ひきこもりですが異世界で楽しく暮らしています ~丈夫な体を手に入れて欲望全開のイチャイチャライフ~(旧題:銀色の髪のシルマリア)
シュンスケ
第1部 七つの塔の守護者 ~Keepers of The Seven Ivory Towers~
第1話 銀色の髪の少女 (改)
『ああ…、こんなことになるなんて』
眼下に広がるのは、見渡す限り瓦礫の山だった。
たった一匹の魔獣によって、カーネギア王国に住む人々の命も華やかな建築物も全て失われてしまった。
魔術師達は命を燃やし尽くして魔法を放ち、騎士達はその身を矛に変えて、魔獣の心臓に一撃を加えた。
彼らの奮闘で魔獣は討伐されたが、魔術師と騎士のほとんどは戦いの中で命を落とした。
王城は壊滅し、王族は全滅し、カーネギア王国は事実上消滅した。
あまりにも、あまりにも被害が甚大すぎた。
銀色の髪の少女は壊れた建物の上を浮遊して、やがて開けた場所に出た。
そこには生き残った僅かな人々が、呆然と立ち尽くしていた。
淡く銀色に輝く女神様がふわりと舞い降りると、憔悴しきった人々がヨロヨロと集まって来た。
人々は跪いて祈りをささげはじめた。
「女神様。夫が瓦礫の下敷きに、どうか…」
「子供が見つかりません。どこへ行ってしまったのでしょうか…」
「若人が犠牲になり、ワシのような老人がなぜ生き残ってしまったのか…」
中には悲痛な叫び声を上げる者もいた。
「ジルがいなくなってしまったの! 女神様助けて!」
そう言ったのは15歳くらいの少女だった。
『あなたは?』
「あたしエイミー・ローズ。ホテルの従業員よ。魔獣が襲って来て王都が破壊されて、家に帰ってみたらぺしゃんこに潰れていたの。ジルの名前を呼んでも返事がなくて。ジルって要領のいいネコだから、きっと生きてるハズなのよ!」
『窓は開けておいたのですか?』
「それは…、あの子外では生きていけないから…、いつも閉じて出かけたわ」
『残念ですが』
生存の可能性は低いと言わざるを得なかった。
「ジルはたった一人の家族なの。孤児だったあたしに出来たたった一人の家族だったの。お願い、女神様!」
女神様は力なく首を横に振った。
「だったら生き返らせて! 女神様だったらそれくらいできない?」
女神様はもう一度首を横に振った。
『死者を蘇らせることは私にもできません』
「いやだ! そんなのいやだよう。うわああああああん!」
泣き出した少女のとなりで、二十歳過ぎ貴族の青年が沈痛な面持ちでつぶやいた。
「妻も娘も失いました。生きる希望はもうありません。女神様、どうか俺をニルヴァーナに連れてって下さい」
『あなたの名前は?』
「カール・カーライルです」
『カール、希望を失うのはまだ早いのではありませんか』
「俺にはもう何も残ってない。家も愛する家族も…」
絶望に打ちひしがれた青年に女神様は言った。
『いいえ、亡くなった家族のためにもあなたは生きるのです。手を取り合って生きていける相手はきっと見つかります』
女神様は集まった人々を見渡して言い聞かせた。
『そう遠くない未来、魔獣から人々を守る者が現れるしょう。それまでは、なんとしてでも生き延びて下さい。私はあなたがたをけっして見捨てたりしません』
そして再び視線を青年に向けた。
『カール、あなたは生き残った人々とともにカーネギアの復興に従事して下さい』
「俺にできるでしょうか、俺はもう…」
『あなたならできます。カール、貴族としての務めを果たしなさい』
「…はい、女神様」
青年は頭を上げ、生き残った人々のところへ向かった。
途中で振り返ると、そこにはもう女神様はいなかった。
青年は人々を集めて、カーネギア復興に向けて動き始めた。
翌日、ニューベリー王国から支援物資が届き、魔術師達による瓦礫の撤去が行われた。
王家を失ったカーネギア王国は、ニューベリー王国に併合されることとなった。
生き残った人々の一部は王都を離れたが、貴族の青年カール・カーライルと平民の少女エイミー・ローズはともに残った。
サンドベリ歴1379年の出来事だった。
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書き直しました。
カールとエイミーは、第三部以降ちょくちょく登場するローラの両親です。
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