複雑に絡み合う人間模様が秀逸なヒューマンミステリー

  • ★★★ Excellent!!!

12年前、悲惨な事故を起こして死んだ光彦の遺族に頼まれ、その事故と事故の直前に起こった強盗事件の再調査を始める徹。調査を進める中、光彦をよく知る人たちは口を揃えて「更生した」という。
その更生したはずの光彦が、なぜ事故を起こしたのか? 本当に強盗事件の犯人は光彦なのか? 全ての真相は?
それらを考えながら、夢中になって読みました。

読んでいる途中「光彦が強盗事件を起こしのは、きっとオカルト的な原因があるに違いない!」と思ったのは、これが『横溝正史ミステリ&ホラー大賞』の最終候補だからです。だけど、その予想は完全に外れました。オカルト要素は一切ありません。そんな簡単な話ではありませんでした。もっと複雑でたくさんの要因が絡み合っていて『誰が悪い』とも『何が原因だ』とも簡単に断じることができません。
全ての要因が明らかになった読後は、苦しくなるほどの切なさと悲しさが残りました。

誰かを責めずにいられない『他責』
法律で責任はないと言わせても、自分を許すことのできない『自責』
警察が負っている『職責』
世間やマスコミからの『叱責』
タイトルの『責』に込められたいろんな意味がも含めて、秀一な作品だと思いました。

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