魔法少女ギルド「ドリーミング・グラス」

いちのさつき

魔法少女ギルド

魔法少女、現る!

 一年前、ヴィーゼス王国の商業都市の近くにある、大規模な村で火事があった。盗賊が放った火、放火と言われるものだ。木で出来た家が多く、農作物を保管する庫が多いため、火事の範囲が大きくなった。


「ママとパパがぁ!」


 幼い子供が泣き叫ぶ。燃えている家に近付こうとするが、危ないことを知っている大人が必死に抑えている。火を消そうと周りの人々が頑張っているものの、広まる一方だ。商業都市に助けを求めたとしても、かけつけるまでに数時間かかる。彼らにとって絶望的な状況だ。


「商業都市に連絡は!?」

「しても間に合わんだろ!」

「ならどうするんだ!」


 誰もがもう無理だと悟った瞬間だった。


「魔法少女マジカル・メイプル、参上しましたぁ!」


 燃えるように明るいオレンジ色のショートヘア、それに合わせたドレスに似た裾が短めの衣装、動きやすい濃い色のスパッツ。唐突に現れた少女に誰もがぽかんとする。


「とりあえず火を消しましょう! えい!」


 少女は懐から黒い弾を宙に投げる。魔法陣が現れ、拡大し、シャワーのように水が降り始めた。火が少しずつ消えていく。マジカル・メイプルは黒焦げのところに入り込む。


「よいしょ!」


 真っ黒になった木の家から夫婦らしき者を背負って出てきた。気を失っているだけで、命にかかわるようなものは見られない。


「パパ! ママ!」


 幼い子供が走る。マジカル・メイプルは出来る限り、その子に近付ける。その間に周辺の大人は片付けを始める。


「あれが噂の魔法少女」

「一瞬で解決したぞ」

「ヴィーゼス王国の新たな光だ」


 誰もが魔法少女を希望だと捉えていた。子供も憧れの目で魔法少女を見る。圧倒的な強さ。眩しいほどの善性の光。とても可憐な少女たちは変身して、今日も民のために力を尽くす。少なくともマジカル・メイプルと名乗る魔法少女は。

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