第12話(2)山王、結構テクい

「きょ、巨体でなおかつ、重そうな鎧をつけているのに、なんていうスピードだよ……」




 オリビアが信じられないといった様子で呟く。




「さて……」


「!」




 山王がオリビアに視線を向ける。オリビアは負傷していない左腕で拳銃を構える。




「……利き腕ではないようだが?」


「どちらの腕でも問題なく扱えるようにはしているさ」


「ふっ、そうか……」


「そうだよ……」


「……スナイパーなのに距離を取らなくても良かったのか?」


「距離を取ったって、どうせすぐに詰めてくるだろう?」


「ふふっ、まあ、それもそうだな……」




 山王がうんうんと頷く。オリビアは黙ったまま拳銃を向ける。




「……」


「どうした? 撃たないのか? わしは今、完全に隙だらけだぞ」




 山王がわざとらしく両手を広げる。オリビアが舌打ち交じりで答える。




「ちっ……あのスピードを見せつけられた後じゃあ、嫌でも慎重になるってものさ……」


「冷静だな……だが、時には若者らしい思い切りの良さも大事だぞ?」


「生憎だが、若者っていう年齢でもないのでね……」


「おっと、そいつはとんだ失礼を……」


「………」


「…………」




 山王とオリビアが向かい合って黙り込む。一瞬間を置いてから、オリビアが動く。




「それっ!」


「! 拳銃を投げただと⁉」


「本命はこっちだ!」




 オリビアがローブの中からライフル銃を取り出して、素早く構える。




「なにっ⁉」


「それっ!」


「ふっ!」


「なっ⁉」




 オリビアがライフル銃を放って、山王に向かって投げた拳銃の引き金部分を弾き、拳銃を至近距離で発砲させたが、山王が手甲を自らの顔面の前に差しだしてそれを防ぐ。




「……なかなか見事な曲芸だな」


「ど、どうして反応出来た?」


「鎧兜で覆っているわしの弱点は眉間……ここを狙ってくることは読めていた」


「ちっ……」


「さて、銃使いは銃で始末してやろうか……」




 山王が落ちていた拳銃を拾ってオリビアに銃口を向ける。ウララが飛びかかる。




「そうはさせないでござる! 『分身の術』!」


「なにっ⁉」




 何体かに分身したウララが山王を取り囲む。ウララが声を上げる。




「もらったでござる!」


「くのいちめ、まだ動けたか……しかし、術の精度が極端に落ちているな……そこだ!」


「‼」




 山王はウララの本体を見抜いて、拳銃で撃つ。ウララが地面に落下する。




「どうだ、わしの射撃技術は?」


「わずかに手がブレている……満点は上げられない。ぎりぎり合格点か」


「抜かせ……」


「ぐはっ!」




 銃で撃たれたオリビアが倒れる。山王が技術を見せつけた。

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