神懸かる先見の冥、勝ち虫陽炎に遺言す

荒れた路地裏の埃っぽい端から、一人の
女が声をかける。ささくれ立った筵を
身体に巻きつけ、白い布で貌の半ばを覆い
隠している。
 痛ましい過去が他人の目に触れぬよう、
そして自らも見てしまわないように…。

「お兄さん、あたしを買わないかい?」

話題沸騰、今をときめく『薬売りのリン』
シリーズの第四作目。

何やら些細がありそうな若い女、あき。
恐ろしい過去の出来事と、それが故に自ら
背負う業。
       同じ匂いがする。

カゲロウのリンに、自らの諚を重ねつつ
帯同を申し出る、あき。その魂胆は。

勝ち虫とも呼ばれる蜻蛉。その生き様は、
先の禍いを幸へと転じる。

只、その終は霜月の、小春日の如く。