第2話 サンドベリへの誘い
【ひきこもりの申し子--14歳のひきこもりたい魂を持つ少女のことである。 By.マーりん】
ネットには不思議なサイトがある。
14歳の少女だけがログインできるひきこもりサイトだ。
偶然見つけて、父親のおさがりのノートPCで入ろうとしたが入れなかった。
「あれ? なんで?」
まだ14歳になってないからかな。
「どうやってチェックしてるんだろ」
ネットのセキュリティは有って無いようなもので、個人情報は常に漏洩していると誰かが言ってたような気がする。
14歳の誕生日が過ぎて、もう一度アクセスしてみると、すんなりとログインできた。
名前と年齢を正式に登録する。
【森
画面が切り替わり、ホームページが表示された。
【マーりんの秘密の部屋へようこそ--ひきこもりの申し子たちよ】
ひきこもりたい魂を持つ少女だけが辿り着ける秘密のサイトだと書かれてある。
そしてすぐにチェックルームに誘導された。
【ひきこもりチェック!】
【一か月外出しなくても平気ですか?】はい
【自分の部屋から出たくない?】はい
【人見知りですか?】はい
【人と会うのがめんどくさい?】はい
【人と話すより本を読む方が好きですか?】はい
【一人でいるのが好き?】はい
【世の中のことに関心がある?】いいえ
【生きることに執着がある?】いいえ
【他人に興味がありますか?】いいえ
【周囲からどう見られているか気になる?】いいえ
【トモダチはいますか?】いいえ
【恋愛経験はありますか?】いいえ
:
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【異世界転生の機会があれば速攻で転生しますか?】はい
【夢のひきこもりライフを満喫したいですか?】はい
最後の質問に答えると、ノートPCがパァーッと光った。
「な、なに? まぶしい!」
目を開けると、PCの中に半透明で銀色の髪の少女が映っていた。
白いローブを着た10歳ぐらいの美少女。銀色の淡い光を纏っている。
『やっと見つけました!』
少女はPCの中からキラキラした瞳でこちらを見ていた。
『おめでとうございます。あなたは適性検査に合格して見事にサンドベリ行きの切符を手に入れました』
「え?」
『私はサンドベリの女神シルマリアです。あなたをスカウトに来ました』
「こんなちっちゃな子供が女神様?」
『これでも千年以上生きているれっきとした神様です』
女神様はふよふよとPCの中を漂っている。
『サンドベリには、あなたにピッタリのお仕事がありますが、いかがでしょう?』
「仕事って、いったいどんな?」
『リモートワークで簡単なお仕事をするだけです。たったそれだけで、夢のひきこもりライフを満喫できますよ』
「夢のひきこもりライフ!」
その言葉の持つ甘美な響きにわたしの心はグラグラと揺れ動いた。
『大事なことだからもう一度言いますね。リモートワークで簡単なお仕事をするだけで夢のひきこもりライフを満喫できるのです。あなたにとっては理想の生活と言ってもいいのでないでしょうか?』
うん。仕事は大事だよね。仕事は。考え込んでいるわたしに女神様は語りかける。
『こちらの世界でひきこもるのは至難の業でしょう。周囲から罵倒され蔑まれ、常に後ろめたさを感じて生きて行かなくてはなりません。そんなひきこもりライフは全然楽しくありません。それならば』
女神様の声にいっそう力が入る。
『日本でひきこもれないなら、異世界でひきこもればよいのです!』
即決した。女神様の言葉に感銘を受けて即決した。
「やらせていただきますっ!」
『やったぁ! スカウト成功です!』
両手をあげて喜びはしゃぐ女神様、全ては神の手のひらの上なのかも。
『サンドベリに行ったら帰ってくることはできませんが、だいじょうぶですか?』
「はい。だいじょうぶです」
『さくっと移動しましょうか。必要な物は向こうで用意しますので何もいりません。本当は体もいらないのですが、不安にさせるといけないので体ごと連れていきますね』
PC画面に魔法陣が浮かび上がり、扉のようなものが開かれた。扉はPC本体よりはるかに大きく、人が余裕で通れる大きさだ。
『この部屋とサンドベリを亜空間ゲートで繋げました。さあ、ゲートの中へ!』
女神様に導かれるまま、わたしは亜空間ゲートの中に足を踏み入れた。
亜空間ゲートが閉じられる直前、金色の髪の少女がひとり部屋の中に降り立った。
女神様も知らなかった。
その少女が入れ替わりで、サンドベリから日本にやってきてしまったという事を。
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