第7話・カレン視点、煽ってくる相手がムカつくし、ここで負けたら合わせる顔がない

〈カレン視点〉


 アイツ、トウマに出会った時に抱いた気持ちは一言にすれば変なやつ。

 その事を思い出しながらアタシはFフォンをポケットから取り出す。

 

「まさか、自分で世界一なんて言うなんてね」


 昨日出会った変人・トウマ。

 ギルド・ウィンド使いで、安定したグレイズを行う腕利きのファンサ。

 ランク1なのにアタシが勝てなかったゴリラ顔を圧倒した奴で、掴みどころのない変人。


「同い年のはずなのに年上と話している気分になるわ」


 落ち着いている部分もあるけど、グレイズをしている時は年相応にはしゃいでいる。

 チグハグな部分を感じつつ、アタシは対戦相手の方に視線を向ける。


「準備は出来たかな?」

「もちろんよ!」

「ならいくよ」


 対戦相手の大学生っぽい青年。

 大会1回戦で負けたくないし、アタシの目的である妹の治療費を稼ぐ。

 これをやる為に覚悟を決めながらFフォンを構える。


「「エレキチェンジ、ソウルGO!!」」


 対戦場所の電子フィールドに行くための言葉。

 アタシは息を整えつつ、私服からグレイス用のバトルスーツに着替えていく。

 

『龍宮可憐様によるリンク確認。プレイヤーネーム・ドランディアとしてファンサスタイルへ換装します』

 

 いつもの姿からバトルスーツ……無課金なので初期装備の赤いジャージスタイルに変化。


「そういえばトウマは新人なのに課金装備だったわね」


 しかも高級グレードの軍服スタイル。

 おそらくだけどお金持ちの家系なんだろうな……。

 今の自分との差を見てやらせない気持ちになっていると、変身が終わり電子フィールドのプレイヤーゾーンに到着した。


『プレイヤーネーム・ドランディア、ライフ10VSプレイヤーネーム・ガイゼル04、ライフ10』


 女性チックな機械音が流れた後。

 アタシと対戦相手の青年、ガイゼル04は互いに向き合う。

 うん、なんか気持ち悪い視線が向けられている気がするけどスルー安定ね。


〈ターン1〉

 

「先行は僕からだよ! スタートタイム、そしてメインタイム! まずはイグアナン2体をサモンするよ」

「ギルド・ランド使い!」

「そう! 僕の防御陣を君は突破できるかな?」


 イグアナン

 攻撃1、防御2、火力1


 ギルド・ランドは防御型のデッキタイプ。

 アタシが使う攻撃タイプのギルド・ファイアとの相性は悪くないけど、場合によって変わるからマチマチ。

 ただ、相手の場に出たトカゲを少し大きくしたような茶色い皮膚を持つユニットは少し厄介そうね。


「追加でテッコツーをサモンした後にマインカードをセットしてエンドタイム!」

「静かな立ち上がりね」

「そりゃ焦っても仕方ないからね」


 テッコツー

 攻撃2、防御2、火力1


 向こうの姿は丸メガネに黄色いジャージスタイル。

 おそらくだけどカードにお金をかけているタイプで見た目はそこまで気にしてなさそう。

 てか、いちいちメガネをクイッと上げるのがムカつくわね。


「さあ、次は君の番だよ」

「そう……」


 相手の言葉に反応するように鉄骨をもつモグラ方のユニット・テッコツーが煽るように指を傾けてくる。

 その姿にイラつきながらアタシはデッキの上に手を開く。


〈ターン2〉


「いくわよ! ドロータイム、スタートタイム、メインタイム! まずはボンバーガールをサモンするわ!」

「そのユニットだけで勝負するつもりかな?」

「んなわけないでしょ! アタシは追加で血の沼手を2体をサモン!」


 ボンバーガール

 攻撃2、防御1、火力1

 血の沼手

 攻撃2、防御1、火力1


 アタシがフィールドに呼び出したのはチリチリの髪に目にクマがあるローブを着た少女と、右手の形をしたドロドロした皮膚をもつ気持ち悪いユニット。

 

「どっちもスタートデッキに入っているカードだね」

「何か文句はあるの?」

「さあね? それよりもアタックしてくるのかな?」

「当たり前よ!」


 微妙に煽られている感じがしてほんとムカつくわね。

 アタシはイラつきのボルテージが上がりながら、一息吸い込んで言葉を発する。

 ただこの時、相手のメガネが光った事にアタシは気づかなかった。


「バトルタイム! まずは血の沼手で攻撃!」

「そいつは同名ユニットがいる場合、攻撃が1上がるんだよね」

「そうよ!」


 血の沼手

 攻撃2→3


 血の沼手の攻撃は3で相手の場には防御2のユニットが3体。

 ここでブロックされてもこちらの方が数値は上だから推し勝てる。


「きみ、ユニットの数値で買っているから油断してない?」

「それが?」

「いや……こんな甘いグレイスをするとは思わなかったから驚いているだけだよ」

「なんですって!」


 フィールドから降りでアイツをぶん殴りたい!!

 そう思いながら睨みつけていると、向こうはニヤッと笑いながらフィールドに置かれていたカードを裏返した。


「マインカード・地面爆弾をコール! コイツの効果でアタックしてきた血の沼手を破壊するよ」

「えっ!?」


 雰囲気的に何かあると思っていたけど……。

 マインカードのせいでアタックを仕掛けていた血の沼手が、仕掛けられていた爆竹を踏んで粉々に砕け散っていった。

 その姿に唖然としていると、相手がいやらしい笑みを浮かべる。


「ははっ、マインカードも気にせずにアタックをしてくるなんてね」

「ぐっ……」

「それともランク2の雑魚だから予想できなかったのかな?」 


 こ、コイツ!

 余裕があるからって好き勝手あおってきて!

 七三分けの髪を手でフサァと掻き分けながら、気持ち悪い笑みを浮かべている相手……。

 拳でぶちのめしたくなるが、今はグレイズ中。


「ならもう一体の血の沼手でアタック!」

「はぁ、僕はテッコツーでガード!」

「マインカードもないし相打ちね!」

「それはどうかな?」

「ッ!?」


 血の沼手、攻撃2

 VS

 テッコツー、防御3


 な、なんでテッコツーの防御が3になっているの!?

 血の沼手がテッコツーの鉄骨に殴り倒され、そのまま勢いよく地面に叩きつけられた。


「テッコツーはガード時に防御の数値をひとつあげられるんだよ」

「そ、そんな……」


 数値が負けていればユニットは破壊される。

 粉々に消えていった血の沼手を見ながら、アタシは悔しさで拳を握りしめる。


「エンドタイム」

「あらら、もしかしてやる気を無くしたかな?」

「あ、あんた!」


 さっきからイライラと悔しさで気持ちがよくわからなくなる。

 アタシがヒートアップしている中、相手は余裕そうにデッキからカードを引いていくのだった。


〈ターン2のエンドタイム・プレイヤー、ドランディア〉

・プレイヤーネーム、ドランディア

・ライフ10、手札4

・ギルド、ファイア

〈フィールド〉

・ボンバーガール〈ライト状態〉

 ー

・プレイヤーネーム、ガイゼル04

・ライフ10、手札2

・ギルド、ランド

〈フィールド〉

・イグアナンA〈ライト状態〉

・イグアナンB〈ライト状態〉

・テッコツー〈ライト状態〉







 

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