第12話 神器のあれやこれやの会話

 ヴァレンが入手した神器の手続きなどが終わり、ぐったりとソファーで横たわる。


「お疲れっすー」


 レインが入れた紅茶を飲む。いい香り。


「神器って言っても、普段使うようなものじゃないし、彼女達もそれを理解している。それだけでいいんじゃないっすかね」


 ひとまずはそうかもしれない。ギルドの彼女達は理解力がある。そこは俺も認めている。ただ……それ以外もあるのではと思う時もある。そういうわけでレインと色々と話そう。


「世界の国々が作ったルールというのもあるだろうけど」

「あるだろうけど?」

「神器が使い方を理解していると判断したというのもある……と俺は考える」


 神器は神々が遺した試練をクリアすることで入手が出来る。稀にそれが最低条件で、制御できるかどうかのテストをする時もあると聞いている。


「なるほど。物に魂と心が宿るという説があるっすからね。神代で作られたとなると、だいぶその線は濃いと。言われてみれば、ガーンデーヴァの時。いやまあ聞いただけっすけど、ジュナさん、武器とお話したとか」


 懐かしい話だ。遠征の時にジュナさんが行方不明になった。乱すような人じゃないから、皆で慌てて探して数日後に、本人がひょっこりと元気に帰還。遺跡の中だったから、どこかではぐれたのだろうと考えていたが、そうじゃなかった。声に導かれて、試練を受けていたのだ。俺達が知らない間に。


「そうらしい。しかも別の空間で神器の試練を受けていたとな。時代から考えると、ガーンデーヴァは古い産物だ。時が経つにつれて強力になる性質もあるのが、神器というものだ。強い人を見つけてコンタクトを取って。そういう感じか」

「試練どういう感じ?って聞いても、ジュナさんが内緒って教えてくれないんすよね。知ってるっすか?」


 そう言えばジュナさんに何度聞いても、内緒(ハートが付きそう)という答えを貰う。口止めしているというよりか……。


「上手く言葉で表現できない。或いは興奮でうろ覚えになっているとか」

「或いは神様がそうさせたか」


 暫くの沈黙。お互いにどういうことなんだろうと考え込んでいる。魔法を使い、研究する者としての癖だ。


「よし。この話は迷宮入りさせた方がいいっすね。延々と考える奴っすよ。これ」

「だな」


 レインの指摘した通り、キリがない奴だ。そう思いながら、時計を見る。休憩兼おしゃべりはここまでだ。ギルドリーダーとしてのお仕事がある。


「留守を任せた」

「了解っす」


 村の偉い人との話し合いだ。未来のために大事なものだ。どこまでやれるかは分からないが、ギルドリーダーとして最善を尽くそう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る