少し前、「蔵の中」と言う作者先生の作品に、レビューさせて頂きましたが、この作者先生は、「ホラー小説」のコツを、生まれつき、持っておられるように思います。また、文章が上手く、語彙も異常に豊富です。一読あれ!!!
暗い波間を揺れて往くのは父子二人の烏賊釣り舟。縁に幾つもの灯明を照らして海の下の烏賊を誘う。 暗い水平線は、この世とあの世の境界。夜陰に紛れて溶けて混ざり遭う。暗い波間を近付く舟は、何者だろうか。あの暗い波間に光るのは一体何だ?それは、幻惑する。曖昧模糊の暗い波間の内外で、瞬時に見極める、それは決して容易くはない。見る間に近づいて来る、それは。「あれは灯明台の光なんかじゃねえ。」父の声が、暗い波間に漂う。
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