第13話 一つの迷いとアサ

「私は⋯⋯人を殺せるのか⋯⋯?」


 ふと疑問に思ってしまった私の心は迷っていた。ただリアラがあいつらに拉致られたのはほぼ確実、私だって自分を好きって言ってくれる子のことを見捨てたりはしたくない⋯⋯。でも、いざ殺しが必要になると私は人を殺せないかもしれない⋯⋯。


 そんなことを考えていたら、私の足は盗賊を追って洞窟内へと進んでいく。


「水汲んできたぞー」

「おう、今浄化する」


 洞窟内はかなり複雑で、人が掘った跡やガラスの破片、ましてや骨など⋯⋯何度も吐き気がした。

 口を抑えながらどんどん奥へ進んでいくと、洞窟内ではありえないほど広い空間にたどり着いた。


「おい、水持ってきたぞ」


「ありがとな! それはそうと外に人間は居なかったか? ここがバレたら冒険者ギルドに依頼を出されちまう」


「ああ⋯⋯居なかったぞ」


 水に浄化を施した男がそう言いながらミーシャが居る方へ振り返る──。


「足跡もないから大丈夫だ」


 あっぶな⋯⋯バレかけた⋯⋯。運良く広い空間に入って直ぐの所に大きな箱が二つ並びに置いてあって助かった⋯⋯。


 ミーシャは息を整え、時間はあるのでしっかりと頭をフル活用して考える。


 箱の後ろに隠れたはいいもののこれからどうする? 今一瞬見えた限り五十人はいる⋯⋯一旦戻ってナバスと冒険者ギルドに報告した方が──。


「それはそうとこれからどうするんだ?」

「ガランさんによると手紙を領主に送ったらしい、ここからが本番だ」


 盗み聞きをしつつ策を考えていたら、どこからともなく奇声が聞こえ、洞窟内に響き渡った。


「本当に人の声⋯⋯? ──痛っ」


 足に何か擦れた⋯⋯ってこれ──。



「お前リーグレント男爵令嬢だろ? 俺はずっとこの時を待ってたんだ⋯⋯」

「お父様に抗議できるからですか?」


 二人が喋りだしたおかげでリアラの場所がやっと分かった。でも縛られたリアラの前に立って深くため息をついた盗賊の男は何か様子がおかしい。右手は剣を握っているが、左手は必死に頭を抑えている。


「そんなわけねぇだろ⋯⋯お前らをやっと皆殺しにできるからだよ!!」


 洞窟内に大声が響いた瞬間、リアラの足元に刺さった小型ナイフは緑の粉末が付着している。


「危ないじゃない! 私の綺麗な脚に傷がついたらどうするんです!?」


「知るかよ、もう手紙は領主に送ってるらしいし? いずれお前は殺されるか一生牢獄だろうよ。貴族で冒険者とか聞いた事ねぇ」


 確信した、この洞窟は大麻の洞窟だ。

 そして私の足に擦り傷をつけたこの植物はアサ。昔はこの植物から繊維をとっていたらしいけど、今は大麻として悪用されることが多かったはず。


「だったら今俺が殺してもいいよなぁ?」


 男は右手に持っている剣を大きく振り上げ、リアラの頭を狙って振り下ろそうとしたその時──。


「違法薬物の使用は牢獄行きですよ、お兄さん」

「ミーシャちゃん!」


 リアラを守りに剣を杖で弾いたけど⋯⋯周りには五十人ほどの盗賊たち、私の魔力量でこの数相手はちょっと厳しいかも⋯⋯。


「誰だこいつ!」

「アジトを知られたからには生きて帰すな!」


 その声と共に盗賊たちは剣を抜いてミーシャに殺意を向ける。


 まず落ち着くため深呼吸だ⋯⋯よし。とりあえず目の前の薬物男と距離をとるため遠くへ吹っ飛ばす。


「『風鈴弾ブリーズラプチャー』!」

「うわっ! 何すんだてめぇ!」


 丸く凝縮した風が一気に弾けだし、薬物男は宙を舞いながら予想通り遠くまで吹き飛んだ。その間にリアラの手錠を外そうとしたけど鍵が必要⋯⋯結局は盗賊を全員倒して安全に鍵を探すしかないのか。


「ミーシャちゃん」

「ん? なにリアラ」


「座らせてくれるのはありがたいんですけど⋯⋯」


 そう言うとリアラはミーシャのスカートに視線を向けて、危機が迫っているにも関わらずニヤけた。


「そのしゃがみ方だと下着見え──って隠すことないじゃないですか」

「隠すよ普通!」


 はあ、緊張感無くなるわぁ⋯⋯。


「⋯⋯ミーシャちゃんは白色」

「何勝手にバラしてくれちゃってんの!?」

「綺麗な髪と同じ色ですね⋯⋯眼福でした」


 なんて幸せそうな顔なんだ⋯⋯こんな状況なのに──。


 辺りを見渡すと盗賊ばかり。逃げ道は塞がれ絶体絶命、薬物で狂ってるやつも大勢いる。


 そんな中、一人の少女が杖を構え戦闘態勢に入る。


「頑張ってー! 私を助けてー!」

「呑気すぎ」


 呑気なリアラは放置しといても大丈夫でしょ、ていうか私に守られてるんだからリアラも喜んでるんじゃない?


「最後の挨拶は終わったか?」

「早く来なさい」


 落ち着いて集中。大丈夫⋯⋯殺さないでいい。気絶させてその隙に鍵を見つける、この作戦でいい。


「お前ら相手は一人だ! やれ!!」

「『火炎弾フレイムボム』!」


 杖から勢いよく放たれた火の玉は襲いかかってくる盗賊たちの足元に着弾した。爆発音とともに煙が外へと流れていき、前線にいた十人程度が丸焦げになり倒れる。


「いやー! すてきー!」

「ねえリアラ⋯⋯これ死んでない?」

「大丈夫ですよ! 回復魔法が使える魔法使いもいるみたいですし」


 あれ⋯⋯これ意外といける? リアラの言っていることが本当なら多少高火力で一掃しても大丈夫そうだし──。


「お前らどけ! 俺がやる」


 圧倒的存在感⋯⋯恐らくこいつリーダーだ。


「女だからって手加減はしないぞ、俺らの計画に支障を来すものは誰であろうと死んでもらう」


 佩剣はいけんを抜き、空を切り裂きながら構える姿はまさに一流の剣士。


「俺の名はガランだ、お前の名は?」

「私の名前はミーシャ、旅人よ」


 ──その瞬間、激しい攻防が始まった。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あとがきです。


 初めましての方は初めまして。

 どうも、まどうふです。


 早速ですが、戦闘が次回に持ち越しになってしまって申し訳ありません。その分次回面白く仕上げますのでブックマークだけでもよろしくお願いします!


 もちろん♡や★、コメントなども大歓迎です!


 以上、まどうふでした!

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