第8話 戦え! グランマリィ


 武器、武器はないのか?


 頭の中で考えると、視界の一部に武器リストがウィンドウ表示された。


 グランソード、グラン魔導書、グランカッター、グランウィップ、グランガントレット、グランステッキ、グランショット、グランキャノン等いろいろある。


(※武器はウィンドウを開かなくてもショートカットで呼び出せることを後に知る)


 とりあえず銃の形をしたグランショットを選択。


 シュタッ!


 手の中にグランショットが収まる。そして迫りくる虚空魔獣チュートリアンに狙いを定めて撃つ。 


 ズガーン!


 銃弾が奴の皮膚にめり込むが、進行速度は弱まらない。


 ダメか。


 なら次はグランソードだ。鞘に入った状態のグランソードが左の腰に現れた。グランソードを鞘から抜いてかざしてみる。


 うん。こっちの方がしっくりとくる。剣を持つと同時に頭の中に剣技が流れ込んできた。


 やれる!


 魔獣めがけてグランソードを振り下ろした。


 スパッと魔獣の皮膚が裂けるが一撃では致命傷には至らない。


 ならば、舞うようにして何度も切りつける。



 ズタボロになった魔獣がドスンと地面に倒れた。


『止めを刺して!』

「どうやるの?」

『コアを破壊して下さい!』

「心臓付近に見えるあれを破壊するんだね!」


 グランソードを魔獣のコアに突き刺した。


「ギャオオオオッ!」


 断末魔を上げて魔獣は沈黙した。


 しばらくすると、虚空魔獣チュートリアンはエレメントに戻って虚空に還っていった。



『集積解除をして下さい。それでグランマリィはマナに還ります』

「りょうかーい」


 ヘッドセットをはずし、椅子の背にもたれて一息ついた。シルマリア様はふわふわと漂っている。


『おつかれさまでした。簡単だったでしょう?』


 たしかにグランマリィで虚空魔獣を倒すだけだ。簡単っちゃ簡単だけど。


「なんか想像してたのと違う…」

『現実は小説よりも奇なり、ですよ』

「はいはい」


 それよりもショックだったのが、街の子供たちが「わーい、パンチラ、パンチラ」ってこっちを指さして騒いでいたことですよ。


「次からは、ジャージ着用で出撃したいと思いますが、いいですか?」


『えーっ!』シルマリア様は不満たらたらだった。


『パンチラくらい気にしなくてよいではありませんか! サービスですよ、サービス!』


「なっ! そんな恥ずかしいサービスなんてムリ!」


『パンチラは永劫不変の娯楽なのですよ!』


 いったい誰からそんなことを教わったの?


虚空魔獣コスモデビル討伐は公務です。公務には正装で臨むのが当然ではありませんか!』


「ううっ…。ミニスカスーツで戦えってことだよね」


『それに、ジャージでは売上に響きます』

「売上って?」

『お、大人の事情というものがあるのですよ!』

「大人の事情?」


『ごほん! と、とにかくミセパンを履けば大丈夫です。誰もナマパンとミセパンの区別などつきませんから!』


「えーーっ!」


 なんだかんだで押し切られてしまった。



 * * *



 初仕事を終えて、お風呂に入ってさっぱりした後は、台所にある自動調理装置のボタンをピッと押すと、あっという間に料理が出来上がった。自分で調理しなくていいのでラクチンだね。


 公務は週一くらいの頻度なので、空いた時間は自由時間。サンドベリのことを学んだり、シミュレーションでグランマリィの操作を覚えたりするけど、一日中やっているわけではないので、自由時間はけっこうある。


 ネットは普通に見れる。ネット通販で買い物をすると召喚魔法でこっちの世界にちゃんと商品が届く。小腹がすいたらポチッてお菓子をゲット。


 バリバリ、モグモグ。


 どういう仕組みになってるのこれ?


 シルマリア様に訊いてみると、

『企業秘密です』

 って言われちゃった。


 まあいいけどね。


 塔での生活は始まったばかり。ひきこもりライフも始まったばかり!


 これからしっかりと夢のひきこもりライフを満喫するぞ!

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