ここに確かにifはある

 人の数だけ人生はある。

 とても当たり前な話ですが、二つとして同じ人生はありません。
 同時に培った経験も、心に残る風景も唯一無二のものです。
 必然的に常識も人の数だけあります。
 我々は今川焼きの名前も、正月の雑煮の種類も、目玉焼きに何をかけるかすら最適解を出せない存在です。
 そんな自身の拘りに縛られている我々が、真に相手の事を理解し合うのは、到底不可能な話なのかもしれません。

 ただ、不可能だからと言って知ろうとする努力を否定する必要はありません。

 本作で綴られる情景は、私の知的探究心をこれでもかと刺激して、私の知らない、でも確かに存在する生活を教えていただきました。
 もちろん、知識と経験は異なります。知っただけで理解したつもりなどとは申しません。
 それでも、青い空を見上げ、続いているその先に、ここに記された暮らしがある。その事実だけはしっかりと心に刻まれました。

 いつか私も、一日だけでもいい。山のようなホッケや豆に囲まれて、エンドレスりんごに舌鼓を打つ生活を体験する日を夢見て、明日からの変わらない日常をしっかり生きたいと思います。

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