アルティメット・ガール。
シャンムルーの港町まで、領土の発着場から飛空船で一時間。
治安というものはなぜか海寄りに行くと悪化の一途を辿るので正直あまり行きたくはなかったのだが、奴隷市場があるのはここだけなのである。
降り立つと、さっそく磯の臭いと饐えた嫌な臭いがしてくる。
浮浪者じみた者も多い。
さっさと性奴隷買って帰りたい。
「ゾルガダ・ボンダンドール様でございますね」
「うむ」
こうして我が名を他人の口から聞くたびに思うが、濁点が多すぎる。
ちなみに弟の名はガンダムバリアンである。巨大戦闘ロボットかなにかか?
「こちらへ」
狭くて暗い。
我が輩のわがままボディでは通るのに苦労するが、アングラ感があってカッコいいので良しとす。
「ゾルガダ・ボンダンドール様といえば、私どもも名君と伺っております」
「そうか」
名君と伺って欲しくない。こっちは性奴隷を買うつもりで来ているのだ。なんならすでにちょっと勃起してるし。
「ご要望などあれば……」
「女。それも、若い女だ」
「ほほう、若い女、ですか……」
ニヤリ、と奴隷商がなにかを察したように口元を歪める。
あまりそういう「察した感」を出して欲しくないが、ここで格好つけていても仕方がない。
「なるほど、若い方が覚えも早い。事務作業や補佐には最適でしょう。さすがは名君と呼ばれるお方だ」
嘘だろ?
こいつぜんぜん察してねえじゃねえかよ。大真面目に納得してんじゃねえよ。
「そうである」
我が輩も思わず格好つけちゃった。全然勃起してるのに。
「それに女であれば場が華やぐ上に、オフィスでお茶出しにも使えますしね。実に合理的だ!」
こいつ思考が前時代的すぎるだろ。
どうなってんだよこの奴隷会社のコンプラは。
「さて、若い女といいますと……こちらはどうです?」
奴隷商は檻の一つに近づくと、暗幕を剥いだ。
中にいたのはどう見ても幼女である。
「駄目だ。若すぎる」
確かにロリコンキモデブのような見た目をしている我が輩だが、決してロリコンではない。
見くびらないでもらいたいものだ。
「しかしですね、こいつは魔力は申し分なく、こう見えて力もかなりあります。
ちょっとした土木工事なら任せられますよ!」
いらねえよそんなブルドーザーみてえな幼女。
「他にないのか」
「いやいやボンダンドール様! もちろん、揃えてますよ――」
それから十人ほど紹介されたが、どれも感じるものはなかった。
見た目が好みではない……というわけでもない。
が、なにかティンと来るわけでもない。
果たして、我が輩はこの娘で抜いて満足できるのか?
どうもそう思って仕方がない。
目当てのエロ動画を探していたら、いつの間にか一〇〇ページ目に突入していたときのような気分だ。
「――ここまでお気に召さないとなると……。
ううむ、うちにいるのはこれで最後ですが……」
奴隷商が早くも落胆の色を滲ませながら幕を開ける。
我が輩は、息を呑んだ。
――そこには、少女がいた。
少女がいるのは当たり前である。だが、それはまさしく「少女」としか形容できないものであった。
そう……人は誰しも、心の中で理想の少女を抱いている。
それは可愛く、可憐で、美しく、純粋で、そこはかとなく情欲を駆り立てられる存在だ。
少女の究極体……。
まさにそれが、圧倒的な非現実感を持ってそこに座っていた。
「……こいつはダメですよ。
魔力もほとんどない、言葉も話せない。
まあ、処女であるのは確かですがね。せいぜい、好き者の性奴隷くらいにしか――」
「決めた」
「え?」
「こいつだ。我が輩はこいつを買う」
「……いいんですか? たしかに見た目はいいですが……」
「くどい。買うったら買う」
「はあ……」
オフィスグッズを買いに来たはずの客がなぜ……? という解せない表情の商人に金を渡し、我が輩はその檻の鍵が開けられるのを今か今かと待ったのだった。
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