ギメイでも愛してくれますか?
りんご飴
introductory chapter
第1話 転校生
「おはよう」
「おはよ」
家を出ると制服姿の少女が待っていた。
「忘れ物はない?」
「ないって。いつまでも子供扱いするなよ」
「先週お弁当を忘れたのは誰だったっけ?」
「……たまたまだ。ほら、行くぞ」
「もー、ちょっと弄ったからって拗ねないでよ」
「拗ねてねぇよ」
俺達は歩き出す。彼女は俺の幼馴染だ。家は3分ほどしか離れていない。
「ね、宿題はやった?」
「英語の宿題か?」
「そうそう。結構難しかったよね?」
「だな。時間がかかったから少し寝るのが遅くなったよ。ふぁ……」
俺は大きく欠伸をする。
「授業中に寝たらダメだよ」
「努力する」
俺達の通う
◇
「じゃあね。昼ご飯一緒に食べようね」
「ああ」
学園に到着した俺はクラスメイトと挨拶を交わしながら席に着く。
「おはよ」
「おう、おはよ」
「なんか2人ってカップルっていうより夫婦みたいだな」
前の席の
「そうか?」
「だって全然初々しさがないじゃん」
「付き合い始めて3年半くらい経ってる俺達にそれを求められてもな……」
苦笑いしかできなかった。
「そもそも俺達は付き合い始める前に長い幼馴染期間があったっていうのがあるからな。関係は確かに幼馴染から恋人に変わったけど、それだけって感じ」
「エッチする関係になったってこと?」
「……語弊がある言い方は止めろ」
「えー、そういうことじゃないのか?」
「違うだろ。お前は恋人を何だと思ってるんだよ」
「男子高校生なんてそんなもんだろ。というか2人ともガード硬いよな」
「ガード?」
「ああ。2人とも踏み込んだことは教えてくれないって意味。もっとさどこでデートしたとかどういう会話をしたとか話してもいいのに」
「……それは自慢してるみたいでウザくないか?」
「…………確かに……。お前にそんなことを毎日聞かされれば、発狂しそうだ」
「お前も彼女作ればいいのに」
「うわっ……それはウザい。お前、この学園の彼女がいない男子を敵に回したぞ」
高見は俺を睨む。
「というかお前がズル過ぎんだよ。あんな可愛い幼馴染がいるとか反則だろ。オマケに巨乳で優しくて一途とか今時そんなラノベ主人公いねーぞ。物語にならないし」
「……そんなこと言われてもな……」
「あーあ……俺にも
俺は教室の前方で話している莉愛を見る。幼馴染の俺の目から見ても莉愛は可愛い。性格も良いし、勉強もできる。今まであんな幼馴染がいて羨ましいと言われ続けてきた。実際にそんな幼馴染で恋人がいる俺は幸せ者なのだろう。
「あっ……」
俺の視線に気づいた莉愛が手を振る。俺も手を振り返す。
「リア充爆発しろ」
「……そうだな。いつか爆発するかもな」
もしかしたら嫌味聞こえるかもしれない。しかし、言ってしまった。
「おーおー爆発しとけ」
高見には軽口に聞こえたらしい。
「そういえば、転校生って今日からだっけ?」
「ん?ああ……。先生が言ってたな」
急に話題が変わる。俺も高見に言われて思い出す。
「珍しいよな。しかも、10月の中旬って」
転校生が来ることも珍しいし、年度の始まりではなく2学期の中途半端な時期だ。普通に珍しいだろう。俺も単純に興味があった。
「だよな。転校生って初めてだからワクワクするなー」
「俺もかなり久しぶりだ」
転校生が来るということがあるせいかいつもよりも教室内は騒がしい気がした。
「可愛い女子だといいな」
「えっ、女子なのか?」
先生は転校生が来るとしか言っていた記憶しかなかったので俺は驚く。
「こういうのは可愛い転校生が来るって相場が決まってるんだよ」
「……願望かよ……」
呆れながらもラブコメ漫画であれば確かに季節外れの転校生ヒロインは確かに定番だなと感じた。
「転校生は空いている席に座るのが定番だな」
「そうだな」
俺と高見の視線が俺の右の席に注がれる。この席は昨日はなかった席だ。おそらく生徒が帰った後に先生が用意したのだろう。
「なんでお前ばっかり……」
「はぁ……?お前だって席、近いじゃん」
「隣の席と近くの席じゃ、全然違うんだよっ!!」
「そ、そうか……?」
高見の熱量に俺は押されてしまう。
「隣の席だと1つの教科書を一緒に見るのは定番だし、意図しないけど手がふれちゃったりするかもしれないだろ?」
「ラブコメ漫画の見過ぎだ」
「確かにそこまでのことは起きないかもしれない。だが、そういう雰囲気味わってみたいじゃないか」
「なるほどね……」
「だが、1つだけ良いことがある」
「良いこと?」
「それはお前が彼女持ちってことだ」
高見は嬉しそうだった。
「彼女持ちと可愛い転校生ではラブコメは起こらないんだ」
「……ああ……。そうだな……」
あまりにも良いドヤ顔で言うので俺は頷いておくことにした。
(……というか、転校生が可愛い転校生前提で話してるけど、もし転校生がガタイがいい男子だったどういう反応するんだろ?)
その時の反応が見てみたいと思った。実際に可愛い転校生よりもガタイがいい転校生の方が確率的には高い気がする。
「朝のホームルーム始めるぞー」
担任の
(これはあれか……。転校生入って来てーってやつか……)
ラブコメ漫画で見た流れが見れそうで俺も少しワクワクしてくる。
「じゃあ、連絡事項からだな」
そう言いながら土井先生は紙を配る。
「先生ー、転校生は?」
前の方から質問が飛ぶ。俺を含め皆が気になっていることだろう。
「あー……それがな……」
土井先生はバツが悪そうな顔をしながら頭をかく。何でもハッキリ言うタイプの土井先生が言い淀んでいるのは珍しい姿だった。
「わからん」
予想外の言葉に教室がざわつく。
「それって欠席とかじゃないんですか?」
「いや、時間になっても学園に来なくてな……。連絡しても繋がらないし……」
土井先生も困惑していた。
(そりゃ、そんな顔するよな……)
土井先生の困惑の表情の理由は最もだった。
(初日から遅刻とかヤバい奴だな……)
俺の印象も当然悪い。転校初日が第一印象を決めるということは転校生もわかっているはずだ。そんな中で遅刻をしてくるなんてよほど度胸があるのかとんでもないトラブルが起こったかぐらいしか俺には考えられなかった。
「気になるのはわかるが連絡がつかないんじゃどうしようもない。とにかく転校生のことはおいておこう。それよりプリントを回してくれー」
土井先生は未だざわつく生徒を収めようとする。
「転校生ヤバいな」
高見も俺と同意見だった。
「だな。初日に連絡も無しで遅刻はヤバさしか感じられんな……」
その時だった。
「気になるのはわかる。正直、俺もめちゃくちゃ気になってる。でも、お前たちが気にしないといけないのは来週から始まる中間テストだ」
土井先生はいつもより大きい声で話す。
「ということで今日からテスト週間だ。よって部活は……」
「遅刻しましたー!!」
言葉を遮るように教室前方のドアが勢いよく開き、一人の少女が入ってくる。
「………………あれ……?」
当然クラス全員の視線はその少女に注がれる。彼女以外の教室にいる全員がポカンとしていた。
「か、
土井先生は頭を抱える。
「あ、はい……。葛城……
これが俺と転校生である葛城が初めて出会った瞬間であった。もちろんこの時点では葛城は俺のことを認識していないだろう。
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