第10話・なんか不気味な変人が出てきたんだけど?
シアンVS不気味な女性。
互いにデッキから6枚のカードを初期手札としてドロー。
うん、いつもの電子フィールドとは違い女性っぽい機械音が流れない。
しかも周りには黒色の煙が漂っているし、なんかホラースポットみたいな雰囲気みたいだな。
「お前にはアビス・グレイズの恐ろしさを骨の髄まで教え込んでやる」
「はいはい。そんな事よりも先行はお前だろ」
「こ、こいつ! その余裕そうなツラを歪ませてやる!」
うーん、塩対応をやりすぎたか?
紫色のローブを被っている女性はイラついているのか、口調が少し荒くなっている。
というか、どうも温度差が激しく感じるのは気のせいか?
「スタートタイム、メインタイム! まずは手札のギルド・ウォーターのカード1枚を捨ててグリモカード、ウォーター・バレットをコール! このカードの効果で相手に1ダメージを与える!」
「いきなり
「くらえ!」
「ッ!?」
シアン、ライフ10←9
む、無駄に痛い。
なんというか、バレーボールで本気のアタックを受けた感じ。
大きな水の球体が高速で飛んできて、その痛みにのたうち回りそうになるが……。
「はっ、この程度かよ」
「なんだと!? お前は頭がおかしいドMなのか?」
「んなわけあるか! 俺はただソウル・ファンタジアを楽しんでいるだけだ」
「後者はともかく頭がおかしいじゃないか!」
は?
好きなカードゲームを楽しんでいるだけなのに問題あるのかよ。
別によそ様に迷惑をかけているわけないし、特に問題ないはずだが?
「お前な! 好きな物を楽しんで何が悪い」
「いや、あの……」
「文句を言うのは勝手だが、コッチにも譲れないところがあるくらいはわかるよな」
「もしかして私、地雷を踏んだ?」
「さあな? それよりもターンを進めろよ」
こちとらブラック企業で精神をすり減らしてきた者ぞ。
この程度の衝撃なんて、後輩が書類データを飛ばした時よりもマシだ。
そう思いながらクールダウンする為に息を吐いていると、向こうは戸惑いながら動き始めた。
「なんか釈然としないがグレイズに戻って。私はアクア・フェアリーを2体とドロンマニアをサモン!」
アクア・フェアリー
攻撃2、防御1、火力1
ー
ドロンマニア
攻撃1、防御2、火力1
相手のフィールドに現れたのは30センチ程でチョウみたいな翼が生えている青髪の少女、アクア・フェアリー。
もう一体が泥遊びしたような小さな小人、ドロンマニアが砂場用のスコップを持ちながらコチラを睨みつけてきた。
「ドロンマニアのソウル発動。デッキから同名カード1枚を手札に加える」
「後続を用意したか」
「そりゃユニットを雑に揃えるだけでも強いからな」
その程度の認識かよ。
確かに雑魚でも数を揃えば壁にはなるが、今の発言的にコチラを舐めている感じがするな。
「それでユニットは揃ったがどうするんだ?」
「特にやる事がないからエンドタイムに入る!」
「追撃は特になしか」
《1ターン目、エンドタイム。プレイヤー、不気味な女性》
・プレイヤーネーム、シアン
・ライフ9、手札6枚
〈フィールド〉
・なし
ー
・プレイヤーネーム、不気味な女性
・ライフ10、手札1枚
〈フィールド〉
・アクア・フェアリーA〈ライト状態〉
・アクア・フェアリーB〈ライト状態〉
・ドロン・マニア〈ライト状態〉
前世のギルド・ウォーター使いならマインカードをセットしてカウンターを用意したり、こちらを妨害するカードを用意しているが。
さてコイツはどのような切り返しをするんだろうな。
「ふん! 口だけの雑魚っぽいお前がどう動くか楽しみだ」
「……いまなんて言った?」
「え?」
確かにこの世界ではランク1の新人だが、元世界一位だぞ。
それを雑魚扱いするなんて、コイツはどれだけ強いんだろうな?
「本当に雑魚が試してみろよ」
「っ!? さっきからコイツの威圧感はなんだ?」
知るかよ。
そう思いながらデッキトップに手を置き、勢いよくカードを引く。
「いくぞ……。ドロータイム、スタートタイム、そしてメインタイム!! まずはライフを1払って風魔法の書物をコール!」
「自分でライフを減らしただと!?」
「ライフなんて1でもあればいいんだよ!」
シアン、ライフ9←8
体にピリッと電流が走るが、必要経費なので我慢しながらカードを引く。
すると我がエースの姿が見えたので、思わず頬を緩めながら相手に視線を戻す。
「こ、こいつ! なんでダメージを喰らっているのに笑っているんだ?」
「そんなのお前をボコすタクティクスが完成したからだ」
「なんだと!?」
本来のデッキなら簡単に後攻ワンキルが出来る範囲だが、今持っているのはスタートデッキを主軸にした内容。
なので少し厳しいが、我がエースがきてくれたおかげで流れが変わった。
「俺は風切りゴブリンをサモンしてソウルを発動して手札を1枚捨てて2枚ドロー」
「ぐっ、だが雑魚をを読んだところで何も変わらない!」
「それはどうかな?」
風切りゴブリン
攻撃2、防御1、火力1
悪いがこっちの手札はまだ7枚ある。
しかも勝つために必要なカードは大体揃っているから、思わず鼻を鳴らしながら展開していく。
「続いて手札のグリモカード、風吹く丘をコール! コイツのソウルでドロンマニアをダウン状態にする!」
「私のブロッカーが!?」
これで相手のブロッカーはアクア・フェアリーが残り2体。
これならワンキルの範囲内だから、容赦なく次の手を打つ。
「これでお前の取れる手段は減ったな」
「減らず口を! このターンでダメージを受けても次のターンで巻き返してやる」
「
「ッ!?」
悪いがワンキルまでの手段は揃っているんだよ。
向こうの妨害がなければこちらの勝ちなのだが、カウンターを視野に入れながら俺はグレイズを進めていくのだった。
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