第5話・ヒロイン?なにそれ美味しいの?
大型ショッピングモール内にあったカードショップから足早に出た後。
大都市・
「結構広いんだな」
綺麗な場所だな。
自然公園の中央には大きな噴水があり、春先なので小さな子供が入ったりしてないが勢いよく水が流れている。
「ここならのんびり「きゃあぁ!?」ゴブッ!?」
い、いったい何が起きた!?
適当に歩いていると、いきなり誰かが飛んできたのだが!
体の上に何か重い物があるので目を開けると、そこには見覚えのない金髪ロングで顔が整っている少女がのしかかっていた。
「ううっ……」
「ははっ! オレ様の勝ちだぜ!」
「さすがゴリラさんでヤンスね!」
「ゴリラじゃなくてゴルラだって何回言えばいいんだ!」
「ぎゃん!?」
どっちでも対して変わらないだろ!
こちとらいきなり知らない少女が飛んできて押しつぶされているのに。
てか、コイツらのせいで被害に巻き込まれたのか?
「今日は災難だな……」
なんでこんなに絡まれるんだ?
まずは体の上にのしかかっている少女をどかしてイラッとしながら立ち上がる。
そのタイミングでゴリラっぽい大柄な青年と小柄で出っ歯の少年が、ニヤニヤしながらコチラに近づいてきた。
「これでアイツはアッシらの下僕でヤンスね」
「おう! これで色んな事ができるぜ」
「ヤンス!」
訂正、ニヤニヤじゃなくて気持ち悪いニタニタだったな。
てか、いい加減スルーはやめて欲しいんだが?
「なあ、お前らは何者なんだ?」
「ん? なんだお前は?」
「通りかかりの少年。てか、そんな事よりも状況がわからないんだけど?」
「別に説明することじゃないだろ」
それはそう。
ただ引っ込みがつかないので、ここはカードゲーム世界らしく取引をするか。
背負っているカバンからカードケースを取り出して、二人組の男子にあるカードを見せる。
「ソウル・ファンタジアで俺に勝ったらこのカードをやる」
「Uレアのスピニング・ドラゴン!?」
「カードショップで十万円はするカードでヤンスよ!」
前世の20倍以上じゃねーか!?
てか、さっきのヒヤッハー男がこのカードを欲しがるのもわかるな。
目が輝いている二人組の男子は互いに顔を合わせた後。
「逆にお前が勝ったら何がほしいんだ?」
「そんなの情報に決まっているだろ」
「? よくわからねーが、それで問題ないぜ!」
やる気みたいだな。
ゴリラ顔の青年が自信満々にFフォンを構えたので、俺はニヤッと笑う。
「楽しませてもらうぞ」
コチラもカバンからFフォンを取り出し、向かい合うように公園の中央に立つ。
「「エレキチェンジ、ソウルGO!!」」
カードショップの時と同じく、ソウルアーマーを装着。
そのまま電脳世界のフィールドに立って、ゴリラ顔の青年も向き合うのだった。
《ダイジェスト》
「
「ぐあぁ!?」
ゴリラ顔、ライフ5−5=0
勝者、シアン。
特に問題なく勝利できてよかった。
そう思いながら元の世界に戻ると、もう片方の小柄な少年がガクガクと震えていた。
「ひいいぃ!? ごめんなさいでヤンス!」
「あ、ちょ! 情報は!?」
火事場の馬鹿力なのか小柄な少年がゴリラ顔の青年を背負って走り去っていく。
その姿を見て目が点になっていると、ふと誰かに肩を叩かれた。
「ちょっといいかしら?」
「どちら様?」
「さっきアナタを下敷きにした美少女よ!」
「自分で美少女って言うんだな……」
確かに目がパッチリで化粧は薄めで見た目が整っている金髪ロングの少女。
見た目で判断するならギャルヤンキーに見えるのだが。
「それよりもさっきの
「普通にソウル・ファンタジアの対戦をしただけだけど?」
「じゃなくて! あの筋肉ゴリラを一方的にボコれる腕前とかEXレアとか突っ込みところが多いわ!」
「突っ込みどころならこっちもあるぞ」
君は何者なのか、なんで筋肉ゴリラの下僕になりかけてたのか。
その辺が気になるけど、今は……。
「情報を聞いてもいいか?」
「アタシもアナタの事を知りたいから大丈夫よ」
「助かる」
カードゲーム主義なのはわかるが、この世界の内情とかもあまりわからない。
情報のすり合わせは必要なので、自販機で飲み物を買った後に近くのベンチに座る。
「まずはアナタは何者なの?」
「最強の
「いきなり冗談をぶっ込まないでよ!」
「冗談じゃなくて本当なんだけどな……」
あくまで前世の話でこの世界の話ではないのはわかるが。
モヤモヤとする気持ちになりつつ、仕切り直していく。
「聞き方が悪かったわね。アナタの名前は?」
「名前を聞くなら君の自己紹介が先じゃないか?」
「それは……アタシは
「ほうほう」
カートショップで出会ったヒャッハー男のランクは4だったから、少し低いくらいか。
そう考えるとランク3がこの世界の平均的な強さくらいかな。
「デッキタイプはギルド・ファイアでガンガン押していくのがスタイルよ」
「なるほどな」
「それで……」
「待って待って、今度は俺の番」
「あ、ごめん」
とりあえず強引に止めた。
少し申し訳ないがコチラの自己紹介が出来ないから、なんとか流れを引っ張る。
「おほん。改めて、俺の名前は
「え? アタシも花形高校の新入生よ」
「マジかよ」
すごい偶然だな。
ただコチラがメインの話じゃないから、高校の話は一旦置いといて言葉を続けるが……。
なんか、龍宮さんの視線が一気に変わったのは気のせいか?
「俺の自己紹介はこんな感じだ」
「ずいぶんとアッサリしているわね」
「グダグダと話すよりもいいだろ」
「確かに……」
彼女は少し物足りなさがあるみたいだが。
気持ちを落ち着ける為に自販機で購入した麦茶を飲みながら改めて彼女の方に視線を向ける。
カードゲームオタクの俺には龍宮さんは眩しく見えるな。
「話を変えて、俺が聞きたいのはこの街でソウル・ファンタジアがどこまで影響しているかだな」
「そんなのほぼ全てに決まっているでしょ」
「ほうほう。それってさっき
「ええ……」
カードゲーム世界でよくある「デュエ◯で決めるぞ」がまかり通る世界。
雰囲気的に理解していたが、確証が取れたのは大きいな。
今の発言を聞いて湧き上がる高揚感を感じていると、龍宮さんは悔しそうに唇を噛み締めていた。
「あのゴリラ、いきなり辻グレイズを仕掛けてきた癖に買った途端にアタシを下僕にすると言って……」
「それで龍宮さんが負けたタイミングで俺とぶつかったんだな」
「そう。あ、アタシの事はカレンでいいわよ」
「お、おおう。なら俺もトウマでいいぞ」
「わかったわ」
家族以外で女性の名前を呼ぶ事になるとは……。
違う意味のドキドキがあるが、麦茶を飲んで二度目のクールダウン。
落ち着いたタイミングで、カレンに向けてある質問をする。
「それでカレンはゴリラ顔にリベンジしたい気持ちはあるのか?」
「ッ、もちろん! 今度こそあのゴリラ顔をボコボコにしてやるわ!」
「ほうほう。ならさ、俺の元にこい」
「へ?」
なんで頬を染めているんだ?
よくわからないが勢いが大事だと思い、俺は頬を釣り上げながら言葉を続けていく。
「1人で最強を奪還するよりも練習とかで対戦できる相手が欲しいんだよ」
「それってアタシにソウル・ファンタジアの指導をしてくれるの?」
「もちろん! てか、最初からそのつもりだぞ」
こちらとら元最強のファンサだぞ。
少なくともその辺の相手に負けないレベルには育てられる自信がある。
無駄にある自身を伝えていると、カレンがポロポロと涙を流し始めた。
「あ、アタシでいいの?」
「当たり前だろ! てか、カレンだからいいんだよ」
「ッ!? あ、ありかどう!」
「うおっ!?」
なんで抱きつかれた!
お節介なだけなのにここまで嬉しくしてくれるのはありがたいな。
そう思いながら久しぶりに感じる温かみに、俺は満足するように嬉しそうにしているカレンを見るのだった。
〈カードのレア度とパックの提供確率〉
・ーーレア度ーーー、提供確率
・C(コモン)ーー、1パックに5枚
・R(レア)ーーー、1箱に27〜29枚
・S(エスレア)ー、1箱に1枚〜2枚
・U(ウルトラ)ー、1カートンに1枚。
・L(レジェンド)ー、12カートンに1枚。
・EX(エクストラ)、?(固有カード)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます