心の中のトラウマイメージを、自然と想起させられる作品です

 ヴィジュアル的なイメージが怖すぎる。そんな作品でした。
 
 「こんな経験」を持っている方、結構いるのではないでしょうか?
 人混みの中を歩いている時などに、連れ合いに向かって夢中になって喋っている。でも、気が付くと隣にいたのは自分の知人や友人ではなく、全然違う別の人。
 そこで気まずい想いをした、なんて経験は多くの人が持っていることでしょう。

 本作で語られているのは、そうした「ちょっとありそうな日常」の延長にあることでした。
 もし、「自分の隣にいる誰か」が、いつの間にか別の存在と入れ替わっていたら?

 その先で、そうした「何か」と「嫌な御縁」が出来てしまっていたら?


 もしかしたら、いつか自分の身にも起こるかもしれない。日常のちょっとした空隙に入り込んでくる恐怖。そんな不安なものがありありと描かれていました。

 怪異の描写はとても鮮烈で、きっと心の中にある「何かの怖いもの」の記憶を掘り下げられることでしょう。昔読んで怖かった漫画の絵とか、または映画とか。そういうものと重なり合う形で、描写されている「何か」の姿が頭に浮かぶかもしれません。

 ちなみに自分は「地獄先生ぬ~べ~」の絵が浮かんできました。その不気味な絵の中で本作の恐怖シーンがありありと想像され、とてつもない恐怖を味わいました。
 是非、ご一読ください。 

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