第6話 お城でお話
――衛兵に連れられ、お城へと入ったディスミーとシャインは、アシーロ国の王の前へと通された。
黒い髪と立派な髭を持った王は、二人に
「任せてください! アタシとディスミーがいれば、もうすぐにでも解決しちゃいますよ!」
えっへんとでも言わんばかりに胸を張って答えたシャイン。
アシーロ国の王もそんな彼女の態度を見て、ホッとしているようだった。
その隣では「王さまも信じちゃうんだな……」と、呆れているディスミーの姿があった。
きっと
「この子にはたしかに浄化魔法が使えますけど、まずは詳しいことを聞かせてもらえないでしょうか」
宿屋で聞いた話では、アシーロ国は元々極寒の地。
それは氷竜――アイスドラゴンがこの地に住んでおり、凍えるような寒さの国だったからだと聞いた。
しかしアシーロ国の王族であるアシーロ家の力によって穏やかな気候になっていたのだが、どうやら数年ぶりにアイスドラゴンが目覚めたことで、再び極寒へと変わってしまった。
そこで現アシーロ国の王族がアイスドラゴンの対処に動くと思われるのだが、現在の王は婿入りのようで他国の人間であり、代々受け継がれている王家の力を持つ女王は病で亡くなっている。
一応、二人の間には息子――王子がいるので、国の民たちは皆、王子に期待しているようだが、どうも上手く力が使えないらしい。
――と、ここまではディスミーたちが知っている内容だ。
正直いってディスミーからすれば、シャインを危険な目に遭わせたくないのが本音だ。
それでもかなりやる気になっている彼女と、この国の現状を知った今では、ディスミーも全力で手伝おうと考えている。
「長い話になってしまうが、いいだろうか?」
「ええ、お願いします」
「では、話させてもらおう」
それからアシーロ国の王は、国の現状を話し始めた。
その内容は、ディスミーが宿屋で聞いたものと同じだったが、知らないこともあった。
その知らないこととは、アイスドラゴンというのは、別に敵意があって国を極寒の地にしているわけではないということだった。
「アイスドラゴンと我が妻であった女王とは友人だったのだ。だがアイスドラゴンが放つ
「なるほど。それがアシーロ国の王家に代々伝わる力。では、アイスドラゴンの説得は可能ではあるということですよね? それをしない理由は?」
「我々も説得を試みた。だが、女王が亡くなったことを知ったアイスドラゴンは激しく悲しみ、我を忘れて国中を飛び回っている状態になってしまったのだ」
どうやら話を聞くに――。
眠りから覚めたアイスドラゴンは、友人だった女王の死を知り、そのあまりの悲しさから悪意に飲まれてしまったようだ。
そうなると浄化されていないモンスターと同じく、人を襲うようになってしまうことは、この世界では常識である。
アシーロ国の王もアイスドラゴンとは面識があるらしく、これまでに何度も説得に向かったが、悪意に飲まれてしまったドラゴンが正気を取り戻すことはなかった。
できることといえば、アイスドラゴンが町に近づかないように兵を配置し、民を守ることくらいだ。
幸い今のところアイスドラゴンに襲われた者はいないが、日に日に寒さを増していくアシーロ国は、このままでは国中すべてが凍りついてしまうと、王は言う。
話を聞いたディスミーは、アシーロ国の王のことを甘いと思った。
一国の王ならば、たとえ亡き妻の友人だといってもすぐにでもアイスドラゴンを討伐するべきだ。
しかし話を聞いているうちに知ったが、どうも民たちもアイスドラゴンと女王の関係を知っているようで、誰もアイスドラゴンが倒されることを望んでいないようだった。
女王は余程、愛されていたのだろう。
国を極寒の地へと変えてしまうモンスターにそんな感情を抱くのだから、ディスミーがそう思うのも当然だった。
「それじゃあ、アイスドラゴンに寒くするのをやめてもらえばいいんだね」
「おい、シャイン。そんな簡単な話じゃないだろう」
「簡単だよ。やることは王さまの話でわかったもん。つまりは悲しんでるアイスドラゴンをアタシの魔法で癒してあげればいいんでしょ?」
「それが簡単じゃないという話なんだけど……。相変わらず自信満々だなぁ」
あっけらかんとしたシャインと肩を落としたディスミー。
そんな二人を見たアシーロ国の王は、パッと表情を明るくして身を乗り出してくる。
「では、お願いできるか!? そなたらは我が国を救ってくれるのだな?」
「はい! 最初に言ったようにアタシたちに任せてくださいよ!」
「おお! 感謝するぞ、小さな勇者よ!」
王はひざまずいて、シャインの手を取って喜んでいた。
今にも涙を流しそうに瞳を潤ませた王の姿に、傍にいた衛兵たちもその身を震わせている。
ディスミーだけは複雑そうな表情になっていたが、それでも王や兵士らの人の良さに、思わず笑みがこぼれていた。
「あんな奴が魔法使いだって……。どうせウソだろ」
だが、その様子を部屋の外から見ていた少年は、歯を食いしばってシャインのことを
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