第18詩 素晴らしい一日


夕暮れ 真夏の丘はきれいに燃えて

そこからトンボの群れといっしょに

麦わら帽子をかぶったくろんぼの少年が駈けてくる……

夜空に檜舞台を手渡そうとする夕焼けのひかりが

少年の双肩からゆらゆら揺れるいろいろな草花の匂いを

彩り合わせ

少年の双肩にうす紅のひかりの轍を残してゆく……



少年は家に帰ると いつものように

下駄箱の上に麦わら帽子を放り投げる

台所から漂う夕飯の匂いを惜しみなく嗅ぎながら

その流れを 昆虫みたいに辿ってゆく モンシロチョウになって……



大人になった今でも

傘立ての中には

傘と虫取り網



下駄箱の上には

麦わら帽子と 虫籠



大人になった今でも

私は食事中に昆虫の話をするのが好きだ。

外を散歩していても きれいなチョウなど飛んでいたら

一目散に家に駈け戻り 虫取り網をひっつかんで駈け出してゆくだろう

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