七聖家が一門、グリツェラ家の娘・アイシャは、断頭台で父・ルーカスの首が飛ぶのを目の当たりにする。
身に覚えのない反逆罪。父を処刑し、母を壊し、家臣たちの首を吊したのは、アイシャの婚約者・シオンの兄であるリヒト皇太子。
最後にはアイシャ自身も惨殺されてしまうが、突如として、父が処刑される直前の断頭台まで時間が巻き戻る。
「――あとは、頼んだぞ」
父・ルーカスの最期の言葉。二度目の父の死。没落の危機にあるグリツェラ家。
我が身を奮い立たせ、もう二度と同じ結末にはしないと、アイシャは牙を研ぐ。大切な人を守るため。家を守るため。父の願いに応えるために。
しかし、アイシャは自分と共に牙を研ぐ者の存在に気がついていなかった。
それは、婚約者・シオンの存在である。
胸に秘めたアイシャへの恋慕と向き合い、成すべきことを成そうと兄・リヒト皇太子に向ける牙を研ぐ。
時が経ち、2人は再会すると、シオンは自身の本当の心をアイシャに打ち明ける。
その結果が、溺愛。
あま~い恋慕と愛情が混乱に満ちたアイシャの心を溶かしていき、2人は手を取り合ってリヒト皇太子に立ち向かう。
時にすれ違い、離ればなれになりながらも、2人は同じ道を手を取り合って進む。
牙で以て愛を知る。
これは、そんな物語。
主人公アイシャは、婚約者であるシオンから冷たくされ、謀略によって家族も名誉も亡くしてしまう。
地獄のような運命の中、遂に失意の中死んでしまった。
しかし、何の因果か、次に目を覚ませば、
運命が変わったあの日ーー
父親の処刑が行われる日に巻き戻っていた。
アイシャは、誓う。次こそは、皆を守ろうと。
そうして、彼女は前世と違う道を歩み始める。
前世よりも鋭く、強く、勇ましく。
剣を研ぎ直しながら、戦に赴く。
そんなアイシャに、なぜが婚約者であったシオンが近づいてきて……。
人生やり直しならぬ、研ぎ直し作品。
あっと驚くかっこいい展開、
情景たっぷりな文章と表現と共に、
濃いキャラクターたちが話を彩ります。
私的には、アイシャのお父さんが好きなので、
二人のやりとりも是非読んでほしいです。
愛が深いアイシャの選択した道を、
是非楽しんでほしいです!
主人公であるアイシャが死に戻る以前は、とても過酷な日々でした。読者側もアイシャを抱きしめたくなるほどに。
そして、死に戻り。これから何が起きるかわかっているアイシャは、今度こそ大切なものを守ってみせると動き出します。
アイシャにより、少しずつ変わる運命。
何より変わったのは、死に戻る以前は突き放してきたシオンがアイシャを溺愛するようになったことでした。
こんなに重たい人だったんだなと驚くくらい、ずっしりとした愛です。
とあるセリフが出てくるのですが、忘れられそうにありません。シオンといえばこのセリフ、それくらいインパクト抜群です。
そして、すべてを終えたあとの二人に約束されているのは甘々な時間。
二人の濃密な愛を、ご堪能ください。
死に戻りといえば、絶望からの始まりですよね。
今作も、やはり始まりは絶望。ヒーローからの愛なんてカケラも無いまま、地獄へと突き落とされ、そこから更に落ちのかというどん底まで突き落とされ死を迎える。
しかし、そこまでの絶望はもはや、スパイス!
死に戻り、過去の残酷な運命を切り捨て上が為、強く逞しくなっていく主人公アイシャ。
騎士たちを従え戦う姿は、魅力溢れる騎士でありながら、タイトルの刃物姫の通り鋭くも美しい。
そのままヒーロー無しでも生きていけるのではと思わせながらも、心のどこかで愛を求める姿に胸が苦しくもなる。
そこへ、ヒーローである第二皇子シオンが現れるのだ。
彼との再会、交わし合う愛の言葉、触れ合う熱量。シオンの歪な溺愛の形。もう全てが愛おしくなります。
残酷な運命ながらも立ち向かう刃物姫。そして、二人の紡ぐ愛を是非とも堪能していただきたいです。
作者様の作品の世界観が好みすぎて、他作品も読ませていただいております。
時には甘く切なく美しい恋の唄を、時には最強バディーのカッコ良い活躍を。
作者様の類稀なる筆力、語彙力、表現力によって生まれる一文一文は噛み身しめるほどに味わい深い。
そんな素晴らしい文章で綴られていく本作は、魅惑的な甘いキスシーンとヒーローの溺愛シーンから始まります。
過酷すぎる過去を塗り替えたあとに訪れるこの幸せな口づけは、読者にとって、ヒロインが背負う痛々しいまでの運命の道標。
そして待ってましたの溺愛ターン到来。
魅力的なキャラ全員のファンになってしまいそうですが、イチオシのヒーローがどんなふうにヒロインを愛し抜くのか。
溺愛のなかで幸せを掴むヒロインを拝める日が楽しみです!