短編ホラー・二人称小説『あなた』

二人称小説には興味がありました。二人称小説は、そのなかで「あなた」とか「きみ」と何度も呼びかけられるうちに、自分がその世界を体験しているかのように没入してしまうという説明をしばしば見ます。とはいえ、これまで読んできたものは比較的穏やかなドラマだったので、二人称小説の世界にはまり込んだとしても、自分の人生がちょっと寄り道しているくらいの新鮮さしかなかったのです。
本作は本格的なホラーです。三部構成の、ちょっと体験したくないような、実際にはありえないくらいのグロい展開がこれでもかと繰り返されるホラー。その怒涛の展開のなかで執拗に呼びかけられるのです。「あなたは」「あなたが」……
ちょっと不思議な…続きを読む

やっぱり恐い。夜中にトイレ行きにくい。

二人称小説。
多分数が少ないので、初めて読みました。
作品の紹介文にあるように、俯瞰的に物語として見ることも出来ます。
しかし私は作者の意図に嵌って、主観的に見てご自身が主人公として物語にのめり込むことをお勧めします。
まるで上質のホラー映画の世界で、自身が主人公になった恐怖を体験することが、きっと出来ますよ。
さあ、一緒に洗脳されましょう。

　私は、気に入ったお話を何度も読み返す子供だった。そしてその習慣は、今でも残っている。再び感動を味わいたくて、高揚を得たくて、読み返す。

　この物語は、何度読み返しても騙される。一度さらった筈のストーリーに、読む度に脳が騙されるのだ。この感覚は、読んだ人にしか分からない。

　わたしは……「あなた」は、誰？

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（372文字）

小説を書く人はアマもプロも問わず一人称と三人称の長所と短所を議論します。

そんな中、極めて少数ですが、二人称、と称される文体で書かれた作品が存在します。読者はずっと「あなたは……」と語りかけられます。

滅多に採用されない理由は、読者に不快感を与えるためです。読者は小説を読んでいる間はずっと、自分の行動も思考も決めつけられ続けます。反発できれば、まだマシです。自分自身が分からなくなった後は、もう……

本作の作者は物語自体だけでなく文体での実験に挑み続けています。メジャーにはなりませんが異端として興味深い作家です。

本作で挑んだのは二人称。この難物をいかに使いこなすか。

複数の話の連作…続きを読む

難易度の高いレビューをする。その、自覚と覚悟は持ってきた。


　本作品は三つの異なるシチュエーションと、三名の主人公（わたし）の視点から構成されるオムニバスである。

［わたし］は現在-過去-未来を、或いは物語を変則的に行き来しながら、歪で曖昧な不安に囚われて行く。
　この可逆的な変遷には恐怖と安堵が、非情と温情が、虚と実が綾を成し、その先に衝撃の『キマイラ』が潜んでいる事は想像に難くない。只、この作品は［わたし］に　現実的な恐怖　よりも　根源的な恐怖　を齎すだろう。
　理屈で上手く言い表せない不安と恐怖は読み手を魅了して離さず、その歪さは自然界の黄金比にも似て、美しいフラクタルを描く。そ…続きを読む

意味怖な要素もあちらこちらに有り
え、ということは、あれって······
と、考察が出来る余韻まで楽しめます☆
ネタのエビデンスもよく調べられていて、作りものなのにリアルな信憑性も感じました。
二人称というのが今までに読んだことがなく、馴染むのに時間がかかりましたが直ぐに没入感へ変わり、ラストへの回収が大好きです(*´ω｀*)