そのブーツが導くのは

寺田屋事件を巡る物語。
おりょう、竜馬、三吉慎蔵、と視点を繋ぎながら、最後に中村半次郎たどり着き、洒脱なふるまいで脅威を退ける。
それぞれの人物が、時代の中で己の持てる力を発揮して道を切り開き、連帯し、今この瞬間と未来を見据えて先を急ぎます。

一見痛快ではありますが、反面、この物語のテーマと主人公を三吉に焦点をあててみてみると、彼だけは過去からの柵と不安と葛藤の中にあっての、未来への渇望をしていることがわかります。

きっと、時代の渦中にいる誰しもが抱えていた、一寸先が闇である、という強い危機感。
そんな中にあって、一体どれほどの勇気で人々は未来を目指し、行動したのだろうか、と考えてみても、現代人の私には途方もない想像です。

三吉の焦燥感を、希望の方向へと変えた、靴、そしてステップ。
数多の人々の中にも、それと同じような、ささやかな物や人、存在や現象があって、それがそれぞれを力づけ、慰め、背中を押したのではないのだろうか。

そんな歴史の「実感」を閃かせる物語。
ぜひご一読下さい。

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