッサ
逃げよ逃げよと にが笑い
おいてけおいてけマサ坊さ
鬼のウエーブ おきつなみ
マサ坊シタコラ逃げるがサッサ
鬼の手スルリと どんなもんだい
こん こん こんちゅくしょうーー
あまっちょろいぞ 右手だせ!
あまっちょろいぞ 左手だせだせ ゆび伸ばせ!
いま 春の空はゆりかご
べっこう色の でんでん太鼓もゆれている
桜の花びらは
わらんべたちのお唄のように
猫も杓子もふりまする
こん こん こんちゅくしょうーー
と言いながら 追いかけて遊んだ
むかし流行(はや)った手つなぎ鬼
昭和の小学校の校庭で
クラスのみんなで遊んだ鬼ごっこ
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