第12話・なんでお前が俺の部屋の中にいるんだよ!?
《4月4日・朝8時》
社畜時代では味わえなかった惰眠。
今日もウトウトとしながら目を開けると、ベッドの隣で見覚えのない青髪ボブカットの女性が眠っていた。
「……へ?」
きっと気のせいだよな。
そう思いながら自分の頬を軽く叩いた後、二度寝をするために掛け布団に入ろうとするが。
そのタイミングで青髪ボブカットの女性が目を覚ました。
「ッ!? なぜ貴様が!」
「その声。お前、アビス・グレイズを挑んできた不気味な女かよ」
「私にはミカエラという名前持ちで決して不気味な女じゃないぞ」
そんなの知るか。
昨日の不気味な女だと判明した青髪ボブカットの女性・ミカエラさん。
彼女は黒色のジャージ姿でコチラを睨んできたので、思わずため息を吐く。
「いやだって、意味不明な事が起きているんだぞ」
「私にとってはお前の方が意味不明だけどな」
「なんでだよ……」
「昨日のアビス・グレイズを思い出してみろ」
うーん。
アニメみたいなグレイズで、楽しく勝負しただけな気がするが。
なんでコイツは俺の事をまるで変人を見るような目をしているんだ?
「そんな問題があったか?」
「……魂をかけたグレイズなのにお前の雰囲気は特に変わらなかったよな」
「それが?」
「普通なら怯えて動けなくなるか、泣き叫ぶのにお前はなぜ楽しめるんだ?」
ソウル・ファンタジアが大好きだから。
その一言に尽きるが、その説明だとまた変人扱いされそうなので別の回答をする。
「だって負けるつもりがないからな」
「もしや自惚れか?」
「自惚れかもだけど、最強を名乗るなら負ける事を考えないだろ」
「ッ!?」
二次元とかでよく言葉として出てくる最強。
前世の俺はブラック企業の窓際社員で弱キャラに入るが、ソウル・ファンタジアのファンサとしてはトップレベル。
つまり最強に近い存在で、楽しむ事もだけど勝つための
「貴様は本当に変なやつだな」
「そりゃどうも。ただ俺から見ればお前の方が変に見えるけどな」
「人間のから見ればそうかもしれない」
あー、やっぱりソユコトか。
カードゲームのアニメや漫画的なノリがこの世界でも反映されるのかよ……。
「口ぶりからしてお前は人間じゃないと言ってないか?」
「もしかして気づいてなかったのか?」
「半々なだけだ」
二次元ならともかく、
内心で若干戸惑っていると、不気味な女ことミカエラが苦笑いを浮かべながら姿勢を正した。
「改めて名乗るが私は星の騎士・ミカエラ。スターライト帝国と呼ばれる邪教に操られていたソウルユニットだ」
「……はい?」
「な、なんだその反応は?」
「ソウルユニットってなんだ?」
「え?」
ドユコト?
内容的には二次元でよく見るカードの精霊的なのはわかるんだけど、ソウルユニットの聞き覚えが無くて固まってしまった。
「貴様は私の事をソウルユニットと知らずにアビス・グレイズを行ったのか!?」
「そうだけど? てか俺の名前は青風斗真で貴様呼びはいい加減やめて欲しいが」
「お、おおう、すまない」
なんがミカエラさんがビビってない?
彼女に少し怯えられている感じがあるので、会話のやり方に悩みながら返答していく。
「話を戻すけどソウルユニットの説明をよろしく」
「いきなりだが、まあいい。トウマはソウル・ファンタジアの事をどう思っている?」
「楽しいカードゲームとしか思ってないけど?」
「そうか。なら私を見てどう感じた?」
どう感じたって言われてもな。
ミカエラさんはツノが生えているがそれ以外は美人大学生みたいな姿。
前世のコミケに行けば人気になれそうな見た目なので……。
「美人なお姉さんとしか感じない」
「ッ!? わ、私は人間じゃないのにか!」
「俺的には会話が出来て迷惑をかけてこなければぶっちゃけどうでもいい」
「本気で言っているの?」
「逆に嘘をつく理由はあるのか?」
前世の上司みたいに話が通じずに怒鳴ってくるタイプは嫌いだが、ミカエラさんはそのタイプではなさそう。
なら特に邪険に扱う理由がないので、特に気にせずに話していると彼女が口を大きく開けた。
「トウマ、君が私と契約すれば強力な力が手に入ると知っても変わらないのか?」
「俺は生活が出来るのとソウル・ファンタジアを楽しめれば充分だ」
「……トウマ」
確かに強い力があれば気に入らないやつを叩き潰せる。
ただそれをやっても自分の気持ちがスッキリするだけでマイナス面が大きい。
なら問題あるやつへの対処は関わらないが一番楽。
「それに力で押しつぶすよりもカード勝負で勝つ方が個人的に好きだしな」
「はっ、こんな変わり者がいるとはな」
「別にいいだろ。それで話を戻すが、ソウルユニットってなんだ?」
「その説明を忘れていたな」
「おいおい……」
一番大事な事だろ。
俺もポンコツなのは自覚しているが、コイツもかなりでは?
内心で呆れていると、ミカエラさんはコホンと咳払いをした後に仕切り直した。
「ソウルユニットは霊界と呼ばれる異世界からトウマ達がいる現世に来た異星人みたいな感じだ」
「ほうほう」
「私達ソウルユニットは人と離れた見た目をしていて、人と契約する事で霊界で使っていた特殊な能力が使えるようになるんだよ」
「何そのファンタジー」
「私に言われても」
逆行転生した世界がファンタジーだった件。
俺はカードゲームアニメみたいな世界に来たはずなのに、なんで超能力の話になってるんだ?
「なんかキナ臭くなってきたな」
「まあでも、トウマは私が物理的に守るから安心してくれ!」
「それはお願い……え? もしかしてここに住み着く気か?」
「そうだが?」
さも当たり前のように頷くなよ。
突っ込みどころが多すぎるので今度こそ目が点になっていると、床に正座したミカエラさんが真顔のまま頭を下げてきた。
「不束者ですがどうぞよろしく頼む」
「お断りします」
「そうか! って、なんで断るんだ!」
「ちょっ、両肩を掴むな!」
さてはコイツ、残念系の美女だな!
俺の両肩を掴んでガクガクと揺らしてくるミカエラさん。
その必死さに根負けするように俺は彼女と契約を結ぶ羽目になるのだった。
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