ちょっとエッチな奴隷契約。


 契約は、ちょっとエッチであった。

 

 

 少女に刻まれた魔術刻印に魔力を流す――言ってしまえばただそれだけなのだが。

 それは子宮のあたりにあり(エッチである)、左胸の心臓のあたりにあり(おっぱいである)。


 最後、左耳の裏側に触れると少女は「……ふ、ンっ」という実に官能的な吐息を出した。我が輩も思わずちょっと出てしまった。


「これで良いのか?」


 平静を装ってそう訊くと、奴隷商は大きく頷いた。


「ええ、これで彼女はあなたに対して反逆の意志を抱けなくなりました。

 さらに、好感度、依存度も大きく上昇しています。

 あなたに尽くすのが彼女の喜び、あなたの傍に居られることが、彼女の幸せなのです」


 エロゲの紹介ページかな?

 しかし、そうであるならばエロいこともし放題である。


 これで帰れるかと思ったが、奴隷商は思わぬことを言った。


「ご自宅用ですかな? ラッピングはいかがいたしましょう」


 ここはデパ地下かぇ?


 ……後から知ったことによると、これは奴隷の衣服を買うかどうかという問いだったらしい。

 衣類を買うという扱いだと税が余分にかかるため、ラッピングという名目にするのだとか。

 

 しかしそんな奴隷購入しぐさなぞ知らぬ。

 我が輩は否と答え、奴隷を引き連れて店を出たのである。


「しかし……」


 日の元で改めて見るに、少女はやはり素晴らしいの一言に尽きた。

 

 髪は毛先などが荒れているが、癖のない綺麗な黒髪である。やはりおなごの髪はすべからくこうでなければならない、という思いを我が輩は強くする。

 前髪などは変に伸びているが、整えればその眼光を射貫くほどの目元の美しさは弥増すばかりであろう。

 

 加えて、唇である。

 充分に水分が採れない環境だったせいかやや乾いているものの、やはりその小さな桜色は欠かせぬ宝石のように在り、少女らしい瑞々しさと官能の境目が器官として存在しているかのようであった。

 

 なによりも、身体。

 ここまで神は均整の取れたものを作れたのか、と己の肉体を鑑みて驚愕するほどに、それは完全な配置をしていた。強いて好みを言うのであれば痩せすぎであるが、そこに関しては食わせれば良い。

 

 

 だが、その格好は実にみすぼらしい。

 そこはさすがに貴族向けの「商品」ではあるからか、不衛生ではなさそうだがとにかくボロい。

 服というよりもはや布である。


「まずは服屋だな」


「…………?」


 わずかに首を傾げる。


 言葉が通じないのか。

 ううむ、それだと面倒な……。

 家に着いたら早速……と思っていたが、そこらへんのことはジェスチャーでなんとかなるだろうか。


 そう考え込みながら歩くと、ぎゅっと腕に柔らかいものが巻き付くような感覚があった。

 実にそれは、少女そのものである。

 

「…………」


 その端正な顔に不安げな表情を浮かべているが、こちらはそれどころではない。

 

 あたたかい。

 やわらかい。

 細い肢体からは想像だにしない胸の弾力があたり、我が輩はほぼイキかけた。いや、ちょっとイク。


「……置いてなどいかん」


 いいのか? 頭を撫でても。キモくないのか?

 逡巡は一瞬だった。

 撫でた。


「……ん……」


 少女はくすぐったそうに目を細め、擦りつけるように我が輩の手のひらを頭で押した。


 ここに断言しよう。


 我が輩は生きてきてこれほどの「ん」を聞いたのは初めてである。

 脳天がしびれ、絶頂の先にある真実の幸福をまさに感じた。

 真なる快感は性感などではない。

 これに比べたら山岡はんの射精感はカスや。

 

 だが、それはそれとしてエッチはしたい。

 すごくしたいのである。


 頭を撫でただけでこれほどのものなのだ。

 もしも、その身体を好きにできたら……。


「は……はやく服買って帰ろうなッ」


 我が輩は屹立しすぎた股間に痛みを覚えながらも、鼻息荒く服屋に入店したのだった。

 

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