当然いるはずの「　」に気づいた時、あなたは戦慄する

　別作品を先に読ませていただいたのでなにかあるとは思っていたが、といっても実際は洗脳なんてされないし、自分は客観的に物語を読めていると錯覚していた。

　ところが、この物語で確かに2回、自分が観ているかのような錯覚に陥った瞬間があった。

　それくらいの衝撃があった。

　この作品の巧みなところは、奇数人称で小説を読み慣れた私たちの思い込みを、ギミックとして最大限利用したところ。

　間違いなくあなたは洗脳される。不自然な無描写や、当然あるはずのものに気づく事ができない。物語の伏線を巧みに隠し通し、そして違和感の正体が明かされる時、それは物語を超えて現実の読者への罠として襲いかかってくる。

　胸糞悪い人間ホラーでありながらも、難解で、最高のミステリー体験になっている。

　今から読む皆さんには、何も考えず最大限の衝撃を受けて欲しい。