生きるって時間がかかる。でも、だからきっと、心に残る。

このエッセイのタイトルに掲げられている「延々」は、

「この作業を始めてどのくらいがたったんだ……」
「まだ終わらないよう!」
「この果てしない時間がオレに“死角で眠る”特殊技能を身につけさせた」

……などの悲鳴と置き換えが可能な言葉です。

スローライフ、本当に本当にシャレにならない。
終わらない単純労働・単純じゃない労働・ひっくるめて重労働、美味しいけど無限に同じメニューが続いたりするご飯環境、等々。

身も心も弱い自分なんかからすると絶命ものです。
現代日本の流通その他各種インフラが整っているところで生きていて良かったと本当に感じさせられます。

でも、それでも。
そういう自分でも、このエッセイを読んだ後には確かに「たっといな」と思うものが残ります。
それはきっと作者さんがこの思い出にまつわって感じている愛しさなのだと思います。

延々と続くスローライフのハードな面と、忘れがたく光っている面。
とりもなおさず、それは「生きること」のつらさと良さの一側面であるように感じました。

すぐに読み終わる短い文面、その中に凝縮された「生きる」のスケッチ、ちょっと立ち寄って眺めていきませんか。

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