第1話 魔法少女ギルドへようこそ

 ヴィーゼス王国の小さい村ロイヌ。豊かな土地だからか、農作が盛んなところだ。そこに冒険者ギルドのドリーミング・グラスがある。俺が設立したギルドだが、何故か魔法少女ギルドなんて呼ばれている。


 理由はいくつかある。ひとつめは冒険者としての加入条件が十三歳から女性のみだ。元の世界だと差別云々言われるかもしれない。ヴィーゼス王国の事情とか。社会情勢とか。そういうものが理由だと言っておこうか。


 ふたつめは転移した俺と転生者が作ったオリジナルの魔法だと考えている。マギシステムという名前で、自分で言うのもあれだが、とても複雑な構築になっている。防御付与魔法。身体強化魔法。普段着から戦闘服への変換魔法。変身シーンを一瞬で終わらせる加速魔法。変身中にやられないための結界魔法。その他。魔法使いの育成機関を卒業するレベルじゃないと、まず作れない代物だ。魔法使いの同期が優秀なので、周りも簡単にマギシステムの構築を作っているが、一般の魔法使いでは到底できない。それぐらい高いレベルを要求する。


 マギシステムは複雑な構築魔法だ。どういった魔法を使うかの説明を学会で一時間使ったほどだ。そういう複雑な言葉ばかりで、どういった魔法かが分からないだと?


 俺がいた世界の住人なら理解出来るはずだろう。この魔法は魔法少女になる魔法だ。因みに提案は転生者の魔法使いだ。空想を現実にしやがった彼奴は天才と馬鹿は紙一重の典型的な人物だと思う。


 みっつめは強い冒険者が魔法少女と名乗ったことだ。多分これが主な原因だろう。


 そういえば、うちのギルドにいる冒険者のランクは数少ないプラチナランクが二人いる。十人という少数の癖に二人もいること自体がヤバイな。今気づいたが。


 プラチナランクの冒険者を教えて欲しい?


 俺が知っている範囲で教えよう。ひとりめはウィンリア・アイヴィス。金髪碧眼のウルフ族の女性騎士だ。アイヴィス家という騎士貴族の五女で、異端者だ。彼奴は剣を使わないで、拳を使うから。魔法少女と名乗っているけれど……あれは騎士でしょ。拳を使っているけれど。功績は確かだ。ネクロマンサーが呼んだ古代竜のゾンビを倒したし、東方の遺跡で天叢雲剣を入手したし。


 ふたりめはジュナさん。冒険者の中で唯一の子持ち。つまりリアルお母さんだ。昔に比べると出勤回数は減っているけれど、実力は保ったまま。遺跡でガーンデーヴァを手に入れた弓の達人で、神の要素を持つナーガを倒した功績を持つ。綺麗な人だし、上品であるのだが、肉食系なので気を付けた方がいいかもしれない。


 うちのギルドは女性しかいない冒険者ギルドだ。規模が小さいから心もとないのも無理はない。しかし確かな実績を持っている。


 そういうわけで冒険者ギルドのドリーミング・グラスへようこそ。ご要望は何でしょうか。

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