ヴィジュアル的なイメージが怖すぎる。そんな作品でした。
「こんな経験」を持っている方、結構いるのではないでしょうか?
人混みの中を歩いている時などに、連れ合いに向かって夢中になって喋っている。でも、気が付くと隣にいたのは自分の知人や友人ではなく、全然違う別の人。
そこで気まずい想いをした、なんて経験は多くの人が持っていることでしょう。
本作で語られているのは、そうした「ちょっとありそうな日常」の延長にあることでした。
もし、「自分の隣にいる誰か」が、いつの間にか別の存在と入れ替わっていたら?
その先で、そうした「何か」と「嫌な御縁」が出来てしまっていたら?
もしかしたら、いつか自分の身にも起こるかもしれない。日常のちょっとした空隙に入り込んでくる恐怖。そんな不安なものがありありと描かれていました。
怪異の描写はとても鮮烈で、きっと心の中にある「何かの怖いもの」の記憶を掘り下げられることでしょう。昔読んで怖かった漫画の絵とか、または映画とか。そういうものと重なり合う形で、描写されている「何か」の姿が頭に浮かぶかもしれません。
ちなみに自分は「地獄先生ぬ~べ~」の絵が浮かんできました。その不気味な絵の中で本作の恐怖シーンがありありと想像され、とてつもない恐怖を味わいました。
是非、ご一読ください。
無重力状態に投げ出されるというのは、
実は想像するほど衝撃を受けた状態では
ない。そこに自分と地球との間に生じる
『万有引力』と、地球の自転による
『遠心力』との合力があって初めて
恐怖として、その身に伸し掛かる。
この作品は、身体感覚的な恐怖と、所謂
ヒトコワ的な恐怖、そして心霊的な恐怖が
闇の『三位一体』となって襲い掛かる。
(※【王様の無知はロバの道】よりの抽出。
こちらは様々なシチュエーションに於ける
怖さに焦点を当て『恐怖』の真髄に迫る
短編集である)
題名からして、まるで海外のホラー映画の
邦訳を彷彿とさせるが、この作品はまさに
感覚を根源的に揺さぶる。
g=9.8m/s2(=980Gal)この感覚的な恐怖を
是非とも視覚から味わって欲しい。
何故なら、読むだけなら あなた の身が
害される事はないのだから。