神器と魔法少女たち(?)
第11話 遠征から帰って来た冒険者の神器
交流試合にトラブル発生せず、穏やかに幕が閉じた。ギルドマスターとして、ホッとする。去年なんて騎士団が来て、大騒ぎになったから、今年はどうなるかと思っていた。いや。ここからが問題なのかもしれない。ヴァレンが帰って来る。しかも神器と呼ばれる、神々の時代の産物を持ち帰る。事務室の席で報告書を読んだ俺はぐるぐると思考をする。
「これだけ集中してると、王国からどう言われるっすかね」
いつものように笑っているようで、覇気が全くない、レインである。大袈裟にリアクションをしてもいいぐらい、やばい問題というのも事実。そういうわけで頭を抱える仕草をする。
「だよなぁ。頭が痛くなる」
「しかも今日到着らしいっすよ」
「うん。知ってる」
郵便の方が遅い。魔法で使えばという話もあるのだが、使える人が限られてくるのが現状。クレームをしたところで、雁字搦めになっているため、改善は難しい。
「ただいま!」
げ。もうヴァレンが帰って来た。時間帯的に夕方。ホームにいる子に冒険談をしているに違いない。冒険者なので当然のことではあるのだが、とりあえずやってもらいたいことを伝えなければ。
「国に関しちゃ、後回しっすね」
「そうだな。神器の内容次第ってのもある」
覚悟を決めて、ドアを開ける。ギルドの受付近くに少女たちがいつものように雑談をしていた。エルフのように耳先が尖っている、水色の長い髪の毛の女性。移動をしていたからか、動きやすい服装だ。
「あ。ギルドマスター、ただいま帰りました。こちらが報告書です」
「ああ。ありがとう」
書類を受け取る。数か月単位の遠征だったから、数センチレベルの厚さだ。図や絵が大きいので、思ったより時間はかからなさそうだ。さて。問題は彼女の収穫物。すなわち、神器についてだ。
「ヴァレンさん、神器はどうなんすか」
聞こうと思ったら、先を越されてしまった。いつの間にかレインがいた。
「これです!」
ヴァレンがそのブツを前に出した。魔力を帯びた枝を材料に作った杖。蛇二匹がそれに巻き付いている。この膨大な魔力。確かに神器であると経験で理解する。
「古語を解読しますと、治癒の神がかつて使っていたものだと推測されます。病を理解し、悪しき者を祓い、患者の身体の力を強めるとか。まあ……私にはそういう技術と知識、ありませんし、魔力で殴る以外で使い道ないんですけど!」
てへと笑いそうな感じだが、やっていることが恐ろしい。治癒。正しい使い道をしたら、どんな病や傷だろうと癒せるだろう。もし悪用で使われるとなると、虐殺の道具になりかねない。そう考えると、魔力を増幅して殴る道具という扱い方だけになってしまう、ヴァレンが最もいいのかもしれない。よくも悪くも。神器というものは本当に面倒だ。
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