病牀六尺の真価

正岡子規という人を考える時、私達が少なからず冷静でいられなくなるのは、その赤裸々な病の実態と、それを凌駕する精神力にあてられるためではないでしょうか。

もし、本作の漱石と子規の二人を俯瞰の距離で見たのならば、子規の実在はあまりにも弱々しかったことでしょう。
しかし、漱石の目を通し子規は、揺るぎない力強さの権化として映し出されています。

丹念にエピソードを散りばめられ、子規のアンバランスさの奥にある主体的な実存が炙り出されますが、その核に「漱石」があるというのが、とても似つかわしく、思わず微笑みを誘われました。

ぜひおすすめしたい作品です。