旗取り人狼ゲーム

これは昔、教科書で見たことだが心力アビリティとは人間の心の強さが体の一部として現れたものらしい

             〜旗取り人狼ゲーム〜

「旗取り人狼ゲーム?人狼ゲームじゃないのか?」

 人狼ゲームは子供の頃よくやったけど……旗取り人狼ゲームって一体なんだ?

 普通の人狼ゲームじゃないのか?

 すると若い男が俺の質問に答えるように喋り始める

「まぁ旗取り人狼ゲームが入学試験って疑問に思う人達もいるだろうけどそんなことは俺にはどうでもいいからルール説明しちゃうねーー」

 おいこんなやつが試験官で大丈夫なのかよ!!流石に自由すぎんだろ……

「それじゃあ人狼ゲームのルール説明、いってみよう!!」

 若い男がそう言うとメモのようなもの胸ポケットからを取り出す

「そういうところはアナログなんだ……なんか……がっかりだな」

「もっとデジタル的な感じでやるんだと思ってた」

 ――俺がぼそっと言うと若い男がこっちを睨んできた気がした

「さっそくルール説明いくぞーー!!」

 男が説明したルールの内容はこうだった


 〜ルール〜


 ・皆さんには旗取り人狼ゲームをしてもらいます


 ・制限時間は入学試験終了の3日目


 ・皆さんはそれぞれ、自己の判断で相手陣営を処刑することができる


 ・心力アビリティは自由に使うことができる


 ・旗を取るためなら何でもすることができる


「とまぁ主なルールはこんな感じだな」


 若い男はメモを無造作に投げる

「いまので聞き取れなかった出来損ないのために、後でルールしっかり配布するから読んどけよ〜〜」

 こいつさっきから小馬鹿にしてくるの何なんだ?

 それにちょっと喋り方がうざいし完全に俺等のこと舐め腐ってんだろ……

 俺が男に対する愚痴を心のなかで言っていると、男が指を立ててこう言い始めた

「最後に俺からのアドバイス、味方との連絡の共有はしっかりな〜〜」

 そう言って若い男はモニターとともに消える

 最後までちょっと馬鹿にしてやがったな?まあでも一つわかったことがあるとするなら

「これがただの試験じゃないことはわかったな!!」

 その時”ピロンっ”とメールの音がする

 画面にはみじかく”転送が開始されます”とだけ書いてあった

「転送ってことはこれから試験会場に向かうってことなのか?」

「試験会場って言ったらやっぱり人狼ゲームに適した場所か?例えば……」

 ――どっかの部屋とかか?まぁ旗取りってのがよくわからねぇけど……

 俺が色々考えていると眼の前が大きく光りだす

「まぶしっ」

 自分の目を手で塞ぎこれ以上目に刺激が入ってこないようにする

 2分くらいたったあと目に入ってくる光の色が変わる

 目への刺激が少なくなり俺はそーっと目を開ける

「は?何だこれ……本当にゲームの中かよ?」

 目の前にあったのはここがゲームとは思えないほどきれいな景色だった

 ――建物にはパイプ管が張り巡らされ工場街のような景色が広がっていた

「おいおい流石にこのグラフィックはもう」

 ――現実と変わんねぇじゃん……?

 どんな技術だよ?

「一体このゲーム作るのに何円かかってんだ……?」

 俺は頭の中でこれくらいのグラフィックのゲームを作るのに何円かかるか想像してみる

 ――ぞっとした、これ以上は金のことは何も考えたくないな……

「まあでもそんなことより俺は今何をしたらいいんだ?何をすりゃいいか全然わからん……」

 俺は他に受験生がいないか辺り確認するが人影は見当たらない

「とりあえずどこに行けばいいんだろう?」

 その声に反応するようにピロンっと音がなる

 顔の眼の前にメールで俺が行くべきであろう住所が送られてきた

「これって音声認証?すげーなこのVRどんだけ金がかかってんだ!!」

「こんなハイスペックのものを受験生全員に配るなんて!!どんだけ太っ腹なんだ新緑学園ってのは!!」

 俺は明るい路地の中で騒ぎまくる

「ってこんな場合じゃなかったさっさと書かれた住所にいかないと」

 書かれた住所に向かおうとするがある一つ事実に気づく

 ――あれっここって今どこなんだ?

 今自分がどこにいてどうやって目的の場所まで向かえばいいのかわからないことに気づいた

 ――スーッあれこれってかなり不味くないか?

「地図がなくて試験受けれませんでしたじゃ話にならないんだが……?」

 こうなったら人を見つけてなんとかするしかねぇ

 幸いここはゲームの中だ体力なんて気にする必要がない

 「それじゃ行くぞ!!」

 俺は勢いよく第一歩を踏み出す

 すると目の前の曲がり角から人影が出てくる

 「あっどうも!!」

 その声とともにいきおいよく踏み込んだ足が倒れ込む

 「いんじゃん!!人すぐいたじゃん!!俺が恥ずかしいみたいじゃん!!!!」

 さっき自分がやったことを思い出し、羞恥心に襲われる

 「あの、大丈夫ですか?」

 俺が急に倒れ込んだせいだろう、心配する声が聞こえる

 「はい……大丈夫です、耐え難い苦痛に襲われただけなんで……」

 「あ……そうですか、お大事に……」

 声が聞こえる方を見上げると立っていたのは中性的な顔をしている男だった

「そうだ聞きたいんですけど!!ここってどこかわかります?」

 俺は無理やり話を変えてさっきの羞恥心を紛らわそうとする

「えっと……ここは地図でいうと真ん中くらいですね!!」

「あの地図ってどこにあるんですかね?俺最初から持ってなくて……」

 俺がそう言うと男は目を見開いてこういってきた

「え?地図って最初に配られませんでした?」

 ――最初に配られた?スーーあれもしかして地図持ってないの俺だけ?

「あのーー良ければ一緒に行きますか?」

 男が少し憐れみを感じさせる声で言ってきた

「はい……お願いします……」

 俺はただ恥ずかしさを抑えるために下を向くしかなかった

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