本作は物語そのものが面白いです。ただ、楽しみの過半を占めるのは、語り口です。同じ筋書きでも人によって語りの巧拙があります。作家を名乗るならば語りの巧さを求められます。本作は正に語りの巧さによってカクヨムの作品群の中で屹立しています。美しい。そして妖しい。「怪しい」より「妖しい」です。読み進めるうちに心が引き込まれていきます。そう、とある……。失敬、口が過ぎました。安心してください。本作は語り口の巧さに心を囚われても現実世界に帰れる「小説」です。一時の夢を好きなだけ味わえます。空想世界にて戯れるのは一興です。
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走れば走るほど、逃げれば逃げるほど取り囲み、辿り着く先はとある葬式。あれは一体誰の葬式なのか、いつの葬儀なのか。5分程で読める短編ですが、その5分は貴方の四方を不穏・不浄・不吉・不幸が囲む恐怖が待っているはずです。
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鯨幕のかかる屋敷を目にした主人公が、最後に目にするのは……田舎のありふれた風景の中に、いきなり 不穏 が交じる。鯨幕の張り巡らされた屋敷で何がおこなわれているのか。一体誰の葬式なのか。主人公の不安が不穏を呼び寄せるかのように。改行とスペースが、さらに不穏さを際立たせていた。
この話を見る方にお伺いしたいことがございます。トイレは済ませましたか?就寝前ではございませんか?どちらも後回しにした僕は恐ろしい思いをしました。まさしく怪作、本格的なホラーをお楽しみ下さい。
現実世界とあの世との、あいまいな境界がほころぶ場所。 不吉な、白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒、『鯨幕』の張ってある家。 うっかり迷い込んで来てしまうなんて、残念です。 白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒…… でも、せっかくだから、思い切り恐怖していってくださいねぇ。 白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒……
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私たちが暮らす日常には、『不気味』というものが潜んでいることを改めて認識させられる作品。幽霊を目撃した人や奇妙な体験をした方たちは、必ず口をそろえて「まるでラジオの周波数が合うような感覚でふと、日常から非日常へと引きずりこまれる」と語るが、それはあながち嘘ではないのかもしれない。もしこの作品を外出先で読んだら、私はおそらく一人で帰宅するのが嫌になっただろう。また描写が非常に美しく、思い描きたくないのにそのシーンが頭の中に次々と鮮明に浮かび上がる。まるで読者である自分自身も鯨幕を見てしまったかのように。
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