第13話・なんでこうなるんだ?(投稿を忘れていてすみません)

 ミカエラさんが強引に契約を結んできた後。

 彼女は嬉しそうな笑みを浮かべており、俺が作った朝ごはんをバクバクと食べていた。


「ご飯のおかわりを頼むぞトウマ」

「もうないぞ」

「ならパンを所望する」

「パンはご飯を食べる前に食い切っただろ」

「あ……」


 何その絶望したような表情は!

 不気味な女性の時との雰囲気が違いすぎるだろ。

 ご飯とパンがなくなり涙目になっているミカエラさんに突っ込みながら、俺はリビングのテレビをつける。


『今朝のニュースです。黒鉄市・桜川町の住宅街で20代くらいの男性が道で倒れているとの通報があり警察と救急車が駆けつけたところ』

「……」

「その顔、何か覚えがあるだろ」

「わ、私がしたわけじゃないぞ!」


 昨日は俺の魂を狙って襲撃してきたのに、その言い訳はキツくないか?

 そう思いながらジト目を負けていると、ミカエラさんは観念したのか両手を上げた。


「おそらくだが私の元仲間が襲ったんだろう」

? なにその今は違うみたいな言い方は」

「今の私はトウマの従者兼護衛だろ」

「おおう……」


 ナントカ邪教を裏切るのが早すぎない?

 そんな簡単にスパッと切れるなら、俺じゃなくて別の奴に行けば良さそうなのだが。

 テレビのニュースを見ながら席に座っていると、ミカエラさんが不安そうな視線を向けてきた。


「やはり君を襲撃した私が怖いのか?」

「その辺はぶっちゃけどうでもいい」

「ええ!? じゃあなんで困っているんだ?」

「明日から高校の入学式で忙しくなるからだよ」

「な、なるほど……。ん?」


 不思議そうな顔をするなよ。

 一応高校で習う知識は思い出せるが、俺自身の学力があまり高くない。

 そうなると赤点を取らないために最低限の勉強しないといけなくて、一人暮らしも含めて手間が増える。


「新生活で高校も始まるから忙しくなるんだよ」

「それは理解できるが、他にも訳がありそうだが?」

「そりゃな。まあでも、カード強盗とかへ対抗できると考えれば悪くないのか……」

「さっきから手のひら返しが多くない?」

「それが俺なので」


 手のひら返しや風見鶏は俺のデフォなんだよ。

 これで会社内では頭の悪いサイコパスと言われたが、特に気にするほどでもない。

 なので俺は苦笑いを浮かべながら、食べ終わった食器を片付けていくのだった。

 


 ーー



 今日はカレンは用事があるらしい。

 そのため俺はマンションの自室で適当にのんびりしようとしたが。

 やる気満々なミカエラさんに腕を引っ張られた。


「これからどうするんだ?」

「私のデッキを作成したいから良さそうなカードショップは知っているか?」

「うん? 昨日使っていたギルド・ウォーターのデッキはどうしたんだ?」

「あのデッキは私が負けた後に消えた」

「ええ……」


 まるでオカルトだな。

 黒鉄市のビル街をゆっくり歩いているが、不安そうなミカエラさんに腕を引っ張られる。

 その姿はまるで怯える子犬のような感じで、このままだとマズイと思い握られて右手で彼女の頭に手を奥く。


「少しジッとしてろ」

「と、トウマ? なんで私の頭を撫でるんだ?」

「ミカエラさんが不安そうにしていたから」

「あ、ありがとう」


 少しベタベタしすぎたかな?

 会社とかならセクハラ案件で訴えられそうな感じはするが、仕返しにはちょうどいい。

 嬉しそうに頬を染めるミカエラさんを尻目に、少し気になった事を口にする。


「そういえばミカエラさんってナントカ邪教の洗脳(?)から抜け出したんだよな」

「そうだが何か気になる事がある……あ」


 やっぱりこうなるよな。

 さっきまでビル街の道路だったが、いつの間にか見覚えのある黒い天井のドーム。

 しかも黒い煙も漂っており、向こう側には針金のように細い男性とローブを被った相手がいた。


「標的を発見。これより処理に入ります」

「相手はアビス・グレイズから生き残った者なので油断しないでくださいね」

「コリアは僕を誰だと思ってるんだ?」

「はいはい、水壁のバルザですよね」

「そうそう! 二つ名もちなのを忘れないでよ」


 なんかめんどそうな2人組が現れたな。

 まあでも、向こうの名前がわかったので一応覚えておくか。

 怪しい二人組へ視線を向けていると、俺の手を握っているミカエラさんが敵意丸出しで叫んだ。


「マスターとのデートを邪魔するな!」

「そっちかよ! てか、いつの間にかデートになっているんだよ!?」

「それは申し訳ない。ただ上からの命令で離反したユニットを回収してくれと言われてね」

「ドユコト……」


 悪役ムーブをしていたくせに、このやり取りで既視感があるのは気のせいか?

 もしかして相手も社畜なのかと同情していると、ローブを被った相手が声を張り上げた。


「御託はいいからあの二人をやっつけて魂を回収するよ」

「はいはい。ソチラには悪いけどアビス・グレイスをしてもらうよ」

「それはいいが魂をかけるのはやめない?」

「僕もそうしたいところだけど上からの命令なんでね」


 社畜だー!?

 数日前までは俺もブラック企業勤めだったからしんどさを思い出す。

 ただ隣にいるミカエラさんが不安そうにコチラを見つめてきたので、違う意味で苦しい気持ちを切り替える。


「私のせいでマスターが……」

「いや、別に気にしなくてもいい」

「私の前では強がらくてもいいぞ」

「うーん? そんなつもりはないんだけどな」


 デッキこそスタートデッキ+αだが、タクティクスとかは元の世界でトップレベル。

 テレビに写っていたこの世界の最強と呼ばれる、金髪イケメンを倒して世界一位に返り咲きたい目的もある。


「ラブコメをするのはいいけどコチラの仕事をしたいんだけど?」

「あ、すみません。とりあえずアビス・グレイスをするんだよな」

「……なんで楽しそうなんだ? まあいい、さっさと始めるよ」

「はい」


 ファンサゾーンが現れたので、そのまま台の上に立ち。

 半透明のプレートの上にデッキを乗せると自動でシャッフル。

 対戦の準備が整ったので、互いに向き合いながらスタートの合図。


「「グレイス!!」」


 シアン、ライフ10VSバルザ、ライフ10


 デッキからカードを6枚ドロー。

 先行はこちらからみたいなので、俺は手札のカードを見ながら展開していくのだった。


 

 

 


 

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