宵闇の烏賊釣り舟、大海の妖に遭う。
- ★★★ Excellent!!!
暗い波間を揺れて往くのは父子二人の
烏賊釣り舟。縁に幾つもの灯明を照らして
海の下の烏賊を誘う。
暗い水平線は、この世とあの世の境界。
夜陰に紛れて溶けて混ざり遭う。
暗い波間を近付く舟は、何者だろうか。
あの暗い波間に光るのは一体何だ?
それは、幻惑する。
曖昧模糊の暗い波間の内外で、瞬時に
見極める、それは決して容易くはない。
見る間に近づいて来る、それは。
「あれは灯明台の光なんかじゃねえ。」
父の声が、暗い波間に漂う。