冒険者ギルドから変身するドリーミング・グラス

第13話 変革の時。希望の花が開くには。

 この国全体。いや。世界各国は共通の問題を抱えていた。女性の教育制度が整っていないこと。また、亜人と呼ばれる種族の扱いの酷さも持っている。奴隷制度にも問題がある。口約束だけで、法に縛られているわけではないからやりたい放題だし、女性となると布切れのように扱う輩が多いのだ。一応法律の制度を変えて、証拠となる書類作成の義務と契約魔法を追加して、ある程度の人権を保てるようにした。発案者が俺なので、一部の奴らからよく思われていない。


「お前は何を考えてる」


 魔術を扱える人間なので、睨まれる程度で済んでいるし、村長から認められているから、安全ではある。カウンター魔法もあるので、強襲だろうとばっちこい。というかこの間返り討ちした。村長が両手を叩いたので、真面目に向き合う。


「今から会議を始める。ドリーミング・グラスのギルド部分をロイヌ冒険者ギルドに合併し、新たに一貫教育の学校にするか否か」


 教育制度を整えたい。そのために最初の段階として、冒険者ギルドという名目で開いたのだ。実際女性スタッフの何人かに計算と文字を教えながら、仕事をしていく形なので、特に言われなかった。いや。もちろん転生者のレインが建てたいというのもあったが。


「何故女が学ぶ必要がある」

「子供を産み、育てる。夫を支える。これが女の役目だろう」


 魔法というものは便利だが、個人差が大きい。魔道具の存在はあるものの、知っている現代文明機器に至るまでに百年以上かかるだろう。そういう開発ではなく、土台を築き上げることが最優先。それがレインと俺の考えだ。今を生きるおじさんにとっては、そういう発想にはなっていないし、反論ばかりが口から出て来るのだが。


「家を守るというのは夫も同じでしょう。そして技術がないからこそ、どちらかが中にいる必要があります。女男どうこうではない。そして守るためには女性だって知恵が要る。戦争になった際、知識というものが女性自身を、家を守ってくれます」


 身近だと感じ取れるように発言をする。男は基本的に外出して仕事をする。戦争だってあるし、魔物討伐でいなくなる時だってあるだろう。そういう視点から考えたものだ。


「不在時の備えとして教育と言いたいのか」

「今はそれで十分だと思っています」


 急激な改革は歪みとなり、崩れていくきっかけにすらなる。前の世界の現代社会で見た。だからこそ、慎重に、ゆっくりとやっていく。そして彼女が好きだった桜と同じように、希望の花が開く始まりにしたい。小さい村から少しずつ広げて、国全体が発展していければと俺は思う。


「なるほどなぁ。だが金は。人は。どうするつもりだ」


 金銭にうるさい商売人の指摘は現実的である。誰だって聞きたいところだろう。


「学校を段階的に試したいと思っています。簡単な文字と計算から。それなら出来る方々が先生として臨時で雇えるでしょう。俺の懐から出せるのでご安心を。建物に関してはギルドで問題ないでしょうし」

「強いものはロイヌ冒険者ギルドに就職。上手く考えたな。小細工を与えたものがいるか」


 どうせバレると思っていたので、思ったほど驚きはなかったりする。


「大本はレインと話し合っていますが、法律や制度の知識は周りの人の方が持っています。なのでそういった方々から知恵をお借りしました」


 商売人が考える仕草を取る。


「ドリーミンググラスのマスターよ。計画書を練り込んでおけ。数年単位。長期目標。短期目標。そういったものを書き出せ。お前の改革は長い。後を継げるように準備をしろ」


 商売人はそう言って立ち上がり、器用に金貨を賛成の皿に投げた。それを見た反対者らしき者が動揺したり、こそこそと話し合ったりしている。


「助言するってことは彼奴認めてるな」

「まあ分かっちゃいたけどなぁ。彼奴は理想を語るが、妙に現実的だ」


 暫くは質疑応答をやって、投票の時間となった。現実的なステップを踏むことを重点的に置き、彼らと話し合ったお陰で、ドリーミング・グラスは冒険者ギルドから一貫校になることが認められた。ただ……魔法少女システムなどがあるから、一般的に魔法少女ギルドのまま呼ばれそうだが。


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