文明開化と、執着と、びいどろの行方

不運続きで奉公先に困っていたくるみは、豊穣家のお嬢様・美乃里(みのり)と出会い、女中として拾われた。下働きの仕事には、不思議なことに裏山へごみを捨てることも含まれていて、素直にくるみは仕事に励む。明るい性格で、前向きなくるみは、まだ使えそうな物を拾って再利用しようと持って帰ろうとするとーーある怪異に出会った。

日神様の帰りをひたむきに待つ、御崎烏の芥(あくた)は、裏山に捨てられるごみすら『供物』とみなして執着している。そこに現れたくるみの屈託のなさや素直さに惹かれ、はじめは供物として、接しているうちにかけがえのない存在として、どんどん依存していく。
一方で潔癖症な美乃里は、古きものを捨て新しい考えや文化を取り入れたいと思っており、裏山に蔓延る慣習を取り除きたいと考えている。信仰などもまた捨てるべきだという考えには、天真爛漫なくるみは今までのことを『そう言うものだ』と捉えていて、理解が及ばない。

こういった、環境変化とのギャップに置いていかれるが無自覚、というのは、のちほど歪みが大きくなった時の破綻へのプロローグだ、と考えてしまう。
そんな不穏な空気が横たわる上で、ピュアな二人が織りなす透明な執着は、びいどろのように澄んだ輝きを放っている。

これからこの物語が、どうなっていくのか。
ぜひ一緒に見守っていただきたい。おすすめです!

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