開始数行で、雰囲気に飲み込まれる良作です。ホラーはホラーでもちろん怖いのですが、圧巻なのは作中の空気感!読んでいると、自分が雨の中にいて、主人公を見ているような気持ちになります。言葉の一つ一つが主人公の感情を訴えかけてくるようで、いつしか自分を重ね合わせてしまうのは、ひとえに筆者の卓越した技量があってこそ。非常に透明感のある美しいホラー小説です。ラストの切なさは、きっと長く胸に残ることでしょう!
雨の中の、出来事。この時期よく目にする もの は、本当に怪異と言えるものなのだろうか。 只、そこに。驟雨の中に閉じ込められた 彼等 はまるで、音のない映画の如く。淡々と、かつての日々を繰り返している。今日も、雨が降る。 昨日も、その前も。そしてこれからもずっと雨だ。雨音に紛れて呟く。それも直ぐに掻き消されては用を成さない。 この気持ちの出処は、一体…。明日も明後日も多分、雨だろう。そして未来永劫、続くのだろう。雨の日は嫌いだ。 でも、何故だろう? そして、目の前には又、驟雨の。
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