第5話 目覚めの日 (サンドベリ歴1394年)
1LDKのベッドの上で目を覚ました。
目に飛び込んできたのはアイヴォリーカラーの天井と、ベッドの側でニコニコ微笑んでいる半透明の女神様だった。
『おはようございます、小森ちゃん。気分はどうですか?』
「あ、うん、問題ないよ」
起き上がって、ベッド端から(すらりとした)足を降ろした。
「ここは?」
『ここはサンドベリです。この部屋は小森ちゃんの新しい部屋です』
新しい部屋! すごく新鮮な響き。
でもそれよりももっと気になったのは、このすらりと長い手足の持ち主が自分だってことだ。
いったいどんな容姿になったのやら。さっそく姿見の前に行って確かめた。
うわあっ!
かつてお目にかかったことのないほどの美少女が鏡に映っていた。
年齢は前世と同じ14歳くらい。
身長は170センチ近くある。すらりと伸びた手足、スレンダーなボディ、胸と腰は発展途上らしいふくらみをおびていて、なんだか妙に色っぽい。
腰まであるロングソバージュの髪はラベンダーブルー、瞳の色は淡いオレンジ色、薄い唇は桜色、整った卵型の顔の輪郭。
以前のブッタイとは似ても似つかぬ圧倒的な存在感。
特撮映画のような近未来的なミニスカスーツを着ていて、それがまたよく似合っているのなんのって。
「超絶美少女!」
こんな美少女に転生できるなんて想像以上だ。
『お気に召しましたか? アミュラという模造生命体の中に小森ちゃんの魂を移植しました』
「アミュラ?」
鏡に向かってあれこれポーズを取ってみる。
『アミラス・インテリジェンスによって生成されたシミュラクラの略称です』
シルマリア様が説明してくれた。
『アミュラは年も取らず、病気にもなりません。小森ちゃんの世界ではアンドロイドと呼ばれているものに近いでしょう。言わば魂の移植が可能な精巧なアンドロイドですね』
「モデルってあるの?」
『あります。千年以上前にいた少女がモデルです』
「そうなんだ」
世界にはこんな美少女が存在していたんだね。
どんな子だったんだろう。会ったこともない少女に思いをはせる。
『元の体は分解しちゃったのでもうありません』
ズンドー少女は分解されちゃったか。とくになんの感情もわかないな。
新しい身体は快適だし、夢中になってしまいそうだ。
身体のチェックの次はお部屋のチェックだ。
八畳くらいの寝室はアイヴォリーカラーで統一された清潔感あふれる部屋だった。
ベッドがありタンスがあり絨毯の上に小さなテーブルが置かれてあった。姿見もここにある。
隣のリビングには机と椅子が置いてあった。キッチンには自動調理装置や食器洗浄機など一人暮らしに必要なものが一式取り揃えてある。
リビングの机の上にはデスクトップパソコンが一台据え置かれていた。
ここが仕事場になるんだね。
再び鏡を見る。
鏡の中の美少女が微笑んだ。
ギュッと心臓を掴まれたような気がして思わず胸に手をあてると、生まれて初めて感じるふくらみがそこにあった。
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(※前世はズンドーだったのでふくらみはありませんでした)
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