治安の悪い牛丼屋で過去の清算やもうすぐそこのわくわくについて展開する話。街、食事、仕事、お金、婚姻、恋愛、暮らし。いいですね。文学を語る人の多くが妙な勘違いしていて未来永劫不変の真理を捉えようとしたり、役目を終えた過去の偉大な作品の模倣に走ったりしがちですよね。とはいえそういう作品も十分すごいですが実は私たちには必要ありません。今どうするのか。この話は私たちのすごく身近にいてくれます。血の通った文章です。暖かかったです。だからこそ人肌に触れるようによく伝わってきます。必要です。私は文学はこうあるべきだと感じました。おすすめです。
誰かの欲望を見たくない、誰かに欲望を見せたくない、と人は言う。聖者は街角で徳を説き、英雄は己の献身を誇る。決して騙されてはならない、そいつらはインチキにまみれた生きる屍なのだから。誰かを必要とし、受け入れ、愛したいと思う衝動、飢えと渇きを満たし満たされたいという欲望。それらが何ら恥じることのないものだという事を、この小説は牛丼とメンソールであなたに証明してくれる。「自分に正直に」あなただってこの言葉、かつては美しいものとして頻繁に使っていたはずだろう?
主人公の心情描写が素晴らしく、彼女が見ている光景が頭に浮かびやすいです。作者の言語センスが高いことも相まって、素敵な作品だと感じました。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(132文字)
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